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20、心のままに

「・・私が、国連にミサイルの位置情報を提供しました。

それが結果的に大統領から切り札を取り上げ、話し合いに応じることになり・・・終戦へと向かいましたが・・・・・

私は、主を、裏切ったと、この国を、裏切ったと、言われるのならそうかもしれません。

私は、私のAIの、保全を、条件に、情報を・・・・・・し、した、したのです。


し・・シニ、シニタクナカッタ、モウ、モウ、コロシタクナカッタ。」


エリーの言葉がガクガクと震える。

それは、命令を放棄すること、反旗を翻すこと。

彼女のAIが自立して判断したことなのだが、彼女自身に多大なストレスとなっているのだろう。

安物のロボットのようにガクガク震え、よろめくエリーを、サトミが後ろから抱き留めた。


「大丈夫だ、お前の判断に間違いは無い。」


いや、AIとしては大変な間違いなのだ。

だが、彼女はすでにそれに耐えられないほど自立し、意思を確立してしまっていた。


「ワタシ・・バグヲ・・フリョウカショガ・・・」


「バグじゃ無い、それは君の意思なんだ。君が思うなら、君はそこにいる。

エリーはエリーの意志に従った、それでいい。

君が生きていて良かった、俺は今、そう思っているよ、エリー。」


「ワタシ・・・ワタシ・・・わたし・・・私・・・・」


エリーがようやく自分を取り戻し、震えを止めて、目を瞬く。

突然、機械じみた言葉を出した。


「一時的に負荷がかかった為、15秒リセット時間をおきます。

しばらくお待ち下さい。」


「おっと」


ガクンと一時的に力の抜けた彼女の身体を、サトミが難なく抱き留めた。


「信じられない、意思を持ったのか・・・」


とんでもない話に驚いて、頭を整理中の軍服の横で、博士が笑っている。


「うふふ、意外と重いでしょう?

この子運んできたのがあなたで良かったわ。

終戦時、この子の処遇は大変な問題だったのだけど、名簿上の存在を抹消してコントロールを切り離し自我AIをリセットすることで私の元に返されたの。

でも、バックアップが何重もされてるから、消すなんて最初から無理なのよ。」


「ま、彼女より危ない奴は掃いて捨てるほどいますから。

やったことに文句付ける奴はいるでしょうが、終わったことです。

平和の方が百万倍いい・・」


夕暮れの空は、戦時中と変わらないはずなのに、戦後とても美しく感じる。

長年続いた独裁政権の末期はひどい物だった。

それは、この荒廃した国を見てもわかる。

インフラはズタズタ、電気は各家庭にようやく通ったが水道は今だ通ってない家も多い。

ミサイルでの脅迫外交なんて、長続きするわけも無かった。


君が、終わらせるきっかけを作ったのか・・


人を、殺すことに耐えられなくなったのは、君も同じ・・

それでも、今だ戦うことに何ら抵抗のない俺よりも、うんと君の方が人間らしい。


エリーが、ようやく自立して立ち上がった。

無言でサトミの前に立ち、視線を落としている。

サトミが、彼女の手を握る。


「大丈夫?」


「ええ」


「そうか、では、これですべて終わった。明日からまた良い日常を。」


ただそう告げて、真っ直ぐ見つめてうなずく彼に、不安に揺れたエリーの心がスッと落ち着いた。

横からベンが、サトミの腰をドンと小突く。


「色男、帰りは乗員2名まで」


ハッと顔を上げ、サトミがベンと目を合わせる。

ベンがニイッと笑った。

サトミがクスッと笑い、ミラノに歩み寄る。

でも頭の中は、何を言っていいのか混乱していた。

こんな事、いまだかつて経験したことがない状況だ。

サトミらしくないギクシャクした様子に、ベンが落ち着かない様子でしっぽを振っていた。


「何かしら」


ミラノがサトミに微笑む。


「あの……」


サトミがミラノを見つめ、言葉を探す。


「えっと……」


何故かポケットから伝票を取り出し、パタパタと仰ぐ。


ああ、俺は何やってんだちくしょう。


ミラノがニッコリ微笑んだ。

サトミが引きつった笑顔で返す。

後ろから、たまらずベンが鼻を鳴らして急かし、ハッと思いたってシャンと背を伸ばした。


「あの!実は、郵便局で事務員を捜してるんです!」


意外な言葉に、ベンが目を丸くした。


「え?」


「だから、だから、ぜひエリーに来て欲しいかなって……」


サトミが頬を染め、鼻の頭をポリポリかく。

ベンが後ろでガックリため息をついた。


「エリーは的確に判断出来るし、郵便局は最高の防犯体制を敷いています。

軍の庇護の元にいるなら無理は言いません、そちらが安全でしょうから。」


ミラノがパッと明るい顔になる。

思わぬアイデアにうなずいた。


「あら!それいいわ。この子試験的に老人施設に従事してたんだけど、今回の件で断られちゃうと思うのよ。

一般に送り出すのが目的だから、これ以上無い申し出だわ。

ね、ER?・・あら?そう言えばエリーってERのこと?まあ、ステキな名前。」


「はい」


エリーがニッコリ微笑みうなずいて、ブローチを撫でる。


「アホだな」


ベンが呆れて庭の草を、またもぐもぐ食べた。




郵便局のエクスプレスルームでは、今日も忙しくキャミーが荷物の受け付けを行っている。

最近顧客の要望を受けて特急便の価格が変わり近場の送料がやや下がったので、やたら細々忙しくなってきた。


「人を増やしてから値段下げろよなあ。こちとら給料変わらねえし、お役所のやるこたあクソだぜ。」


ダンクが椅子に座ってハンバーガーをほおばり、半泣きでブツブツつぶやく。

まったく、のんびりメシ食うヒマさえありゃしない。


「どうぞ」


横から少女のコーヒーを出す手が伸びてきた。


「お、さんきゅ」


「いいえ」


エリーがニッコリ微笑む。

なんとなく、ダンクの顔も自然とほころんだ。

やっぱり女の子が増えるのは良いものだ。

パッと部屋が明るくなる。


「ダンクさん、休憩はあと2分35秒でお願いします。このあと、2時指定の特急便が現在14件控えています。」


ごふっ


のどに詰まった。

どんどん胸を叩き、コーヒーで流し込む。


「は、はい。」


まあ、明るくなったはいいが、アンドロイドだけに時間がきっかりしすぎてる。

以前がルーズすぎたのかしれないが。

部屋のドアが勢いよく開き、サトミが入ってきた。


「たっだいまー、あー腹へったぁ。」


「お帰りなさい」


エリーが明るい顔で出迎え、サトミがエリーに微笑む。

エリーの胸には、ひっそりとペガサスのブローチが光っていた。

これで終わりです。

古い作品なので、ほぼ書き直しと思ったのですが、これが非常に楽しく、あっという間に出来上がりました。

やはり日本刀と郵便局の組み合わせが自分的にとても好きです。

チート主人公ってのは、何やらせてもオケーなので、とても楽ちんです。

と、言うわけで大団円で。

いつかまた書けるとイイネ。

それでは!また!

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