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黒猫の騎士  作者: 黒猫キッド
第一部・クーデター編
50/77

50・マイルスの告白 グレンの涙  2

 前話の続きですわ。

「グレン…君が好きだ…ボクと結婚して…ボクの騎士になってほしい…」

 そう告げたのだった。

「…えっ?」

 一瞬グレンは、マイルスは何を言っているのか分からなかった。

「流石に今ので分からない程、鈍くはないよね?」

 からかう様に言うマイルスだが、その瞳は本気であった。

「…! い、いやちょっと待った! 何でいきなり? 僕がマイルスと結婚!? よく分からないよ!?」

 あまりの事に混乱するグレン。

「…理由は? 僕なんかを選ぶ理由は?」

 落ち着いて尋ねるグレン。マイルスは少し考えて答える。

「簡単に言うと…一目惚れかな…」

「一目惚れ?」

「君と会った時からさ…ボク何だか君に魅かれているみたいなんだ…、グレンと話していると楽しいし、グレンの上着の匂いとか嗅ぐと落ち着くし…」

「……」

 グレンが無言を貫いて顔を俯かせていると、マイルスがグレンの手を握ってくる。

「ボクはグレンが好きだ…誰よりも…ボクと一緒になって…」

 そう真摯に告げるマイルスに、グレンは…。

「…ゴメン…無理だよ」

 そう言って顔を上げた。その顔は何故か笑顔だった。

「!?」

「僕は只の民間人だから、マイルスとは釣り合わないよ。マイルスには相応しい、王族や貴族があるでしょ? 何より君の父親の王様が許してくれない」

「そんな事無いよ! 父さんはボクが選んだ相手なら、誰であっても認めるって、小さい頃から言ってたよ!」

 反論するマイルスだが、決定的な事をグレンは言う。

「それに君は、僕の事が好きだって言ったけど、それ以前に君が愛する存在が居るじゃないか?」

「えっ!?誰それ、そんなの居ないよ!?」

「またまた…ルカナスって騎士だよ。此処に来る途中、その人に会って聞いたよ。『愛し合っている』って…」

「ルカナス…アイツ…嘘だ! ボクはルカナスなんか愛してない! 誰かを愛しているとしたら、それはグレンだけだ!」

 グレンはマイルスが、ルカナスとの関係は出鱈目だと主張している事に疑問を抱くが、そんな事はおくびにも出さず続ける。

「…仮にルカナスの言葉が嘘でも、僕は君には合わないよ。分かってほしい」

「!!!!!」

 グレンにそう言われ、マイルスは黙り込んでしまう。グレンは気まずくなり、部屋を見回すと、部屋の隅の机に先程貸した上着があった。グレンは机まで脚を進めて、上着を手に取って羽織った。

「マイルス…僕は明日此処を去るよ…元気でね」

 笑顔でそう告げると、グレンは静かに部屋を出て行った。それに対してマイルスは、声を掛ける事も追いかける事も出来なかった。


※          ※


 元来た道を辿っていると、やがて中庭へと辿り着いた。其処には見覚えがある姿があった。

「お、王様」

 其処に居たのは、相変わらず王様らしくない服装のジルガであった。

「おう、グレンか」

 ジルガがグレンに気付いた為、慌てて姿勢をとろうとするグレン。

「ああいい、そのままで!」

 そう言うとジルガは、行っていた花壇への水やりを止めて、グレンに向いた。

「! お前…」

「?」

 ジルガは何かに気付いた様であったが、グレンには分からなかった。

「まあ良いか…ところでお前、マイルスの奴に結婚を申し込まれただろう」

「え、ええ…そうですが…」

 まさか知っているとは思わず、グレンは驚いた。

「それで、何て答えた?」

「……断りました」

 一瞬言うのを躊躇ったが、グレンは正直に言う事にした。

「そうか…まあ、アイツの想いをお前に押し付ける訳にはいかないからな」

「いえでも…嬉しかったです。僕みたいな、捻くれた猫獣人を好いてくれたのは…では僕はこれで…」

 そう告げるとグレンは、逃げる様にその場を去って行った。

「……」

 グレンを見送ったジルガは、城の中へと入って行った。


※          ※


「…折角見つけたと思ったのにな…」

 部屋の中でポツリと呟くマイルス。その時…

「マイルス。入るぞ!」

 ノックと共に部屋の外から、父親であるジルガの声がした。

「うん、良いよ」

 マイルスが許可すると、ジルガが入ってきた。

「体は大丈夫か?」

 部屋に入って開口一番に具合を聞いた。

「大丈夫だよ父さん。其れより何か用かな?」

「さっきグレンと会ってな、断られたらしいな…」

「…うん、そうなんだ。でもグレンはボクの事が好きじゃなかったみたいだから、仕方ないよね」

 精一杯強がって言うマイルスに、ジルガが言った。

「本当にそうか? アイツは気を遣ったんじゃないか?」

 ジルガの言葉に、マイルスは戸惑う。

「そ、それってどういう事?」

 マイルスが尋ねると、ジルガは言った。

「アイツ…泣いてたぞ…」

 ジルガがグレンを見て気付いた事は、涙を流していたという事であった。


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