第七話 その名はソンタクン!
異世界生活二日目 朝5:00頃
小鳥のさえずりが聞こえる…
全身びしょ濡れの状態で目が覚めた…
一対の果実の間で左を向き、片方の果実にしゃぶり付いていた!
褐色の果実は朝露に濡れたかの如く瑞々しく朝日が水滴を照らし虹色に輝いていた!
全身びしょ濡れなのはこの所為だろう…
「はぁぁっ…はぁぁっ…おは…よう…ございます、ご主人…様…」
湯気が見えそうな熱い息を吐きながら、息も絶え絶えに挨拶をするムツミ
「おはよう…大丈夫…かな?」
「はぁぁっ…はぁぁっ…はい♡」
「・・・・・ココノ!」
「ご主人様おはようございます♡」
はや!
「寝汗をかいたから、風呂に入りたい手伝ってくれ!ムツミも一緒に」
「かしこまりました♡」
…ココノに隅々まで洗われた…
湯船に浸かり 朝食の事を考えて食材がない事を思い出す
「朝市ってやってるかな?」
「はい、もーやってますよ♡」
………
風呂から上がった俺たちは市場へ食材の買い出しに来ている
俺はココノの肩の座って市場を見て回る
目の前の店には俺と同じ位の大きさの肉の塊、隣の店にはマグロみたいな大きさのホッケ?などの魚、後ろの店にはダチョウ並のニワトリの卵が…
とりあえず、肉と卵、野菜とパンを買って家に戻った…
皆んなで朝食の準備をする、ソーナ、ニコ、サクヤが下ごしらえをして イチゴ、ナナ、ミーナが調理を担当する
サクヤが巨大な大根を洗っている……
あの目、あの洗い方、どこかで見た気が…
頭の中で、またあの歌が聞こえてくる…
Hidy Hidy little Ras……
…やはり早急に目標を達成する必要がありそうだ…
食事が終わったのを見計らい話し始めた
「皆んな!聞いてくれ!
今後の予定だが、当面はこの家を拠点にして安定した生活基盤の構築を目指す!
その方法として、先ずは皆んなにハンター登録をしてもらう!
ただし、モンスター討伐は進んでしない!
討伐するのは弱い動物だけだ
薬草や山菜の採取をメインに行う
そして、外勤班と内勤班、補助班の三班に別れて活動する
外勤班はハンターの仕事をメインに行い
内勤班は家事全般と採取 討伐した物の加工
補助班は外勤班、内勤班の補助をする
班編成は
外勤班はソーナ、ヒトミ、ミーナ、サクヤ
内勤班はイチゴ、ナナ、フミ、ニコ
補助班はシータ、ムツミ、ヨーカ、ココノ
そして俺は基本的に外勤班だ
ここまでで質問はあるか?」
「なぜワタシ達も、ハンター登録をするのですか? ご主人様が得られるインヘリタンスが減ってしまいます」
「ソーナ、君達一人一人が経験や知識を継承する事で全体的に能力の底上げが出来る!
一人の百歩より、百人の一歩が大事なんだ、
それに俺はこの大きさだ継承した物のを活かせない事も多いと思う、だから皆んなで助け合う為には登録が必要だ」
「わかりました」
「他に質問は?……ない様なので、早速登録に行こうと思うが、その前に服を買いに行こう」
「いら………」
大通りに面した服屋に入ると、店のおばちゃんが目を見開いてフリーズした
昨日行った居酒屋の店員の方が精神的に強い様だ!口籠もりながらも接客してたし
気持ちわかるよ、服としての限界ブッチギッタ、ミニスカメイドが十二人この世界に
公然猥褻罪があったら確実に捕まる
それに、こんな服は服屋としての矜持が許さないのだろう
「おぉーい、おばちゃーん!」
「なんてこったい!そんな服を人前で着る女がいるなんて…」
ほんと酷い服だよねー
「買って行っただけでも驚きなのに!」
あんたが売ったのか!!
「おばちゃん…色々言いたい事があるけど、とりあえず、この娘達に長袖、長ズボン、靴下、外套を二着ずつ、ブーツと靴、下着を三着ずつ買いたい、あと大きな布も何枚か欲しい」
「あぁ、ちょいと待っとくれ」
「ご主人様⁉︎そんなに沢山は…」
「必要だ!服をケチって皆んなが怪我をしたら嫌だ!」
イチゴの言葉に被せる様に断言する
…買った服に着替えさせて市役所に向かった
「ハンター登録をしたいんですが…」
「はい、どなたが登録しますか?」
「十三人、全員登録します」
「こちらの用紙にご記入お願いします」
このお姉さん訛ってないな〜
「わかりました」
「登録手数料が一人1万円かかりますので、合計13万円頂きます」
「はい、登録用紙とお金です」
「はい、確かに ではお掛けになってお待ちください」
「皆んな座って待ってて、ミーナ相続課に行きたい」
「はい♪」
「昨日はどうも」
「おー、おまいか! こげが目録だが、見てごしなれ!」
(おー、あんたか!これが目録だよ、見てください!)
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財産目録
鳥取市管理物件
建物…三棟
土地…らっきょう畑、山林
金品…120万円相当
その他…ペット(犬)
新温泉町管理物件
建物…一棟
土地…山林
金品…1000万円相当
その他…馬車、奴隷
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二十五人分の財産って割には少ないのか?
新温泉町って兵庫県だよなぁ
「ここに受け取りのサインごしなれ 」
(ください)
建物の鍵、土地の地図、個々の権利書と金品を受け取り、ハンター課に戻る
ペットは建物の前にいるそうだ
新温泉町の物件は新温泉町の町役場で貰う事になっている
…待つ事 一時間
ハンター登録証を受け取る
世界が変わっても『お役所仕事』は変わらないようだ
…一度家に帰って昼食を摂った後、皆んなに目録の話をすると 一様に新温泉町の奴隷の事を心配していたので、明日 外勤班と確認に行く事にした
「今から皆んなで鳥取市管理物件の確認と武器屋に行こう」
日本で武器屋って響きはなんかやだなぁ
一軒目、旧 山本家…
らっきょう農家さんで蔵に大量のらっきょうの塩漬けが有った、ラベルには日付けが記載されており古いものでは5年、新しいものでも1年前だった…
「うっ、美味い!これは癖になる」
「!! おいしいですね、ご主人様」
イチゴも絶賛している
二軒目、旧 山根家
何も無い…ただの廃墟の様だ!
三件目、旧 池田家
立派な門だ、潜り戸まである!まるで武家屋敷だ
期待を胸に潜り戸を開けると…
「ガルルルル…」
5m以上ある犬が牙を剥き出しにして唸っている、主人が帰ってくるまで家を守る!
そんな、強い意志を感じる…
だが、犬はガリガリに痩せ細っている、池田さんが亡くなったのは二週間位前って書いてあった…
「ヒトミ、これで肉を買ってきて!」
「はい!」
…数分後
…マ、マンガ肉だと⁉︎
ヒトミがギャー◯ルズの様な巨大な肉を担いで来た…マンモスの肉なのか?
犬の前に肉を置くが食べようとしない、
「「「「「「ご主人様⁉︎」」」」」
驚く皆んなを手で制して、俺は肉を間に犬と向かい合い……肉に齧り付く!
一口、二口、三口…美味い!甘くジューシーな肉汁、嚙ごたえがありながらも蕩ける様な舌触り、程良く効いたスパイスが後を引く…
ヤバイ!止まらん‼︎
顔を上げると、唸るのをやめて見つめる犬と目が合う…
肉を犬の方に押しやると、安全を確認する様に俺が口を付けた箇所を舐め…俺を見つめる
「食え!」
声を掛けると千切れんばかりに尻尾を振りながら食べ始めた
後ろを見るとホッと胸を撫で下ろす皆んなに混じってヨダレを垂らすヒトミ……
「ヒトミ、同じの全員分!何人手伝ってあげて」
「はい♡」
お金を渡すと、ケモ耳娘達が我先にと走り出す
「おすわり!」
「お手!」
「かえ手!」
「伏せ!」
「着け!」
賢い!犬だ
俺は屋敷の庭で犬に芸をさせていた
いい毛並みだ…
自分達の顔より大きい肉の塊を難なく平げた彼女達は、屋敷の中を見て回っている
「ご主人様」
犬の背中に凭れ掛かり微睡んでいるとヒトミが声を掛けてきた
「その子、ご主人様を主人と認めたみたいですね」
「犬の気持ちとか言葉がわかるの?」
「ボクが犬人種だからって犬の言葉がわかるわけ無いですよ、徒人種に猿の言葉がわかるのって聞くのと同じですよ! でも…気持ちはね〜」
言いながら自分の尻尾を見せる
理屈はわかるけど魔法があるファンタジー世界なのに…融通が利かない…
「ところで、何か有ったの?」
「色々出て来たので見て頂こうと思いまして」
「わかった、じゃぁ行こぅ〜っっと」
返事をして立ち上がろうとした時、俺を背中の乗せた犬が立ち上がる
そして、犬はヒトミの後ろをついて行く…
…目的の部屋に到着すると『伏せ』の姿勢をとる
…この犬、賢すぎる!
部屋には刀や槍、弓矢などの武器が並べられていた、流石は武家屋敷!
その中の一つの武器に目が止まる
「これは、鎧通しか?」
それは、切先が諸刃作りで全長1m位の刀
少し手を加えれば使えそうだ
「其々、自分が使えそうな武器を選んでおいてくれ」
「俺は屋敷の中を見てくる」
「クゥゥ〜ン」
横を見ると犬が背中に乗れとばかりに『伏せ』の姿勢で此方を見つめている
こいつ、マジで賢すぎる!
「よし!これからお前名前はソンタクンだ!」
鼻の頭を撫でながら名前を付けてやると尻尾を振って喜んでいる!
奴隷娘達がが微妙な顔をしている…
いいんだよ!本人も喜んでるし、それに
忖度出来るからソンタクン!
電気を出す鼠でピ◯チュウ!
どちらも名詮自性と言うやつだ!
いずれは、都合が悪い書類を改竄してくれる立派な犬になる筈だ!
改竄の竄は穴に鼠と書いてかくれる事を意味するのだ!
ハンターとは
モンスターや危険な動物(熊・狼など)を狩ったり、危険地域の調査など報酬と引き換えに様々な依頼を行う者の事で身分ではなく資格になる故に犯罪奴隷以外身分を問わず登録できる
特級、一級、二級、三級の四つのランクに別れており、初期登録時は三級となり実績や試験を受ける事で昇級する
※登録した奴隷がモンスターを討伐するとその報酬の他、インヘリタンスの効果で経験・知識を継承できるようになる、その為
一般的に使い捨ての奴隷を登録するのは稀である




