46・グレンの魔力
帰る途中、グレンはある事を思いつき、立ち止まった。
『どうしたのですか、マスター』
「リア、僕の魔力って高い方だよね?」
『マスターの魔力は、この世界でもトップクラスです』
「って言われても、イマイチ分かりにくいな」
『…魔力を放出すれば良いのでは?』
「放出って…どうやって?」
リアに言われても、やり方が分からないグレン。
『イメージでは、体から力を放出する感じです…私がサポートしますから、やってみて下さい』
「分かった…」
リアに言われたとおり、グレンは力を放出するイメージをした。
「ンンン…!!!」
力む様な感じで唸り声を上げるグレン。だが内心では…
『全然出ないじゃないか!?』
自分の体から、何も放出されていない事に嘆いていた。しかしこの時、辺りではとんでもない事が起きていたのだった。
※ ※
時は少し遡り、草原を歩く美少女の姿があった。マイルスである。
「今日は新しい魔法でも開発しようかな」
愛用の杖を持ちながら、ご機嫌で草原を歩くマイルスだったが…
ゴォオオオオオオ!!!!!
「!?」
突然、嵐の様な魔力が吹き荒れて、マイルスは立って居られなくなった。それは一秒だったか十秒だったか、はたまた一分だったから分からない程の魔力が押し寄せて、やがてそれは去って行った。
「…グレン?」
ポツリと呟いたその名。嵐の様な魔力から感じられたのは、見知った黒猫であった。
そしてそれは、王都にも届いており、魔力を感じられる騎士や魔術師、果ては冒険者まで大混乱に陥っていた。
其れ程までにグレンの魔力は、本人の自覚なしに凄かったのだった。
※ ※
「…ふぅ」
グレンは魔力の放出を止めた。尤もグレン本人は放出している自覚無しだったが…
「やっぱり分からないな…今夜、『魔力感知』のスキルでも創るか」
『マスター。マスターの魔力で、王都は大騒ぎになってますよ』
リアが言った衝撃の内容に、グレンは驚く。
「マジで!? ヤバイな、聞かれたらシラ切ろう」
『それに、数キロ先でマイルスが倒れています』
「〝えっ!? それを先に行ってよ!」
グレンは慌てて、『超感知能力』を使用する。
「…王都方面数キロ先に『MILES』…今行くよ!」
グレンは『音速猫』を使用して、マイルスの元へ向かった。
※ ※
一方マイルスは、未だ立てない状況に居た。
「ハアハア…や…ばい…今魔物に襲われ…たら…」
「マイルス!」
マイルスの耳に、聞き覚えのある声が聞こえた。視線を向けると、其処にはあの黒猫が居た。
「グ…レン…」
「大丈夫!? マイルス」
慌ててマイルスを抱き起すグレン。
「あれ? グレン何時の間に? さっきまで居なかったのに…」
弱弱しい口調で尋ねるが…
「それは良いから、どうしたんだ一体!?」
「いや何かさ…凄い魔力を感じて、力が抜けちゃったんだ。
「!!!」
グレンはソレが、自分の性だと直ぐに分かった。
「と、兎に角エルディルまで運ぶよ!」
「う…うん。お願い…」
グレンは自身の上着をマイルスに羽織らせ、背中でマイルスを背負った。
「グレン…ボクの杖…」
「!」
マイルスの指示で、グレンは地面に落ちていたマイルスの杖を拾い、夜月の脇へと差し込んだ。
念の為に、『超感知能力』で辺りを探ったが、幸いにも魔物や盗賊の類は見当たらなかった。
「それじゃあ行くよ」
本当なら、『音速猫』を使いたかったが、マイルスへの負担を考え使わず、普通に走ってエルディルへと向かった。
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