1・人としての終わり 1
「くわぁ~…」
変な声を上げながら欠伸をする少年、名前は黒崎 紅蓮。中学三年の一五歳である。
「何で人間って学校に行かなきゃいけないんだろう…」
朝の陽ざしを浴びながら文句を言う紅蓮。今現在紅蓮は学校へ向かう途中であり、制服姿でノコノコと歩いていた。
「!」
ふとその時、道の脇にある家の塀の上に、一匹の猫が丸くなって寝ているのが見えた。
「猫は良いな…自由にしてて…」
言いながらグレンは、通学カバンから音楽プレーヤーに繋がれたヘッドフォンを取り出し、頭に装着して音楽を聴こうとした。その時…。
「おっは。紅蓮」
「! おはよ~、遥人」
声を掛けて来たのは、片山 遥人。紅蓮の幼馴染の男の子だ。背は紅蓮と同じ位で、穏やかな顔つきをしている。
「猫なんか見ててどうしたの?」
「いやさ、猫は自由で良いなって思って…人間は学校やら仕事やらで大変だろ」
「相変わらず、紅蓮は捻くれてるよな」
「捻くれてるのが、僕のスタイルだからね」
「超捻くれ屋!」
紅蓮の皮肉とも言える言葉に、遥人はツッコミを入れる。
「おっはよ。紅蓮、遥人」
すると再び声を掛けてきた人物が現れた。杉下 琉季。紅蓮と遥人の幼馴染の女の子である。愛らしい顔と活発な性格で、男子からの人気は絶大であり、何より人気に拍車をかけていたのは、制服の上からも分かる、大きな胸だった。
「…朝からテンション高いね琉季は…」
呆れ気味に呟く紅蓮。
「むむっ! 紅蓮がテンション低すぎなの」
「僕は朝に弱いんだよ」
「もう紅蓮は捻くれ者なんだから! 遥人行こう!」
「う、うん…紅蓮も行こう」
遥人と琉季は歩き出し、その後ろを紅蓮は付いて行く様に歩き出した。
『…これからも、こんな風に居られると良いね』
先程の態度とは裏腹に、紅蓮はそう思っていた…もっともその考えは、間もなく終わりを告げるのであったが…。