第九話 インヘリタンスはテンプレさんの味方⁉︎
「「「ご主人様いってらしゃいませ」」」
「ワォ、ワォォーン」
イチゴ達とソンタクンに見送られ辻馬車屋へと出発した
…ミーナの肩に乗って通りを進むと辻馬車屋の前で声を掛けられる
「オマイさんら、どき行きなさる?」
「新温泉町まで」
「なら、ワシら雇わんか?街道にはいかさまきょうてぇ〜モンスターが出るけぇ〜の〜
ええにょばら があいまちすっぞ!」
(なら、俺達を雇わないか?街道にはとても怖いモンスターが出るからな!いい女達が怪我をするぞ)
「ハンターか?」
「そうだいや!」
(そうだ!)
「登録証見せてくれ」
ハンターのおっさん二人は、登録証をサッと見せ直ぐに懐へしまう
「新温泉町まで1万でどがじゃ」
「もっと早く言って欲しかったよ、昨日二級のハンターと契約して街道で落ち合う事になってるんだ!」
「え…!」
「そか〜の」
「そうなんだ、また今度頼むよ」
「じゃあ〜の」
おっさん達は手を上げ去っていく
辻馬車屋の受付で名前を告げると
「はい、五名様でご予約のアラタ様ですね、あちらの二号車にお乗り下さい」
「ありがとう」
受付嬢にお礼を言って馬車に向かうと
馬車では馭者のおじさんが待っていた
「今日はお願いします」
「「「「お願いします」」」」
「あいよ〜」
俺達は馭者のおじさんと軽く挨拶を交わし馬車に乗り込む
予約した馬車は幌馬車と言うタイプで荷台の左右に長椅子が付いている
皆んなが乗り込んだ事を馭者のおじさんに伝えると馬車はゆっくり進み出した
「ご主人様、先程は申し訳ありませんでした!」
ミーナが謝っているのは、ハンターのおっさん達との会話の時驚きの声を上げてしまった事だろう
「多分結果はあまり変わらないから気にしなくて良いよ」
「俺がウソついた理由はわかるかな?」
ミーナの謝罪を受け入れ四人に問う
「ウソですか?」
っとソーナが驚き、ヒトミが頷く
「わかりません」
っとミーナが言い、サクヤが含み笑う
皆んなに答えを出すヒントとして馭者のおじさんに質問する
「オッちゃん、最近街道のモンスターはどうだい?」
「ん〜モンスターは少ないけど野盗の被害が増えて来たな〜」
馭者のおじさんの話を聞きサクヤは満面の笑顔で頷き、ミーナと少し遅れてソーナが何かに気が付いた様に驚き、ヒトミは…目をキラキラさせて頷いている…
「わかったみたいだね」(ヒトミ以外は)
「さっきの人達は、野盗の仲間ですね!」
サクヤの言葉に頷き答える
「十中八九そうだね」
ミーナは予想が当たったと同時に自分が取り返しのつかない失敗をしたと思い悲愴感を漂わせる
「ボクもそんな気がしたですよ」
ヒトミ…目が泳いでるよ…
「護衛を断った理由わかりました、でもウソついた理由わかりません」
ソーナは正直だ
「奴等は護衛を装い害をなす獅子身中の虫になる、だから護衛を断った 其処までは良いね」
「「「「はい」」」」
「ウソついた理由は護衛を断るのに妥当性がある理由が必要だった事、仲間がいる可能性を示し襲撃を諦める若しくは襲撃を遅らせるのが目的だ!わかったかな」
「「「「はい」」」」
「あと、ミーナさっきも言ったけど結果はあまり変わらないから気にしなくて良いよ」
「はい、ありがとうございます」
「っと言う事でミーナとヒトミは前方の警戒
ソーナとサクヤは後方の警戒をして欲しい、ヒトミ、サクヤは人の匂いや姿を見つけたり金属音が聞こえたら教えて欲しい」
「あの〜、ワシは…ワシはどないしたらえぇんじゃ、家には妻と娘が帰りを待っとるんや、それに、やりたい事かて未だ未だぎょーさん有りますねん、おみゃーさんはこげにメンコイ ネーちゃんはべらかして羨まし過ぎらいや!、ワシかて服屋の恵子ちゃんや海鮮屋の陽子ちゃん、米屋の智子ちゃんとかスナック仁美のママと手さつないでチュチュして懇ろになりてーだべさ!ばってんどげんコツしたらえぇがかおせーてつかーさい」
…………オッちゃ〜ん!、落ち着け!妻と娘はどうした?方言グチャグチャよくわからんし!最後の方は欲望ダダ漏れで何を教えて欲しいのかさっぱりわからん!
うちの娘達を見ろよ女の子がしちゃいけない顔してにドン引きしてるぞ!
「オッちゃんは取り敢えずコレを抱いて、いつもと違う事が有ったら教えて、あと近くの休憩出来る場所までの距離がわかったら教えて欲しい」
そう言って背嚢をオッちゃんに渡す
…本当に大丈夫だろうか?鼻息は荒いし、目は血走ってるし、正直言って野盗より怖い!
「休憩出来るところ……ところ……ところは…
岩美町のモーテルだ!」
御休憩の場所じゃねーよ‼︎
さっき福部町を通過した、近くで一番襲撃の可能性が高いのは福部と岩美の中間辺りかな…
「ご主人様、さっきのハンター擬きの匂いがします!」
サクヤが匂いに気が付き報告してくると、ヒトミも音に気が付き
「ご主人様、前からは金属音が聞こえるですよ!」
「オッちゃん!目を閉じて全速力‼︎皆んなは床に伏せて‼︎」
馬が駆け出すと、襲撃を悟られ慌てた野盗が弓を射掛けてくる!
矢が数本 幌を貫き長椅子や床に突き刺さる!
それでも、速度を落とさない馬車!
「「キャァ〜‼︎」」
「ま、まだ死にたくないですよ〜‼︎」
「ワ、ワタシも!ご主人様と寝た〜い!」
「ヒィャァ〜」
悲鳴を上げるミーナとサクヤ!
命乞いをするヒトミ!
願望を叫ぶソーナ!
恐怖のあまり、目を閉じたまま鞭を振るい続ける馭者!
二射目がやや後方から射掛けられ、長椅子や背もたれに突き刺さる!
ナイフを持った二人の野盗が馬の前に飛び出してくるが、狂った様に走る馬に気圧され慌てて飛び退く
後ろからは野盗が五人馬に乗って追いかけてくる
「皆んな!起きろ!ソーナは後ろに矢を射ろ、当て様と思うな!撃ちまくれ!
サクヤは幻術で目眩し!ミーナ、ヒトミは二人のサポート!」
「「「「はい!」」」」
野盗を殺せばインヘリタンスで野盗の罪を継承してしまう!対して野盗は犯罪者、今更 罪状が増えようと痛くも痒くもない!
例えインヘリタンスで奴隷の身分を継承しても、主人の登録さえされなければ、命令権も行使されない!
そして、俺を殺せば奴隷達も財産も全て野盗が手にする事になる!
こっちは、殺さない様に牽制しか出来ず
向こうは、ヤル気満々躊躇なしって
捕まっていない犯罪者への支援が手厚すぎるだろ!
ミーナ達と野盗(テンプレさん達)の攻防を前にインヘリタンスの理不尽さに怒りを覚え、見守る事しか出来ない自分の不甲斐なさを呪った!
インヘリタンス
インヘリタンスとはこの世界の根幹を成し
殺し合いの勝者が敗者の身分・権利・義務・財産・経験や知識など全てを受け継ぐ事
一見すると、只の弱肉強食で有るが
問題は『継承に拒否権がない』事と『全て』を継承するだ、良い物も悪い物『全て』
例えば、
人種同士の場合
犯罪者を殺すと、その身分と義務も継承する為、犯罪者と言う身分とその罪を償う義務継承することになる。
多額の借金を持つ者を殺せば、その借金を
奴隷を殺せば、奴隷に堕ちる
奴隷の身分は何をしても一生涯、変わる事が無い
自殺や自然死の場合は家族が継承することになる
ちなみに、ペットを殺すと、ペットになり此れも一生涯、変わる事が無い
人種とモンスターや野生動物の場合
モンスターや野生動物にも適用されるが、社会基盤が異り意思疎通が困難である為
身分・権利・義務・財産は任意の継承と成る(群のボスを倒すと配下のものへ命令権を継承するが意思疎通が出来なければ意味がない、出来た者はテイマーとして優遇される)
経験や知識は強制的に継承される
人種がモンスターや野生動物に殺された場合もほぼ同様だが、身分・権利・義務・財産はモンスターや野生動物には無用である為、国が保管管理することになる。
また、対象のモンスターや野生動物を倒すと討伐証明部位と引き換えに国が保管している身分・権利・義務・財産を継承できる、この時の継承では正の遺産のみを継承し負の遺産は消滅する




