8・マイルス
グレンは自分が倒したゴブリン達を見回した。
『初戦闘でこれか…自分で言うのも何だけど、合格点かな…』
「あの~猫の君」
心の中で自己評価していた時、先程の少女から声が掛かり、少女の存在を思い出した。
「あ、君。大丈…」
振り向いて少女の姿を確認した時、グレンは言葉を失った。何故なら今頃になって少女の服装に気付いたからだ。
『うわぁちょと待て…何この子の格好…異世界だから有りなのか…上半身胸周りしか服(?)無いし…下半身はスカート短くて、スリットまで入っているし…ってか…胸デカい…』
あまりの事にグレンは、若干混乱状態になってしまった。
『いやいやいや…大きな胸なら琉季で見慣れてるし…それよりも…可愛い…』
何よりグレンの目を引いたのは、その愛らしい顔であった。
「…お~い…どうしたの?」
突然何も言わなくなったグレンを不思議に思い、少女は顔を覗きこんできた。
「ふぇ!? な、何でも無い…です」
慌ててグレンは言ったが、少女は何かに気付いた様に言った。
「もしかして、ボクの美貌に見惚れてちゃったのかな?」
歯を見せながら、ニシシという感じに笑う少女。それをみてグレンは…
『バ、バレてる…笑った顔も可愛い…しかもボクッ娘かぁ…』
顔を赤くなるのを感じながら、グレンは内心呟いた。最も今は黒猫なので、見た感じ分からない為、グレンにとっては不幸中の幸いであった。
「まあ、冗談はさておき…助けてくれてありがとう。ボクの名前はマイルス。君の名前は?」
「え、あ…ボクは黒…!」
マイルスと名乗った少女の質問に答えようとした時、グレンはある事に気付いた。
『黒崎って苗字は不味いか…大抵こういう場合、苗字がある人って、貴族とか王族だよね…今後苗字は伏せよう』
「僕はグレン」
グレンは名前の部分だけを名乗る事にした。
「グレンかぁ…それにしてもグレンは強いんだね、猫獣人って戦闘力全くないのに…」
マイルスの言葉に、グレンは驚いた。
「えっ!? 猫獣人って戦闘力無いの?」
「無いのって、そんな他人事みたいに…君だって猫獣人じゃないか」
「えっあうん…そうだったね…」
マイルスにそう返しながらも、グレンの内心は神への憤りでいっぱいだった。
『あのバカ神!? 何でよりにもよって、普通なら戦闘力皆無の奴にしたんだよ! あからさまに僕は種族的に異常じゃないか! 変種だよ変種!』
「それに戦い方も上手かった。慣れているの?」
「いやその…初めてなんだ」
「えっ?」
グレンの言葉に、マイルスは固まった。
「いや嘘でしょ!? どう見ても経験者の戦い方だった。ボクも結構戦い慣れてるから分かるんだ!」
「いやホントなんだ…この刀使ったのも、今回が初めてだし」
マイルスの反応に戸惑いながらも、グレンは夜月を示しながら言った。
『良く考えたら、確かに僕は戦闘を上手く立ち回れた…強化された身体だからか…?』
先程の戦闘の評価を改めて実感する紅蓮。
「そういえばグレンの剣って、見た事無いね。何処から来たの?」
マイルスに尋ねられ、グレンは解答に困る。
『どうしよう。異世界の日本から来たなんて言えないし…仕方ない…』
「えっと…物心ついた時から、とある山の中に住んでいて、この刀…夜月っていうんだけど、夜月も僕が住んでいた家にあったんだ。で、僕も大きくなったから、夜月を持って旅に出たんだ」
咄嗟的に考えた設定を、グレンはマイルスに話した。
「へぇ~…グレンは猫獣人の里に住んでたわけじゃないんだ…ところでグレンは、これからどうするの?」
マイルスに聞かれたグレンは、大きな街を探している事を話した。
『一番稼げそうなのは、冒険者だからな。大きな街ならギルドもあるだろうし…』
グレンが大きな街を探していたのは、そういう理由だった。
「だったらさぁ、ボクと一緒に行かない?」
「えっ?」