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第二十話 裏切られた期待と新たな仮説




シュッ


ドゥォォォン


「フッフッフッ…いい出来だ」


アラタは出来上がったばかりの太刀を手に不適な笑みを浮かべる。

その笑みが、傑作を生み出した作り手の自惚れか、大岩を豆腐の如く切り裂いた太刀の切れ味に酔い痴れるものなのか…

どちらにしても、側から見てかなりアブナイ雰囲気を醸し出していた、それこそ物語りの主人公であれば作者すらドン引きするレベルだった。



大岩が崩れる音で意識を取り戻したのかミーナは。


「みんな待って!」


洞窟中に響き渡る叫び声を上げ身体を起こす、記憶を辿るかの様に額に手を当てながら、辺りを見回して見つけた主人の背中に声を掛ける。


「ご主人…様?」


アラタはミーナの方に振り返って声を掛け様とするがミーナは…


「ひぃっ!お、鬼!」


っと小さく悲鳴を上げて、蛇に見込まれた蛙の如く、その身を掻き抱く。


そんなミーナに歩み寄り


「鬼じゃないよ…」


っと優しく声を掛ける。

ミーナは側に来たアラタの服を掴み、必死になって問いかける。


「ご主人様!みんなは、みんなはどこですか⁉︎」


「みんな?」


「はい、イチゴやヒトミ達です!さっきソコの川の向こう側に…」


ミーナは洞窟の奥を指差して顔を向けるが、ソコには闇しかない。

それでもミーナはアラタに縋り付き、涙ながらに訴える。


「ほんとにいたんです!川の向こう岸から私達に手を振っていたんです!」


そもそも、イチゴやヒトミ達どころか川すらない…

ブレスの衝撃波で脳が揺さ振られて意識が混濁しているのか?

それとも、臨死体験的なもので見えざるものが見えているのか?

はたまた、今迄の疲労とストレスから幻覚を見ているのか?

何にしても、見えない川が見え、さらに家にいるイチゴ達まで見えるってのはヤバイよな。


「わかった、俺が見てくるからミーナはココで待ってろ」


今の状態で、見えないと否定すれば興奮して収拾が付かなくなりそうだ、一旦肯定しておこう。


「いや!一人はいやです、わたしも連れて行ってください!お願いします…ケホッ、ケホッ」


そう言って、咳き込みながら立とうとするが、足が震えて立ち上がれない。

ミーナは悔しそうに顔を顰めて下を向き涙を零す。


「ハァ〜…わかったよ、おぶってあげるから一緒に行こう、だがその前に水でも飲みなさい」


そう言って水が入ったコップを渡す。


「ありがとうございます」


ミーナはコップを受け取って、一気に水を飲み溜息をつくと。


「わがままを言って、申し訳ありません」


即効性ではない様だな…どの位で効果が出るのだろうか?

じつは、水の中には壊れた船で見つけた睡眠薬を入れておいた。


決して、いかがわしい目的で使おうと思って持って来た訳では無い!

本当だ!信じて欲しい!

それでも、準備が良過ぎると御疑いの方もいるかも知れないが、するならチャンスは幾らでも有った訳だし。

そもそも、夜想曲だとか鎮根歌だとか言ってオールOKでガンガン攻めて来る性奴隷娘には必要がない。

それに、俺はマグロより踊り食いが好きだ!

っと心の中で誰かに言い訳をしてみた…


とりあえず、薬が効くまでの間ミーナおぶって洞窟探検をしよう。



「じゃあ、行こうか」


「はい、よろしくお願いします」



ミーナを背負って歩きながら、ふと思う。

背中に感じるこの柔らかな感触最高だ!

じゃなくて、いや最高だけど思ったのはそれだけじゃなくて、ミーナが見た幻覚?が


「ミーナ、その川なんだけど向こう岸ってどんな感じ?なんかモヤがかかって見難いんだよ」


あぁ、見えてないのに見えてる振りするのって…ツライ


「…石の河原ですね」


それって賽の河原?、やっぱり三途の川だよね⁉︎


そう言えば日本に四ヶ所ぐらい三途川があったよな…群馬と千葉と宮城あと青森だった気がする黄泉比良坂の方が距離的に近いのに…認知度の違いか?黄泉比良坂は神道で三途の川は仏教だから信仰の違いか?


確か三途の川の由来って地獄・餓鬼・畜生の三悪道の事だとか、地蔵十王経の一節だとか聞いた事があるなぁ。

女性は初めての男が背負って渡るって話も有った気がする…蜻蛉日記だったかな。



「ご主人しゃまソコは流れが早いのれ気をつけてくらさい」


「…ありがとう」


ミーナ的には川を渡ってる最中なんだ…

どうしたもんかね〜これ以上行くと深みにハマりそうだよ。

早よ寝てくれんかなぁ…

呂律回ってないしもう直ぐか?


流れが早いらしいから、立ち止まって子供をあやすように揺すっていよう。

あぁ〜ポヨポヨは最高だ!


ポーヨ ポーヨ ポヨ 女の子〜

青い春からやってきた

ポーヨ ポーヨ ポヨ ふくらんだ〜

やわらかおむねの女の子〜


なぁ〜んて心の中で歌いながら、しばらくポヨポヨを堪能しました。


眠ったミーナを背負い洞窟の出口に立ち思う

至福の時とは斯くも早く過ぎ去るものなのか!

耳元で囁くように聞こえる寝息が、そよ風の如く頰を優しく撫で…

そして、寝言と共に湿り気を帯びた柔らかく暖かな唇が首筋に吸い付いてくる…

これは、イカン!これ以上は…

『出番ですか?』と呼んでもいないのに息子が期待を膨らませてくる…


ミーナに『家に帰るまで待て』と言ったのに、俺が待てなくなりそうだ。


血の涙を流しながら、ミーナを洞窟の外に寝かせ周囲の安全を確認する。


横たわるミーナにシャツをかけて、洞窟の中へと進み、思わず鼻をつまむ。


「くさっ!」


洞窟の奥から卵が腐った臭いがする、なぜ今迄気が付かなかったのか?


多分、長時間いたせいで嗅覚疲労を起こしていたのだろう。


だが、この臭いの元は確認する価値がある!

予想通りなら、次回のタイトルは…

《嬉し恥ずかし魅惑の温・泉・回!》になる。


期待に息子を膨らませ…ちっがう!


期待に胸を膨らませ…あれ?どこ膨らませても結果同じじゃね?



とかアホな事を考えながら臭いの強い方へと進む。




そして、俺は見つけた!


落盤により塞がれた通路と


黄金色に輝く大量のDragon(ドラゴン) feces(フィシーズ)


一面に広がる海竜のお花畑(トイレ)、花子さんが見たら、さぞ驚く事だろう。


俺は期待を裏切られた怒りと、数秒前迄元気だった萎れた息子の怨みを、ブレスにのせて塞がれた通路を吹き飛ばす。


その威力に舞い散る瓦礫と排泄物と金銀財宝!


竜は光り物を集める習性があるとか物語りで言ってたけど…

消化出来なくて、排泄物と共に貯まっただけでは無いだろうか…


裏切られた期待と新たな仮説を胸に、ミーナの下へと歩みを進める。



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