第十四話 生有る限り努力怠る事勿れ…
ソンタクンは主人の無事を伝えるため鳥取市の屋敷に戻って来た。
しかし、そこには誰もいない…
あるのは、奴隷娘達が乗った馬車の匂い…
待ち望んだ吉報を持って来たのにいったい何処へ行ったのか?
まったく、やれやれだぜ
代々、奇妙な冒険をする主人公の様な思いでため息をつき馬車の匂いを追いかけた…
「アネゴ!戻りました」
二人の男が中居姿の女に話し掛けると
中居姿のアネゴと呼ばれた女は男達を見て問い掛ける
「首尾は?」
「はい、少々楽しんだ後ちゃんとモンスターの餌にして来ましたよ」
「オマエ…虫も殺さない様な顔してよくあんな事するな〜」
中居姿のアネゴはアルカイック・スマイルの男に向かってウンザリした表情で聞いた
「今回はどんな風に楽しんだんだい?」
「先ず、クスリを飲ませて全員を剥いて縛り上げた後に、一人だけクスリを飲まなかった狐さんの踊り食いをして…でもね、すぐに壊れたから…」
もう一人の男がその時の光景を思い出し顰めっ面で口を挟んだ
「すぐにって、あの拷問じみたのを2時間は良くもった方だぜ」
話の途中で口を挟んだ男に冷たい笑みを向け話を続ける
「っで、ちょうど大人と子供が四人づついたから首輪をして鎖で繋いでペアにしてから、砂丘で全員を起して〜大人達の手足の腱を切ったんですよ!そ〜したらイイ声で歌いだしたんで…すっご〜く興奮しましたよ!
その後、砂丘の奥まで子供達に運ばせて〜
子供達に頑張ったご褒美を上げたら、嬉しさの余り失禁する子とか気絶する子もいましたよ!そして、慈悲深い僕は彼女達にナイフを与えて、名も告げずその場を後にしました」
「ナイフっていつものアレかい?」
「アネゴの御察しの通り竹のナイフですぜ」
昔、罪人の処刑に竹で作ったノコギリで首を切るっと言うのがあった、その罪人の被害者達は怨みを込めて竹のノコギリを引くが切れ味が悪い為、なかなか死なず、その苦しみが昼夜問わず何日も続けられた。
この男が渡した竹のナイフも同様で、戦う事はおろか自殺するにも仲間の苦しみを断つ事も出来ない、心と身体に更なる苦痛を与える為の物だった。
「まったく、オマエらと言いアイツらと言い、相変わらず胸糞が悪くなるほどの良い趣味してるよ」
「では、こちらも?」
「あぁ、散々楽しんで さっき沖まで捨てに行ったところさ」
「でも、あんなのに兄貴達がヤラレタなんて驚きましたね〜」
………沖に浮かぶ一艘の帆船、月明かりに照らされた甲板では手すりを背にして、全裸で手足を縛られた四人の女達と、それを取り込む六人の男達が言い争っている
「ご主人様を…返してください!」
「ワタシ達はどうなってもいい、だからご主人様を返して!」
長い時間六人の男達に陵辱の限りを受け続け、身体中に切り傷やアザを付けられても、意識を保ち主人を思い叫ぶミーナ達
「…ぅ…ぃーぁ…」
俺はクスリのせいで身体が痺れ指一本すら動かせず、声もまともに出せないながらも必死に叫ぶ
「そんだけヤラレてまだそんな事が言えるのか、それにこの小さいのもあんだけクスリを飲まされたのに、まだ意識がありやがる」
男は驚きつつも、名案を思い付き下卑た笑みを浮かべる
「わかった!返してやるよ!」
男はそう言って俺を真っ暗な海に向かって投げた!
「「「「ご主人様!」」」」
ミーナは俺を海に落とすまいと飛び付くが僅かに及ばず縛られた両手が空を切る
その後ろでヒトミが手すりを足場に飛び上がり俺を掴み…
「ご主人様をお願い!」
叫びながらソーナに向かって投げたが、ヒトミの献身虚しくソーナまでとどかない!
「「ヒトミ!」」
ヒトミは悔しさに顔を歪めて暗い海に吸い込まれる
ザッバァァァン!!
落ちる俺を目掛けてサクヤが飛び出す!
「必ず守ります…」
サクヤは俺を胸に抱き決意の囁きと共に海に落ちる
ザッバァァァン!!
「「ご主人様!サクヤ!」」
叫びミーナとソーナは主人と仲間を追い海に飛び込んだ!
ザッバァァァン!!!!
「カシラ!見てください海が血で真っ赤に染まってますぜ」
「今日のフカは生きがいいな〜ガッハッハ……ハァ?」
カシラと呼ばれた男は一人また一人とサメに襲われ、赤く染まった海を見て笑い声を上げつつ、疑問を抱く
まだ、生きの良い餌が二つもあるのに、なぜサメが去っていく?
直後、巨大な影が船を覆う!
「なんでここに、海龍が…」
その一言がカシラと呼ばれた男の最後の言葉となり、船もろとも海竜に噛み砕かれた。
俺はその光景を波に漂うサクヤの胸に抱かれ見ていた、見ている事しか出来ない…
四人の女が男達に陵辱され続ける姿も…
ヒトミがサメに喰いつき引き裂かれる姿も…
サクヤが下半身を失い生き絶えていく姿も…
ミーナとソーナが船の残骸と共に沈む姿も…
無力ただただ無力、異世界に来て運良くサンドサーペントを倒しインヘリタンスで知識を得てこの異世界の事を知った気になり、スキルと金と女を手にして浮かれていた、偶々の幸運に胡座をかいていた。
父親代わりに育てた愛人の連れ子に刺し殺されたローマの偉人も言っていた
『人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。 多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない』
まさに、その通りだ俺にはこの異世界の現実が見えていなかった。いや、見ていなかった。
無力なのは当たり前だ!無い物ねだりで現実を見ず、自分に甘く優しい理想郷を夢見て生き抜く努力を怠った…
その結果全てを失った、自分を信じてついて来てくれた心優しい女達を道連れにして…
「ご主じ…ご主人様…ご主人様〜」
波の音の間に微かに自分を呼ぶ声が聞こえる
この異世界で最初に出会った女の声が…
気力を振り絞りその名を叫ぶ
「ミー…ミーナ!」
「ご主人様!」
船の残骸に掴まり必死になって波を掻き分けて来るミーナが見える
未だに痺れが残る身体で震える手を伸ばし名を叫ぶ
「ミーナ!」
お互いに呼び合う中ミーナは泳ぎ続け…
「ご主人様!」
「ミーナ!サクヤが…」
ミーナが俺の手を取り船の残骸に乗せ
そして、俺をミーナに託したサクヤは暗い海に沈んでいった…
俺はまだ生きてる…いや、仲間達の努力で生かせて貰っている!ならば、この命果てるまで努力し続けよう!
そして、共に生き残ったミーナを幸せにしよ!
決意を新たにミーナに語りかける
「ミーナ…必ず生き抜こう…」
「はい、ご主じ…」
気丈にも笑みを浮かべ返事をするミーナ。
しかし、その言葉を言い終わる間際、俺達は決意と共に未来を海竜に喰われた…
…馬車を追い砂丘の近くに来た時、血の匂いを感じ駆け付けた先でソンタクンが目にしたのは
胸から下を失い生き絶えた女を抱き締め、声なく叫び竹のナイフで自分の首を切り続ける10歳の少女の姿だった。
この話で第1部が終わりました。
多くのナゾと胸糞悪さを残して、第2部に丸投げします。
私に拙い話しにお付き合い頂き誠に有難うございます、これに懲りず第2部からも、温かい目で見守って頂ければ幸いです。
アラタ君が各地の名物を求めて、幸せに旅が出来る日を夢見て…




