58・グレンVSルカナス 1
「グ、グレン…君飛べるの!?」
現在、自分を抱えて浮かんでいるグレンに、マイルスはそう問いかける。
「まあね、出来れば隠したかったスキルだけど…」
そう言うとグレンは、ルカナスから離れた場所の城壁に移動し、マイルスを城壁の上へと降ろした。
「怪我はないみたいだけど、この腕輪は?」
以前は付けていなかった腕輪に気付き、マイルスに尋ねた。
「魔力封じの腕輪…ルカナスに付けられたんだ」
聞きたい事が沢山あったが、とりあえずはグレンの質問に答える。マイルスの言葉を聞いて、一瞬険しい表情になるグレンだが、次には元の穏やかな表情に戻る。
「…『リア。これ外せる?』」
『可能です。マスターの魔力を腕輪に注げば、腕輪は耐えきれなくなり、破壊されます』
リアから回答を得ると、次に注ぎ方を聞いて理解した。
「マイルス。今から此れを外すよ」
「えっ? でもこれは鍵が無いと外せないんだよ」
「大丈夫、まかせて!」
そう言うとグレンは、腕輪に魔力を注いだ。
バキッ!!!
激しい音と共に、腕輪は粉々に砕けた。
「えっ!? 嘘!? どうやったの!?」
壊れない筈の腕輪があっさり壊れた事に、驚きを隠せないマイルス。
「ゴメン、説明はあとで…先にやらなきゃいけない事があるから…」
そう言うとグレンは、ルカナスの方へと向いた。
「グレン駄目だよ! いくらグレンが強くても、ルカナスは四軍の騎士団長なんだ! 敵いっこないよ!」
マイルスが悲痛な叫びで止めようとするが、グレンは肩越しに振り返って、笑顔で言った。
「大丈夫…``俺``に任せて!」
「…えっ?…グレン…今君、俺って…」
グレンの一人称が、``僕``であった筈だった事に驚いた。
「色々と…覚悟を決めただけだよ」
それだけ言うと、グレンは再びルカナスの方を向いた。その表情は先程とは打って変わって、敵でも見る様な感じであった。
「色々と待たせたな。態々待っててくれたのか?」
と、先程から全く行動していなかったルカナスにグレンが言った。
「貴様とマイルス姫との最後の会話だからな…情けで待っててやったのさ」
「『最後』? 『これからの』の間違いだろ? 俺は死ぬつもりは全くないんだから」
「貴様が空を飛ぶという、奇妙な魔法を使おうが、猫獣人如きの貴様が私に勝つ事等不可能だ!」
と、得意げに言うルカナスだったが、そんなルカナスにグレンは、呆れる様に溜息を吐いた。
「あのさぁ、何でエルディルを出た俺が、今此処に居ると思う? 一旦戻って敵がうろつく街中を進んできたんじゃん」
「?…!!!」
グレンが何気なく言った言葉の意味、ルカナスは察した。
「まさか貴様…私の部下達を…」
「そうだよ…アンタの部下は俺が殺した」
非常に冷たい口調でグレンは言った。先程『覚悟を決めた』と言ったのは、敵を殺める覚悟をしたという意味であった。
「殺す前に色々と聞いたよ。今回のクーデターの事とか、マイルスとの結婚はこの国を手に入れる為の布石だったとか…残念だよ」
ルカナスの眼を見つめながら、グレンは続ける。
「アンタが本当にマイルスを愛しているなら、俺は潔く身を引くつもりだったんだけど…そうじゃなかったんだな」
「黙れ! 所詮余所者の貴様には関係ない事だ!」
激昂しながらルカナスは言うが、グレンは冷たい空気を身に纏わせて言った。
「確かに俺は余所者さ…しかし…」
静かに夜月の柄に手を掛ける。
「愛した女も護れない様な情けない奴には、俺はなるつもりはない」
静かに音を立てながら、夜月が鞘から引き抜かれる。その刃はグレン同様に冷たさを宿していた。
「…ふん! ならば良かろう」
ルカナスも腰に帯びていた剣を抜いた。
「貴様を殺して姫を戴く…それだけだ!」
「…『リア。聞く必要は無いけど、一応聞いておく…コイツに負ける可能性は?』」
『マスターが負ける可能性は、0パーセントです』
即答で返したリア。それにグレンは自然と笑みが零れる。
「何がおかしい?」
リアとの会話を知らないルカナスが、不思議そうに尋ねる。
「いや別に…じゃあ始めようか! この国の命運を掛けた一戦を!!!」
「ほざけ!!!」
グレンとルカナスの決戦が、今始まった。
ホンマは次の章から、グレンの一人称は変わる予定でしたが、覚悟を決めたという事で、あえて今回で変えました。
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