7・グレンの初戦闘
『…何とか間に合ったみたい…』
少女の無事な姿を確認して、内心安心する。それと同時に、今回の『音速猫』の使用で、ある事が分かった。
スキルの連続使用が可能。
グレンは此処に来るまでに、『音速猫』の制限時間が切れると同時に、ダメ元でスキルの再使用を行ったのだ。その結果、連続で使用が可能だった事が分かったのであった。
『まあとりあえず…助ける事は出来た…』
心の中で呟きながら、グレンは切り捨てたゴブリンの死体を見下ろした。
『こんな大きな動物(?)を殺したのに、ショックを受けない…スキルにあった『完全精神耐性』のおかげか? それとも神がこの体を作る時何かしたのかな…いや、考えるのを止めよう…今は…』
グレンはゆっくりと夜月を構える。
「このゴブリンを倒すのが先だ」
落ち着いた口調でグレンは言った。
「あの、君…」
少女が話しかけてきた。
「大丈夫…君は休んでて」
「う、うん…」
妙に落ち着いた口調のグレンに、少女は戸惑いながらも従う事にした。
「グルルゥゥゥゥ!!!!!」
ゴブリン達は、突然現れたグレンに仲間を殺された事に激怒している様だ。一方グレンは、冷静にゴブリン達を分析していた。
「棍棒が今倒した奴を除いて5体、短剣の奴が3体…奥に居る剣を持って、鎧を着ているのは、差し詰めホブゴブリンか?…大丈夫だろう」
グレンは先程一体倒した事により、倒せるという確信があった。それは過信とかではなく、本能的なものであった。
「ガァアアアア!!!!」
棍棒を持ったゴブリンが、飛び掛かって襲ってきた。
「……」
しかしグレンは動揺せず、冷静に見極めていた。
「…遅い!」
ヒュン! ザンッ!
夜月が一閃したかと思った瞬間、ゴブリンは体から血を吹き出しながら、地面へと落ちていった。
「…何だ? 僕が強いのか? それともゴブリンが弱すぎるのか? まあどちらにしても…」
「ギャギャゴォ!!!」
「グギャギャ!!!」
「ギャオオオ!!!」
最後尾のホブゴブリンを除いたゴブリンが、一斉に襲い掛かって来た。
「全部倒すだけだけどね!」
グレンは刀を構え直し、ゴブリン達に突撃した。
一体目は棍棒を避けた後、柄で顔面の殴り、怯んだ所を首を撥ねた。二体目はナイフを持っていたが、振ってきた所を避けて、足でナイフを払った後顔を掴んで、三体目の攻撃の盾にし、そのまま三体目の攻撃を受けて絶命した。
三体目から八体目までは、単独で挑んでも勝てないと判断したのか、同時にかかってきたが、グレンは何の苦もせずに、全て葬り去った。
「さて…残りはアイツだけか」
ホブゴブリンを見据えながらグレンは言った。
「グギュギュ…」
一方ホブゴブリンはというと、部下を全て突然現れた黒猫獣人に殺された事に、動揺を隠せないでいた。そして…
「グギャギャギャ!!!!」
破れかぶれで剣を振り回しながら突撃してきた。
「……」
グレンは無言で夜月を構えて、ホブゴブリンに向かって行った。
ザンッッッ!!!!
お互いの擦れ違い様に、斬撃音が草原に響いた。
グレンは無言で夜月を鞘に仕舞った。
ドサッ…
鞘に仕舞うと同時に、ホブゴブリンは倒れた。