ニュートン先生と林檎
再び登場、アイザック・ニュートンことニュートン先生と庭師の熊さん。
今回は、ニュートンの有名なエピソードを掘り下げます。
そんなわけで、林檎に関する二人のお話。
熊「ご隠居……じゃなかった。先生、ニュートン先生。あっしをお呼びだとか。」
先生「おー熊さん、呼び立てしてすまないねぇ。ちょっと相談したいことがあるんだ。」
熊「相談? そうだんですか。でもあっしはご存知の通り只の庭師だ。お役に立てるとも思いませんが。」
先生「何を言ってるんだい。おまえさんは仕事こそ庭仕事だが、実によく頭が働くじゃあないか。頼りにしているよ。」
熊「へぇ、そんな大したもんじゃありませんがね。で、全体何のご相談で。」
先生「いや何、先日ナイトに叙勲されたじゃないか。それでまたパーティーに呼ばれているんだよ。」
熊「あーそうだ。遅くなりましたがおめでとうございます。これで先生も騎士様だ。」
先生「そんな大したもんじゃないよ。と言うか、煽てたって何にも出ないよ。」
熊「先生、そりゃナイト言うもんで……」
先生「実は、叙勲記念のパーティーでの挨拶が甚く不評でね。もっとましなのを考えてこいってことなんだ。」
熊「考えナイト、ですか。」
先生「それはもういいよ。何かいい案はないもんかね。」
熊「(低音)『なに、いい案が浮かばないって? それなら的場の小倉餡だ。』」*1
先生「なんだいそりゃ。」
熊「いえ、あっしにも何が何だか。突然これを言わなきゃいけない気がしたもんで。」
先生「そんなねぇ、どっかの国の豆を使ったジャムの宣伝文句なんて誰も知らないよ。」
熊「それで先生、そのパーティーで何をやらかしたんです?」
先生「やらかしたって、そんなんじゃないよ。人が一所懸命素人にも分かるように数式を説明していのに退屈そうに欠伸をされて、寧ろこっちが困惑したくらいだ。」
熊「あいたぁ、それだ。先生、社交界のお歴々に数学から教えようなんて無理ってもんですよ。」
先生「そうかい? 万有引力について聞かれたから説明しようと思ったんだがねぇ。」
熊「あー、『自然哲学の数学的諸原理(Principia)』ですか。」
先生「ほー、よく知っていたねぇ。そういうところがおまえさんは侮れないんだ。」
熊「中身の方は大して分かっちゃいませんがね。」
先生「あの本ではハレー先生に随分お世話になったよ。」
熊「へぇ、ハレーと言うとあの、彗星の戻ってくる年を計算したとかって言うハレーさんですか。」
先生「そうだよ。ハレー先生は執筆を勧めてくれただけじゃなくて、出版の出資もしてくれたんだ。」
熊「恩人じゃないですか。それじゃ、その万有引力の発見の下りをお話にしちまいましょう。」
先生「お話ったって、『ケプラーの惑星運動法則』を証明しようとしてたら思い付いただけなんだが。」
熊「そう言っちまったらそれでお終いじゃあないですか。そこを拡げるんですよ。」
先生「なるほど。」
熊「先生のことだから、昼夜を分かたず研究なさっていたんでしょう。」
先生「そうだね。丁度ペストが流行っていて、大学が閉鎖されていたから家に引き篭もってたんだよ。」
熊「そうすると、夜中に息抜きに庭に出るなんてこともあったんじゃないですか?」
先生「さぁねぇ、覚えていないよ。」
熊「そう言うことにしときましょう。それで、庭の木陰で一休みしているといい按配に月が輝いていたと。」
先生「ほほぉ、それはなかなかいい景色だね。」
熊「そこにその木から林檎がこう、ぽとりと落ちたと。」
先生「おや、丁度熟してたんだね。」
熊「そこで先生は考えた。林檎は落ちるのに何故月は落ちないんだろう。」
先生「月は地球の周りを回っているからだね。」
熊「そう、そこが違う。先生ははたと気が付いた。林檎と地球、月と地球の間に働く力があるんだ。」
先生「おお、大発見だ。」
熊「これで如何です?」
先生「何が?」
熊「いや、「我斯く発見せり」ってお話になったじゃぁないですか。」
先生「本当だ。いや、おまえさんは凄いねぇ。早速メモに書いておこう。」
熊「巧くいけば後世に残るエピソードになるかもしれませんね。どっかの国の若者が会社のロゴに使ったりして。」
先生「私が林檎の木の下で本を読んでいるイラストとか、或いは齧った林檎とか?」*2
熊「でもあの林檎、「ケントの花」って品種なんで、料理にはいいけどそのまま食べるには向かないんですけどね。」
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*1: 的場の小倉餡は森山周一郎氏によるラジオCM。http://www.matoba-seian.co.jp/
*2: アップルコンピュータの最初のロゴはニュートンと林檎の木。https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fa/Apple_first_logo.png
えー、皆様方毎度お世話になっております、性悪狐の清水悠と申します。
今回は新作ですよ、新作。この二人、書き易いのでシリーズ化できそうです。
と言うわけで今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
もしよろしければ評価や感想などいただけたら幸いです。