第十九話 待望のチートスキルで得たチート属性は、ちぃーとばかりヤバかった!
「ミャァ〜ォ」
猫がシッポをクネクネと振り、足に近寄り顔を擦り付け、遊んで〜っと甘えてくる。
青みがかった灰色をしたビロードの様な毛並みに緑の瞳、凛々しい顔立ちでありながら笑みを浮かべたその表情が特徴的なロシアンブルー、その愛くるしい仕草についつい相好が崩れてしまう。
社員旅行の前に実家に預けた愛猫の名前を呼ぶ。
「ミーコ〜」
名前を呼び寝転がって抱き抱えると、勢い良くシッポを振り前足を肩に乗せて、頰に顔を擦り付けグルグルと喉を鳴らして鳴き声を上げる。
「ミャァ〜〜ォ」
「ミーコ〜〜」
猫撫で声で名前を呼び、頭と背中を撫で摩ると、気持ち良いからもっと撫でて〜っとばかりに大きく喉を鳴らす。
「グルルルル〜グルルルル〜グルルルル〜」
今度は首をマッサージしてやると、もう離さないと言わんばかりに前足の爪を立てて、首筋をザラついた舌でペロペロと舐めてくる。
顔を寄せて頬擦りをすると、舐める位置を首筋から頰へ頰から顎、そして喉元から反対側の首筋へと移し、舐める勢いを増していく。
しばらく舐め続けると腰を引いて振っていたシッポをピーンと伸ばして、首筋を甘噛みする。
カプカプと甘噛みを繰り返し、口の中では舌が激しく首筋を舐め回す。
感情の昂りが最高潮に達したのか甘噛みにチカラが入り首筋に痛みが走る。
「いたっ!いたぁったたたたたたたたたっ!」
甘くない甘噛みに耐え切れず、ミーコの背を軽くタップするが、甘噛みは本気噛みになり。
「痛いわぁー!!!」
叫び声を上げ身体を起こすと…
俺に抱き付き首筋をガブガブと噛み続けるミーナがいた。
ミーコは夢でミーナが現実で噛んでいた様だ、俺はミーナを引き剥がして揺さぶる。
「もっと食べひゃいです〜」
っと言って再び抱き付き噛もうとするので、肩を掴んで大きく揺さぶりながら名前を呼ぶ。
「ミーナ!ミーナ起きろ!ミーナ!ベタな夢を見てないで起きろ!」
俺の膝の上でペタリと座り、寝惚け眼をクシュクシュと掻きながら挨拶をする。
「ごしゅじんさま〜おはようございましゅ」
「おはようミーナ、色々と聞きたい事があるが、先ずはヨダレを塗れの顔を拭きなさい」
目が覚めてハッとしたミーナは顔を赤らめ両腕で交互に口を拭い。
「ウフフ、ご主人様も首までヨダレ…垂れてますよ」
「・・・」
「それに、ここ真っ赤です」
俺の首筋をチョコンと指差して微笑む。
可愛いなーコンチクショー
俺は服で首を拭いながら質問する。
「ミーナ、なぜ何も着ていない?」
「暑かったので、脱いじゃいました」
ミーナは顔を赤らめ俯いて答える。
「なぜ俺に抱き付いていた?」
「少し肌寒かったので…温まろうと思って」
ミーナは赤い顔に両手を頰に添えて答える。
「なぜ俺の服は、はだけている?」
「その方が、温もりを感じられて…つい」
ミーナはさらにモジモジと膝を擦り合わせて答える。
つい、じゃねーよ!そんな可愛いらしい顔して
俺の膝の上でモジモジとしないでくれ!!
朝ゆえに、朝ゆえに立ち上がった息子が、息子sonがぁ!さらにオ○ナミンCになってリポ○タンDしちゃうだろ!
「と、とりあえず分かった、訳がわからんが分かったから服を着なさい」
「はい、わかりました」
うん、良い返事だね!なのになぜ行動が伴なってないのかな?
もーほんと〜に、勘弁して欲しい!その位置でその格好、さらに縋る様な眼差しで見つめてくるなんて…直視出来る訳無じゃん!
俺は心を鎮める為、天を仰ぎ見る。
そんな俺を見たミーナは膝を割ってにじり寄ると、しな垂れ掛かる様に身体を預ける。
たわわに実った温かく柔らかな果実が、押し当てられてその形を変える。
その時、あるい恥部ではレタスの衣を纏った熱々の大きなソーセージが白く柔らかなパンの間に挟み込まれて、美味しそうなホットドッグが…
「ノクターンじゃない!」
「いいえ、私は夜想曲ではなく鎮根曲を奏でようとしています」
「お!上手い!っじゃなーい!なに一文字変えて言ってんの?それ会話じゃ伝わり難いから!…あと、昨日も言ったけど、『約束』は家に帰ってからにしようね」
「ですから、約束ではなく朝立処理をしようと」
「それ大義名分が違うだけでやる事同じだよねぇ!それに、ほっとけば自然に鎮まるから」
「嘘はダメです!以前のご主人様が『男は処理しないと寿命が短くなる』って言ってました!だから、ご主人様にも毎日…」
「え⁉︎毎日?身体のサイズ違ったよね!」
ミーナは下唇に人差し指を当てて真っ赤な顔で艶かしく語り出す。
「はい、ですので口で処理いたしました、とても小さくて可愛いのに一回では鎮まらず…
時折り『ここがエデンの園か…』っと気持ち良さそうな顔で…」
「わぁー、もーいい!もーいいから、処理しなくていいから!お願いだから服を着てくれ」
知られざる現実を知り、恥ずかしさに身悶えしつつ言葉を断ってミーナを引き剥がすとミーナは。
「私がしたいと思うのはご主人様だけですよ♡」
っと言って可愛らしく片目を瞑ると立ち上がって服を着る。
「ミーナ服を着たら朝ご飯を作ってくれ」
「わかりました」
「俺は外を見てくれる」
俺は周囲の状況と現在位置の確認をする為に洞窟の出口へ向かう。
場所は入り江に面した洞窟で、時間は太陽の位置から見て午前七時から八時の間、周囲には人や動物はおろかモンスターすらいない、間違いなく海竜の影響だろう。
俺はスキルで竜になり空から広範囲を確認する。三つの大きな島と幾つかの小さな島、そして北東の方角に大きな島影が見える。
多分、俺達がいるのは隠岐島諸島にある西ノ島だろう南に行けば松江市があるはずだ。
状況確認を終え人の姿になって洞窟へ戻る。
「竜のお肉ってほんとーに美味しいですね」
「いくら食べても飽きないし、食べ過ぎても胸焼けしない、ほんと最高の肉だな」
「でも、お野菜も欲しいです」
「そうだな、だが明日まで待って欲しい」
「明日ですか?」
ミーナは肉にかぶり付いたまま、コテンっと首を傾げる。
「あぁ、早く帰りたいとは思うが海竜の処理と試したい事や作りたい物があるんだよ」
「処理ですか…美味しいのに勿体ないですね、時間があれば干し肉でも作るんですが」
「いいね!干し肉も作くろー、スキルの『属性変化』を使って窯を作れば干し肉も明日までには出来るだろ」
俺達は早速作業に取り掛かった。
俺は竜のチカラで大岩に穴を開け簡単な石窯を作り。
ミーナは海竜から大量の(と言っても海竜全体から見れば1%にも満たない)肉を切り出して、出来たばかりの石窯で干し肉を作り始める。
俺は竜の体に変態して海竜の残り?を洞窟から出して丘の上へと運ぶ、海竜は洞窟内では身体を曲げていた為その大きさが分からなかったが。
「ほんとに大きいなぁー全長500m以上はあるのか?前足の指の長さが今の俺の身長(10m)とほぼ同じって…」
改めて海竜を見て、その大きさに思わず呟いてしまう。
とりあえず、上下二本ずつの牙を抜いて…
残りはブレスの実験台
「確か、『属性変化』で選択した属性のブレスが出るんだよな…どんな属性がいいかな〜火とか爆炎なんて男としてロマンを感じるし雷も捨てがたい…海竜があんな属性だったんだから『属性変化』はかなり自由度が高いと考えていい筈だ…」
俺はふと思い付いた属性でブレスを吐く事にした。
東に向かって丘を下る、海竜の方へと向き直り大きく息を吸って…ブレスを吐く
「ゴォォォォォォォォォォォォ…」
っと吐く音と共に一条の眩ゆい光が、大地を揺るがす爆発と爆風を伴って西の空へと駆け上る。
それは、まさに一瞬の出来事であった。
その光を浴びたものは、材質や硬度を問わず全てがチリと化す。
いや、チリなどと言うか表現では生温いだろう、なぜなら原子核が崩壊し粒子へと至っているのだから。
そして、その崩壊時のエネルギーにより200億度以上という超超高温の爆風が吹き荒れ周囲ものを薙ぎ払う。
高エネルギーのガンマ線の照射、それがこのブレスの正体である。
海竜は勿論、丘も山も灰すら残す事なく消滅し、ブレスの射線上に残されたのはバターの様に溶けて刳れた大地と一瞬にして炭化し爆風で薙ぎ払われた木々。
島を中心に広がる大きな波紋、そして電荷を帯びた空気が紫電を纏って作った大気のトンネルだけだった。
俺はその惨状に口をアングリと開け目を点にして立ち尽くす。
アラタは『属性変化』で得た属性は光崩壊属性。
光崩壊とは非常に高エネルギーのガンマ線が原子核に作用することによって原子が崩壊する現象で恒星が死を迎える超新星爆発の時もこの現象が起こっている。
放心状態から立ち直り、この惨状の近くにいる人を思い出す。
「ミーナ!」
念の為とひと山越え来たが…
もし衝撃波による突風に巻き込まれていたら、竜巻に晒された木の葉の如く彼方へと吹き飛ばされる。
もしこの超高温の熱量をその身に受ければ、影も残さず蒸発する。
俺はミーナが無事である事を祈り飛んで行く。
洞窟に戻り中を見ると、奥の方でミーナが倒れていた。
人の姿に戻って慌てて駆け寄ると…
ミーナは耳から血を流し目を回し倒れていた、急いで治療を施してベット替わりのボートに寝かせる。
俺は意識の無いミーナの傍で一つの決意を固めた。
このチート属性はちぃーとどころか、かなりかりヤバい永久封印しよう!




