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黒猫の騎士  作者: 黒猫キッド
第一部・クーデター編
58/77

58・グレンVSルカナス 1

「グ、グレン…君飛べるの!?」

 現在、自分を抱えて浮かんでいるグレンに、マイルスはそう問いかける。

「まあね、出来れば隠したかったスキルだけど…」

 そう言うとグレンは、ルカナスから離れた場所の城壁に移動し、マイルスを城壁の上へと降ろした。

「怪我はないみたいだけど、この腕輪は?」

 以前は付けていなかった腕輪に気付き、マイルスに尋ねた。

「魔力封じの腕輪…ルカナスに付けられたんだ」

 聞きたい事が沢山あったが、とりあえずはグレンの質問に答える。マイルスの言葉を聞いて、一瞬険しい表情になるグレンだが、次には元の穏やかな表情に戻る。

「…『リア。これ外せる?』」

『可能です。マスターの魔力を腕輪に注げば、腕輪は耐えきれなくなり、破壊されます』

 リアから回答を得ると、次に注ぎ方を聞いて理解した。

「マイルス。今から此れを外すよ」

「えっ? でもこれは鍵が無いと外せないんだよ」

「大丈夫、まかせて!」

 そう言うとグレンは、腕輪に魔力を注いだ。


 バキッ!!!


 激しい音と共に、腕輪は粉々に砕けた。

「えっ!? 嘘!? どうやったの!?」

 壊れない筈の腕輪があっさり壊れた事に、驚きを隠せないマイルス。

「ゴメン、説明はあとで…先にやらなきゃいけない事があるから…」

 そう言うとグレンは、ルカナスの方へと向いた。

「グレン駄目だよ! いくらグレンが強くても、ルカナスは四軍の騎士団長なんだ! 敵いっこないよ!」

 マイルスが悲痛な叫びで止めようとするが、グレンは肩越しに振り返って、笑顔で言った。

「大丈夫…``俺``に任せて!」

「…えっ?…グレン…今君、俺って…」

 グレンの一人称が、``僕``であった筈だった事に驚いた。

「色々と…覚悟を決めただけだよ」

 それだけ言うと、グレンは再びルカナスの方を向いた。その表情は先程とは打って変わって、(かたき)でも見る様な感じであった。

「色々と待たせたな。態々待っててくれたのか?」

と、先程から全く行動していなかったルカナスにグレンが言った。

「貴様とマイルス姫との最後の会話だからな…情けで待っててやったのさ」

「『最後』? 『これからの』の間違いだろ? 俺は死ぬつもりは全くないんだから」

「貴様が空を飛ぶという、奇妙な魔法を使おうが、猫獣人如きの貴様が私に勝つ事等不可能だ!」

と、得意げに言うルカナスだったが、そんなルカナスにグレンは、呆れる様に溜息を吐いた。

「あのさぁ、何でエルディルを出た俺が、今此処に居ると思う? 一旦戻って()がうろつく街中(・・・・)を進んできたんじゃん」

「?…!!!」

 グレンが何気なく言った言葉の意味、ルカナスは察した。

「まさか貴様…私の部下達を…」

「そうだよ…アンタの部下は俺が殺した」

 非常に冷たい口調でグレンは言った。先程『覚悟を決めた』と言ったのは、敵を殺める覚悟をしたという意味であった。

「殺す前に色々と聞いたよ。今回のクーデターの事とか、マイルスとの結婚はこの国を手に入れる為の布石だったとか…残念だよ」

 ルカナスの眼を見つめながら、グレンは続ける。

「アンタが本当にマイルスを愛しているなら、俺は潔く身を引くつもりだったんだけど…そうじゃなかったんだな」

「黙れ! 所詮余所者の貴様には関係ない事だ!」

 激昂しながらルカナスは言うが、グレンは冷たい空気を身に纏わせて言った。

「確かに俺は余所者さ…しかし…」

 静かに夜月の柄に手を掛ける。

「愛した女も護れない様な情けない奴には、俺はなるつもりはない」

 静かに音を立てながら、夜月が鞘から引き抜かれる。その刃はグレン同様に冷たさを宿していた。

「…ふん! ならば良かろう」

 ルカナスも腰に帯びていた剣を抜いた。

「貴様を殺して姫を戴く…それだけだ!」

「…『リア。聞く必要は無いけど、一応聞いておく…コイツに負ける可能性は?』」

『マスターが負ける可能性は、0パーセントです』

 即答で返したリア。それにグレンは自然と笑みが零れる。

「何がおかしい?」

 リアとの会話を知らないルカナスが、不思議そうに尋ねる。

「いや別に…じゃあ始めようか! この国の命運を掛けた一戦を!!!」

「ほざけ!!!」

 グレンとルカナスの決戦が、今始まった。


 ホンマは次の章から、グレンの一人称は変わる予定でしたが、覚悟を決めたという事で、あえて今回で変えました。

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