15、痛みの無い手
ミラノ・タチバナの家……となっているその家では、数人が銃を持って庭を監視し、空き屋だらけの家々の中で、どこか物々しい雰囲気を出している。
出発が近いのだろう、一人が時々車を待つ様子を見せていた。
何故か玄関先に置いていた車には、タイヤに小さなナイフが刺さり空気が抜けていたのだが、スペアタイヤはひどい状態で使えなかったのだ。
中では客間に女や男達が集まり、ソファーに座るエリーを取り囲んで出発に取りかかっている。
部屋にいるのは女1名に、男4名。
家に残されていた家具をそのまま使っている。
最近まで人が住んでいたらしい形跡はあるが、すべて残されているのを見ると持ち主が死んだのか夜逃げでもしたのか。
おかげで利用しやすいと目をつけ、鍵を開けて勝手に利用した。
しかしエリーが届いた時点で、ここは軍に知れたと判断していい。
すぐに次の拠点に移動する予定が、サトミが思ったより早かったので車が遅れていた。
「私は、どうなるのですか?」
エリーが無機質な声で問いかけた。
「まあ、何が心配?」
「いえ、これからどこへ行くのかと思いまして。」
不安が、エリーに質問をさせた。
女が怪訝な顔で、冷たく彼女を見下ろす。
「ずいぶん口数の多い子ね。命令に従えばそれでいい、ロボットが質問なんかするんじゃないわ。」
「あ……」
タバコを吸っていた女が、エリーが膝の上に組む手の甲でタバコを消した。
「痛みがあるって言うなら、質問にも答えてあげるけどね。クク……
あのポストマンに、ずいぶん気に入られたようじゃない?
その作り物の胸押しつけて、耳元で何ささやいたのかしら。
クク、どこでそんなこと覚えたのかしらねえ、この薄汚い人形。」
この女性は、一体何を言っているのかわからない。
情報が不足している。
そっと手をさすってみる。痛みなんてどんな物かわからない。
人工皮膚が焼けこげ、白い手に薄く煙が上がる。
感覚のないその手が、人間ではないことを強く印象づけた。
人間では無いけど、私は私・・・なのに・・・・
女が視線をはずすとエリーは悲しい顔で傷を撫で、そしてそっと目を閉じた。
電話が鳴って、男が女にすぐ車が来ると伝える。
「では、2班と落ち合おう。」
「了解しました。」
ピンポーーン
皆が立ち上がりかけたとき、チャイムが室内に鳴り響く。
「なに?なんでチャイムなんか・・・・」
皆が怪訝な顔を見合わせていると、ドア近くの男が軽く手を挙げた。
「俺が出る。」
男が廊下を歩きながら銃を後ろ手に隠し、玄関のドアののぞき穴を覗く。
先ほどのポストマンが、荷受け表を顔の横に出して、軽くお辞儀した。
「すいません、サインもう一つ忘れて。代理で結構ですので。」
男が舌打ち、ドアを開く。
ドアの向こうでは、サトミが荷受け表を直しながら、刀を片手にニッコリ笑っていた。
「き、貴様!」
「荷物を、返して頂きます。」
「何?!」
外にいた男達は、すべて倒されているのが見える。
サトミが刀を男の鼻先に突きつけ、そしてスパークの散る刃をキラリと輝かせた。
「ポストアタッカーを舐めて貰っては困る。」
サトミが静かに、そして鋭い声で告げる。
男は、血の下がる思いで一瞬凍り付いた。
エリーの手は灰皿じゃない
そして、奪還へ
それでは!また!




