54・クーデター 1
「そうか…既に引き払っていたか…」
グレンが察知するより時は遡り、此処はエルディルの城の玉座の間であった。そしてその玉座に座り、兵士の報告を聞いているのは、エルディア王国の王であるジルガであった。
「はっ、宿の女将によれば早朝に宿を引き払ったとの事です。それで今現在街全域を捜索中です」
「分かった。引き続きグレンの捜索を続けてくれ」
ジルガの言葉を聞くと、兵士は足早に玉座の間を去った。
「ったく…世話のかかるガキだな」
悪態をつくジルガ。何故グレンを探しているのかと言うと、もう一度マイルスと話し合いさせたいという親心からくるものであった。
それ以外にも気になる事があった。
『あのグレン…俺の『鑑定』をレジストしただけの能力がある。それに昨日強大な魔力を感じた方角からグレンがやって来たらしいし…色々聞かないといけないな』
そう考えていた時だった…。
「へ、陛下! 大変です!!!!」
先程とは違う兵士が、血相を変えて飛び込んできた。
「何だ? どうしたんだ?」
ジルガが尋ねる。兵士は息を整えながら報告する。
「…ルカナス団長が…謀反を起こしました!」
「何だと!?」
ジルガの怒号の様な言葉が、玉座の間に響いた。
※ ※
一方、ロイナス率いる第一軍の騎士や兵士達が、街中で反乱を起こした第四軍の騎士や兵士と交戦していた。
「怯むな! かつての同胞とはいえ今は敵だ! 恐れず殲滅しろ!!!」
両手で構えたバスタードソードで、敵を薙ぎ払いながら叫ぶロイナス。
「くそ! 何考えてやがんだルカナス! 我がエルディア王国に弓を引くなんて…!」
その時ロイナスは、ある事に気付いた。
「そういえばアイツは、俺達獣人を毛嫌いしていた…その事でジルガ王に、俺達獣人の排除を申し出ていたという話を聞いた…結局は一蹴されたみたいだが…まさかアイツ、ジルガ王を!? おい!」
ロイナスは近くに居た兵士に声を掛けた。
「何でしょう!」
「城は…陛下はどうなっている!?」
「城は既に一軍と三軍の三分の一の兵や騎士達と共に、防備されています」
「そうか…遠征に出ている第二軍も居てくれれば、もう少し安心出来るが、それだけの戦力ならば、大丈夫だろう…」
ロイナスは安心し、再び第四軍の騎士や兵士の掃討を開始した。
※ ※
「はぁ!!!」
第三軍軍団長のラインの拳が、第四軍の兵士の腹部にめり込み、吹き飛ばされる兵士。
「どうやら全軍ではなく、半分みたいだが…それでも数が多すぎる…ルカナスめ賊や傭兵も引き込んだか?」
ラインの周りで倒れている敵の兵士達の中には、盗賊の様な出で立ちをした者や、傭兵の様に装備がバラバラの者まで混ざっている。
「城は僕やロイナスの軍の騎士や兵士達に守られているから、このまま掃討し続けて、ルカナスを捕縛すれば良いはずだ…」
だがこの時、ラインはある事に気付いた。
「! そういえば確か…今日は姫様が早朝から孤児院に行く日では…」
それを呟いた瞬間、ラインは叫んだ。
「全騎士と兵士に告げる!!! 掃討を後回しにしマイルス姫を見つけて保護するんだ!!!」
「「「はい!!!」
騎士や兵士達は、蜘蛛の子を散らす様に街中に散っていった。
「姫様…どうか御無事で…」
ラインはそう祈りながら、自身も探す為に活動を開始した。
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