第十五話 主人に憑かえる、少女の一途な重い!
前話までのあらすじ
一日目
異世界の鳥取砂丘に転移する。
サンドサーペントを倒しインヘリタンスによりスキルと知識、財産を継承し十二名の奴隷を得る。
エデンの園の住人になる夢を見る。
二日目
ソンタクンと武家屋敷を手に入れる。
三日目
新温泉町に行く途中、野盗に襲われるがソンタクンに助けられる。
新温泉町で温泉旅館を手に入れるが、一服盛られ海に捨てられる。
奴隷娘達を喪い、自らも海竜に喰われる。
「………あぁマジでクソッタレな三日間だった」
「ワッハッハ…それは災難だったなぁ〜」
癖のある黒髪で黒瞳の男は、他人事の様に笑う銀髪の優男を恨めしそうに睨み、「当事者にとってはトラウマ級の災難だ」っと呟きジョッキを煽る。
「でもなぁ、海竜に喰われて二人も生き残ったんだか、かなり運が良いよなぁ」
「運が良い奴は、端からこんな目に遭わない。それに、運が良いのはオマエだよ!このイケメン・チーターが!!」
「海竜からの継承で君もチーターになったじゃないかぁ」
「俺はアクワイヤードでオマエはコンジャニタルだろ!しかも、サラリと俺をイケメンカテゴリーから除外しやがって」
黒髪の男は銀髪の優男の胸ぐらを掴んで抗議するが、「ハハ…」っと笑って受け流される。
クッソ〜外見だけでなく中身までイケメンかよ!どうせ俺は三枚目だよっと、項垂れ銀髪の優男から手を離す。
「はいよ!ロースおまち、軽く炙ってこのタレで食べな。兄ちゃんよぉ〜…そんな事してる間に嬢ちゃん達に全部食べられっちまうぞ!」
「俺のタンは⁉︎」
「焦げそうでしたのでいただきました、とても美味しかったですよ♡」
「タイショー!タンと生中追加で」
黒髪の男が追加注文をしている横で銀髪の優男はロースの片面を軽く炙り特製のタレをつけて頬張る。
「マジで美味いなぁ!アラタはこの店によく来るのか?」
「この弥生って焼肉屋は地球にも有ったんだよ、名前は平仮名だったけど場所はこの店と同じ鈴鹿の白子でレーサーとかが常連で通う知る人ぞ知る松阪牛焼肉の名店なんだ、俺のお気に入りはタン、ロース、上カルビとヒレだったぁ、まさか異世界で同じ味が楽しめるとは思っても見なかったよ……」
「じゃぁ〜次は上カルビかぁ、楽しみだなぁ〜」
「楽しみって、まぁそれはロースを食ってから…って もーないじゃん!!」
「ご主人様が思い出に浸っておりましたので、邪魔をしてはいけないと思いまして…先に頂いておりました、ご主人様の分も取ってあったのですが…いつのまにか溶けて無くなってしまいました」
黒髪に茶色の瞳、八重歯の美少女が唇を艶めかしくテカテカさせながら主人への配慮を語る。
「うぅ〜ん!うぅん」
緑色の髪に紫色の可愛いらしい幼女が、頬っぺたをリスのように膨らませて同意している。
その足元では、犬が小躍りしながらシッポを千切れんばかりに振りたくり「ワン!ワッワ〜ン」と歓喜の雄叫びを上げる。
「ソンタクン!オマエもか⁉︎」
「はいよ、上カルビとタンと生中お待ち」
「タイショー、ロースも追加で…」
「あいよ、ロースも追加ね」
「それで、小さかったアラタがど〜やって海竜を倒したんだぁ?ウロコはダイヤ並みに硬いのに劈開性がないし、筋肉はダイニーマ(鉄の15倍の強度をもつ繊維)よりも強靭で自己再生に各種属性耐性、状態異常も無効で知能が高く戦闘力は地球育ちのサイ○人並みそんなトンデモ生物の竜種の一体だぞ」
「ん〜!ぅん」
口いっぱいに肉を頬張り空腹の野獣の如き目で銀髪の優男を睨むと。
「ハハッ…悪かったよ、取らないからゆっくり食べてくれぇ」
そう言って銀髪の優男は両手を上げて降参の意を示す。
「ング、ゴックン」
肉を飲み込みジョッキを煽る。
「ミーナがいたから小さな俺でも海竜を倒せたんだよ…」
海竜に丸呑みにされた俺は海竜の胃袋の中で満足に動かない体と傷だらけのミーナを見て正直、絶望していた。
しかし、ミーナは諦めず、そんな俺を助ける為 必死になって介抱してくれた。
介抱しながら俺に語りかけ続けた「生きたい」と「志半ばで逝った仲間達の分まで生き続けたい」と…
そしてミーナは思いを語る
「私は赤ん坊の頃、野盗に両親を殺され孤児院で育てられました、その孤児院には沢山の子供いて国からの補助金だけでは維持するのが困難で、ごはんも野菜クズと僅かな米を炊いた物が一日に茶碗一杯だけだったんです、それでも皆んな我慢していたの院長達は自分達の分としてよそわれた、ごはんを皆んなに分け与えてくれていたから…
だから皆んな孤児院の為って働いて院長に渡していたの、そしたらある日、ごはんの中にお肉が入っていたの院長に聞いたら皆んなが頑張ってくれたご褒美だって…
とても小さなお肉だったけど、とても美味しかったわ…
皆んな泣きながら食べてた、その日の夜は皆んな興奮してなかなか寝られなかった、もっとご褒美が貰える様に頑張ろうって凄くやる気になってた…
ご近所からも素直でよく働く良い子達だって評判になって、お給金も増えてお肉が食べれる日も半年に一回だったのが四カ月に一回、二カ月に一回と増えて来て、皆んな一カ月に一回お肉が食べれるのを目標にしてた…
でも、ある日の夜一人の子が病気になって苦しんでいたの、皆んな心配して院長に報せようとしたけど、その子は絶対に言うなって言うの薬は高いからって…
私は我慢出来なくて院長が暮らしていた、はなれに呼びに行ったわ、玄関を叩いても出てこなかったから裏に回って…
そしたら、明かりが漏れる窓を見つけて、近ずいて行くと大きな笑い声が聞こえてきて、私は大きな声で院長を呼びながらその窓から中を覗いたら豪華な食事を囲む院長の家族がいたの…
院長は怖い顔で私を捕まえては折檻したの、私は折檻を受けながら、病気の子を助けてってお願いしたけど聞いて貰えず…
次の日の朝病気の子は死んでいて…
私は孤児院のお金を盗もうとした泥棒として、皆んなの前に連れ出されて…
皆んなは私の事を敵を見る目で睨みリンチをしたの…
そして傷が癒えるまで監禁されて奴隷として売られたの、院長曰く温情として犯罪奴隷ではなく性奴隷にしたんですって…
今だから言えますが、特殊な趣味の主人に仕えていて今よりもっと酷い事も沢山されたんですよ…
と言って笑顔を見せ語り続ける
その後、飽きたからと捨てられそうになった所を奴隷商の田中様に買われて、生まれて初めて名前を付けて頂きました…三十七号と…
そして次の日、砂丘でサンドサーペントに襲われていたところをご主人様に救われました…
この三日間は私にとって一番幸せな日々でした…
私にとってご主人様は幸せを与えてくれた大切な人、私の幸せそのものなんです!
一分一秒でもお側に仕えこの身を賭し」
「その先は言うな!」
俺は叫びミーナの言葉を断つ
「お陰で体も動く様になった、二人で生きて帰ろ!そして、死ぬまで俺に仕えろ!」
「嫌です!私は死んだ後もご主人様のお側にお憑かえいたします」




