5・訓練
3月最初の投稿ですわ。
エルディア軍・第一軍軍団長の狼獣人のロイナスが、城の廊下を歩いていた。
「!」
すると目の前から、グレンが歩いてきた。
「よう、グレン」
「……」
ロイナスは声を掛けるが、グレンは何も答えずに、歩いて行ってしまった。
「何だよアイツ、人が声を掛けているのに、無視しやがって…グレンのバカ猫!」
「誰がバカ猫だって!?」
行ってしまったグレンに対して悪態をつくロイナスだったが、反対側から聞こえた声にロイナスは驚いて振り向いた。
「グ、グレン!?」
其処には先程歩いて行ったグレンが居たからだ。
「何驚いているんだロイナス」
「いやだってお前、今其処を通って…!?」
振り返って説明をしようとすると、其処にもグレンが居た。
「えっ!? えっ!?」
ロイナスは混乱した様子で、自分の左右に居る二人のグレンを見た。
「どうなってるんだ~!!!!」
城にロイナスの絶叫が響いた。
※ ※
「という訳で、これは俺のスキル・『分身猫』による分身だ!」
場内にある訓練場にて、ロイナスに説明をするグレン。その場には二人の他に、整列した数十名の兵士や騎士が居た。
「成程、分身か…でグレン。お前はその分身を使って何をする気なんだ」
「これからこの場に居る騎士や兵士達と、俺のこの分身と戦ってもらう」
「あの、グレン様」
一人の兵士が手を挙げて質問をしてきた。
「何だ?」
「何時もはグレン様との訓練ですが、何故今日に限って分身との訓練なのでしょうか?」
「それは簡単な話…お前達の戦闘力では、俺との訓練ではついていけないからだ」
そうグレンは行った。
実際この一ヵ月グレンは、兵士や騎士達との訓練を行っているのだが、グレンからしてみれば、訓練にならなかったからだ。それは兵士達の練度が低いからではなく、グレンの実力が高すぎるからであった。
其処で今回は、グレンの『分身猫』の分身を相手にさせる事にしたのであった。何故なら先程…
『リア。この分身の戦闘力はどのくらいなんだ? 俺と同じくらいか?』
『いえ、マスターの戦闘力の十分の一程の戦闘力です』
その様な事を、グレンはリアから聞いていたのであった。オリジナルより戦闘力が劣る分身なら、兵士達の鍛錬には充分な相手だと思ったからである。
「この分身は俺より弱い! 全員で掛かれば勝てる筈だ! 俺とロイナスは訓練場の外で待っているから、分身に勝利した者は訓練場の外に出てこい!」
そう言うとグレンは、ロイナスの補佐係の騎士にルール等の説明を伝えると、ロイナスと共に訓練場を出て行った。
三十分後…
「おいグレン…」
「何だ?」
ロイナスの言葉を、グレンは夜月を磨きながら答えた。
「三十分も経つのに、誰一人として出てこないぞ…」
ロイナスの言う通り、未だに訓練場から出てくる兵士や騎士は誰も居なかった。
「そろそろ出てくるだろ。俺の十分の一しかない分身が相手だぞ。人海戦術でイケるだろ…おっ!」
すると訓練所から誰か出てきた。それは先程ルール等を伝えた、ロイナスの補佐係であった。補佐係の騎士はグレン達の傍迄来て、敬礼をした。
「報告します。騎士・兵士全員共、グレン様の分身に倒されました」
「……」
あまりの事にグレン達は言葉を失った。
「おいグレン…お前の分身が強いのか、俺の部下達が弱いのかどっちなんだ?」
「…多分前者…であってほしい」
そう答えるグレンであった。
「…これじゃあ何時迄経っても、俺の部隊に部下が呼べないじゃないか…」
そう嘆くグレンであった。
実はグレンの部隊・王女護衛部隊は部隊と名乗ってこそいるが、実際には部隊にはグレン一人しか居なかったのであった。何故ならグレン一人の戦闘力が高すぎる上にスキルがチートな為、兵士や騎士達が付いていけないのであった。
その為にエルディア王国の王・ジルガからは、『自分の部隊の部下は、自分で何とかしろ』と言われていた。
その為グレンは、現在いる第一軍と第三軍の兵士や騎士達に訓練をしながら、部下として付いていけそうな部下を探しているのであったが、未だに見つからないのであった。




