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19、エリーの過去


突入する兵達をかき分けサトミとエリーが玄関に向かう。

エリーが手を引かれながら、その力強く、優しくしっかり握るその

手を見つめる。

うれしい。うれしいの信号が体中を駆け巡る。

こういう時、どう言えばいいのかわからない。

それは、お礼なのだろうか。

そうよ、こう言えば間違いは無いわ。


「サトミ、ありがとう」


少女の言葉に、サトミが玄関を出ると立ち止まって振り返る。

何と返すべきか、思い浮かばない。

たった5人、無駄に時間かけて怖い思いをさせたのは事実だが、彼女に怖いというデーターがあるのかはわからない。

まあ、相手を殺さないというのは意外と手間取る。

とりあえず、これだけは絶対だ。


「エリー、また会えて良かった。」


ニヤリと笑って気恥ずかしそうに鼻をこする。

優しい風が吹いて、エリーの水色のワンピースが花のように広がった。


エリーの硬くなっていた表情が、和らいで顔一杯に微笑みが広がる。

突然大きく手を広げ、女優のようにサトミに飛び込んだ。


「え!」


サトミが驚いて彼女の身体を受け止め、思わず周りを見回す。

玄関に二人残っていた兵士が、見ないふりしてくれた。


「会えてうれしい!サトミ!また会えてうれしいわ!」


「いや、ほんのちょい前に別れたばかりだけど・・そんなに喜んで貰えて光栄だよ。」


エリーがギュッと抱きついて、ハッと顔を上げる。

ポンと離れて向かい合い、手を握った。


「サトミ、情報不足よ!あとでいいの、教えてね。

『作り物の胸押しつけて、耳元で何をささやく』とはどう言う意味を含むのか、ラブドールは検索でわかったけど、彼女の言葉には抽象的で理解出来ないことが多くて。」


サトミの顔が引きつる。

あのババア、やっぱ殺せば良かった。


ため息付いて彼女の手を見ると、人工皮膚の破れに気がつきそっと触れる。


「検索して無いと言うことは、通常必要が無いのさ。世には知らなくていい言葉もある。

ここ、痛くは無いんだね。」


「ええ、痛いという感覚は無いの。わからない事が残念だけど。」


彼女が恥ずかしそうにポケットからハンカチをとって押さえる。

そのハンカチを受け取り、サトミが彼女の手に巻いた。


「人間は痛みがあるから身体の故障に気がつくのさ。

無ければ気をつければいい、無い物があるってのも君の個性だ。

行こう。」


二人が手を繋いでベンの所へ歩き出すと、道の雑草をムシャムシャ食べていたベンが気がついて駆け寄ってきた。


「終わったのか?腹減ったぞ。にんじんだ、にんじん!」


「ああ、帰ろうか。」


門前にはあの軍服の男が立っている。

ずっとどこからか見ていたのだろう。


「何故女を助けた?」


「女を撃つのはわかっていたさ、それが軍のやり方だ。

でも困るんだよ。俺の荷受け表、無傷の最長不倒記録付けてんだ。

ここで汚すと賭けに負ける。じゃあな。」


男が理由に驚いて首を振る。


「伝票を血で汚さない為に?!なんて・・

・・どうして軍は君を手放したのか、上に聞いてみようかと思うんだが。」


「やめとけ、俺は幽霊みたいなものだ。死にたくなければもう忘れろ。」


「奇襲が嫌だったのだろう?うちの陸上部隊に来ないか?」


諦めない男に、立ち止まってニヤリと笑う。


「あんた、甘いよ。

俺のいた部隊、抜けたいと希望を出した奴はみんな死んだ。だが俺は生きている。

今軍に帰るなんざ、血を見に行くような物だ。まあ、殺されるのか死人を増やすのかは知らねえけどな。

じゃあな、あんたが軍になんと報告出すかは知らねえが、来た奴みんな死ぬと思えと言っといてくれ。」


「軍に殺される??君が?一般人が殺人だと?そんなことが・・」


「はっ!抜ける時ライセンスをもらってる。心配無用。

長生きしたければ二度と俺の前に来るな。」


殺傷ライセンスだと?!そんなライセンス、聞いたことが無い。

そんな物補償されないと抜けることもできないなんて、この男は一体誰を殺してきたんだ?


男の横を通り過ぎようとした時、そこへ門前に黒塗りの車が止まった。

中から年老いた婦人……ミラノ・タチバナが、スーツ姿の男に手を引かれ車から降りて来る。

ミラノがエリーを見て、ホッとした笑顔を見せ手を挙げた。


「イーアール!」


「博士!」


エリーが駆け寄り、ミラノに手を差し伸べる。

ミラノは安心したようにエリーを抱きしめ、そして彼女の顔を優しく撫でた。


「ああ、良かった。ER、本当に無事で良かったわ」


「はい」


サトミが歩み寄り、ミラノに微笑み一礼する。


「ミラノ・タチバナさんですか?」


「ええそうよ。私はタチバナです。」


「ポストエクスプレスサービスのサトミ・ブラッドリーと申します。お嬢さんと、このディスクをお届けに参りました。」


サトミがミラノにディスクを渡す。


「ありがとう、サトミさん。あなたのおかげだわ、感謝します。」


受け取りにサインして、ミラノがサトミの手を握る。そして軍服の男を向いた。


「ERのことは、戦後もっと早くおおやけにするべきでした。この子はもうコントロールからは離脱しています。

今は、衛星にサブのAIを持つ高性能ではありますが、家事介助用アンドロイドでしかありません。」


「は?それでは……」


軍服の男がポカンと口を開ける。


「この子の意思で、コントロールから離脱しました。

いえ、本当の意味で戦争を終わらせたのはこの子です。色々とあって、ERの存在は秘匿事項となったのです。」


「意思で?アンドロイドの?それは、どう言う・・」


「それは、ここでは・・・」


博士が言葉に詰まった時、横からエリーが一歩踏み出した。

空を見つめ、それはまるで、自分を責めるように。


「私が、この国を裏切ったのです。」


エリーが、目を見開きアンドロイドの顔で語り始めた。


サトミのいた部隊は、一体誰を殺してきたんでしょうか。

それが公になると、軍を揺るがし国を揺るがす。

だからこそ、部隊を抜ける時は彼ら自身も口封じに暗殺されるのです。

サトミはそれに生き残りました。

それが意味するのは、つまりアレです。

そういうこと、色々書きたいナーと思う話しです。

設定がどんどん膨らみます。

でも、次がラストです。

それではまた

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