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1、ポストアタッカー

戦争が終わり、祝砲が空に鳴り響く。

灰色だと思っていた世界に、青く澄み切った空がある事に気がついたその日。

当たり前の事に妙に脱力感を感じながら空を見上げた。

一体自分はどこを見ていたのか、ため息を一つ吐いて歩き出す。

サトミ・ブラッドリー、15才の春。

背には愛用の刀を背負ったまま、荷物と言えばバックパック一つ。

軍を除隊し、ゲートへと向かう。

パスはすでに返還したあとなので、除隊許可証がパスの代わり。

そのパスを片手に進んでいるとゲートの前で同じチームだったジンが立っていた。

腕を組み、ムスッとして見下ろす同僚は、同じ部隊でも気の合う方だ。

それでも最年少のサトミとは3つ年齢が違う。

サトミの除隊を最後まで渋った彼が、一応見送りに来てくれたのだろう。

手を挙げると、プイッと顔を逸らした。


「今更帰っても居場所なんかあるもんかよ。」


言われてサトミが笑ってうつむく。


「そうだな。」


「手紙の返事だって、一度も来た事無いじゃネエか。」


「前線じゃ、手紙が届く方が難しいんだよ。」


「いい方にばかり考えやがって。他の奴らにはちゃんと届いてただろ。」


返されてフッと寂しそうに視線を落とす。


「じゃあな」


サトミがジンの横をすれ違いざま、彼の肩をポンと叩く。

ジンが思わず声を上げた。


「帰って来いよ、誰もいなかったら。」


「大丈夫、きっと誰か1人くらい待ってるさ。家族は多いんだ。」


サトミがゲートをくぐり、外の世界へと出ていく。

ジンが振り返り、小さくなるその姿にため息をついた。


「戦争なんて、終わってないんだぜサトミ。俺たちは……殺しすぎた。」





2年後・・・・・



荒野を馬が5頭、土煙を上げて疾走する。

恐らくはその状況から、先頭を走る少年が後ろの4人の男達に追われているのだろう。

先頭を走る馬に乗る少年は、郵便マークの付いた大きな麻袋を積んだ馬に乗り、そしてその腕には赤い生地に郵便マークを染めた腕章を着けている。

その腕章の郵便マークには、郵便局の速達配達人『ポストアタッカー』の印である稲妻マークも重ねてあるのだが、どうやらそれを見て盗賊と思われる男達も追い始めたのかもしれない。

この時代、第4次世界大戦の終了からようやく2年。

すでに戦争で壊滅的に壊された治安状態から、郊外では盗賊化したテロリストの残党が闊歩し、資源の枯渇はガソリンの慢性的な不足、そして金属の高騰からケーブルの盗難と通信手段、輸送手段を奪い、辛うじて武装した郵便局のみが頼りとなっているのだ。

よってその中でも急を要する時に利用するエクスプレス・・速達は、重要書類や金銭などの貴重品が多い。

その速達は主郵便局間は列車や車を使用することになるが、細かい配達は配達人任せとなる。よって最も盗賊に狙われる命がけのその配達人を、ポストアタッカーと呼んだ。

ポストアタッカーは、主に1人で行動する為に軍人上がりが多い。

戦闘力、判断力、また逃げ足の早さなど、求められる物は多々あるだけに、郵便局でもスペシャリストだ。戦うポストマンと言ったところか。

しかし少年は、見た目ひどく盗賊達を油断させる理由がある。

それはまず馬、

まるでロバのように小さく、走る姿も不格好だ。

そして少年。

弱冠17才と言ってもその身長の低さに、穏やかな童顔。

大事な荷物を預けていいものかと迷いそうな容姿だが、しかし彼の背には大きな日本刀があった。


「ちぇっ、町は目の前ってのによ」


追われる少年、サトミ・ブラッドリーが手綱を握りしめ舌打つ。

振り返るまでもなく、追ってくるのは下卑た盗賊達だ。


「待てこるぁ!このガキ、荷物よこせや!」


盗賊が銃を撃ってくる。

丁度その時、「ここよりロンド」のさびた標識を過ぎた。

かすむ弾にビッグベンはひるまず走るが、サトミが一息ため息をつく。


「殺すのは簡単なんだけどなあ・・クソ野郎、相手してやるよ!」


サトミがピョンと馬の背に立ち、そして背の日本刀を抜く。

そして刀身の柄にある小さなスイッチをサトミが触れた。

日の光を反射する刀にスパークが弾け、刃に電気が走る。

サトミが刀を上段に構え、数発の銃弾をはじくとベンから飛び上がり盗賊に飛びかかる。


「いやあっ!」

「オオオッ!」


銃で身を庇う盗賊に、峰打ちする。


「ギャッ!」


刀身が身体に触れた瞬間、盗賊がビクンと跳ね上がって目をむいた。

その身体がゆっくりと馬から落ちてゆく。

サトミはその馬の背に着地して、次の盗賊の馬へ。

甘く見ていた少年の思わぬ反撃に、盗賊達がひるんだ。


「な、なんだよこのガキは!」


撃ってもさっぱり当たらないこの少年は不死身なのか、それとも魔法でも使っている魔物なのか。

身軽な身のこなし、撃つ弾はことごとく紙一重で避け、刀で切り捨て弾いて行き、物ともしない。

迫る刀に悲鳴を上げながら、ほくそ笑む少年の顔にゾッと血の気が下がり今更後悔した。




倒れている盗賊の1人が、うめき声を上げながら見上げる。


「お、お前は化け物かよ!」


「失礼な」


ドカッとサトミのスニーカーがその頭を踏みつけた。


「死にたくなかったら、ポストアタッカーには二度と手を出さないようにお願いします」


「こんの野郎……覚えてやがれ!」


この期に及んで啖呵を切る盗賊の鼻先に、日本刀が刺さる。

その刃の美しいほどの鋭さに、悲鳴を上げて思わず息を飲んだ。


「ひっ!」


「ポストアタッカーは、郵便物を確実に送り先へ届ける義務がある。それを遮る者に対しては、これを排除する許可を与える。それが戦後、混乱の中この国で確立された法律です。2度目は、峰打ちでは済まないとご覚悟下さい。」


「は……はい。」


ニッコリ、サトミがうなずいて刀を地面から抜き、日の光を反射させながらさやにもどしてしまった。


「この……」


隙をとったように他の盗賊の1人が銃をサトミに向ける。

サトミの瞳が光り、左手がその盗賊へ向けられた。

その瞳に吸い込まれるような、惹きつけられるような奇妙な感覚。


「え?あれ?う、動かない」


盗賊は、ストップしたまま動けない。

やがてサトミの動きをトレースして、盗賊の銃が震えながら自らのこめかみに当てられ引き金に指がかけられた。


「ひ……ひいっ!や、やめてくれ!」


目が見開かれ、ドッと滝のように汗が流れる。

目の前が真っ白になり、目前の死に気が遠くなった次の瞬間。


ターーーン……


「お仕置き」


青空に銃声が響き、空を指さすサトミがつぶやいてほくそ笑む。

空に向けて銃を撃ち、盗賊は泣きながら失禁していた。


「ま……さか、ハーフマダー(半殺し)のマジシャンアタッカーってお前のことかよ。」


電撃を受けて、辛うじて意識を取り戻した1人が胸を押さえて苦虫をかむ。

盗賊達にニッコリ微笑み、サトミは胸に手を当て丁寧に頭を下げた。


「では、ポストサービスエクスプレスを今後ともよろしく。どんなお荷物も、確実に届けてご覧に入れます。」


日本刀のポストアタッカー、サトミ・ブラッドリー。

それがこんな少年のこととは、気が付くのが遅すぎた。

自サイトに置いていた小説です。

2008年頃書いた物なので、読み返すと懐かしいなあと思います。

でも実は一番好きな話でもあります。

勢いで書いていたので設定が単純で、長さも中編くらいなのでかえって読みやすいかと思って、少々修正しつつこちらに載せてみようかと思い立ちました。

設定に気恥ずかしさも感じるほど幼稚なところもありますが、まあ、気楽にざあっと読み流して頂ければと思います。

武器が日本刀ですので、バサッと切ることもあるのでR15にしました。

流血表現がある時は注意書きしようと思います。

よろしくお願いします。

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