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第5話 濡れ場指導

 先に濡れ場を演じるらしい。どうやって気持ちを切り替えるのだろう。


 映画の撮影の仕方は良くわからないな。俳優としての初仕事が映画だったのは良かったのか悪かったのか。


 事前に接触した所為か。とにかくスタッフは協力的で濡れ場のシーンには外部からコントロールできるタイプのカメラをセットしていてくれていた。


 今日のスタジオ入りのときに教えて貰っていたから、スムーズにスギヤマ監督を含め、他の人間たちを排除するのに成功した。流石にニューハーフの『ユウ』とのベッドシーンを多くの人に直接見られたいとは思わない。


 『西九条れいな』は残り、演技指導を続けてくれるらしい。律儀なところもあるんだな。いつもこうなら人に恨まれることは無いだろうに。


 この映画に参加するに当たり、渚佑子さんから『西九条れいな』と『一条裕也』との調査結果を見せて貰っている。


 それによると驚くことに異母兄妹で一時期は恋人同士でもあったらしい。


 しかも、出会う前は至ってノーマルだった『一条裕也』が出会って以降、急速にノーマルとは言えなくなり、最終的にニューハーフの人生を選択しているのである。


 穿った見方をすれば、何処かで真実を知った『西九条れいな』がそういうふうに誘導した可能性もあり、恨まれても仕方が無いのでは無いだろうか。


 それにしても躊躇いも無く僕の前で2人は裸になり、身体を重ねる。この女には恥じらいってものは無いのだろうか。『一条裕也』のほうはこちらの視線を気にするようなところもあって、女らしいっていうのに。


「志保と身体を重ねるなんて十年ぶりだな。」


 声帯もイジっているのだろう。若干、ハスキーボイスで男言葉が飛び出す。あくまで2人の間で『一条裕也』は『男』だということなのだろう。


 しかし、こんなときどんな顔をして聞いていればいいんだか。そうか、初めて知ったわけだから、驚かなければいけないのか。


「そうね。演技中はどっちを攻めて欲しい? 裕也は後ろが好きだものね。」


「そう仕込んだだけだろ志保が。時々、志保の指使いを思い出して疼くんだからな。」


 この女、『一条裕也』のバックバージンを奪ったらしい。そのテクニックまでコピーしなきゃならないのだろう。無造作に右腕の筋肉が動いている。特に中指を動かす筋肉が凄い。


「ごめんね。あの時は、あれしか手段が無かったのよ。」


 言い訳をしているところをみると誘導した可能性が高い。こんなところで修羅場を演じてくれるなよ。


「志保には、初めから性同一性障害だとわかっていたのか?」


 僕のことはどうでもいいのか。語り出さないでくれよ。一応、警戒レベルを1段上げておくか。周囲には何も無いから、せいぜい出来るのはクビを締めることくらいだ。


 即座に飛び込んで引き離せるようにしておく必要があるよな。なんで、こんな心配までしなくちゃならないんだ僕が。溜息しか出ないよ。全く。


「そうね。初めは年上の女性にそう仕込まれただけだと思っていたのだけど、裕也のエッチって裕也が受け身になることが多いじゃない。しかもイクのが目的じゃなくて身体を重ねるのが目的なんだもの。」


 見事としか言いようがない。この女、レズっけもあるのか。ニューハーフをイカせてしまった。


 でも映画の趣旨とは正反対だよな。アドリブは無理だと言うのに、何を考えてやがるんだか。


 タイトルにもある通り、処女の社長令嬢が遊び人の男の手に掛かり、女としてムンムンとフェロモンを発するように仕向けなければならないっていうのに、一体どうしろというのだろう。


 普通に大切な女性を思って演技する。そんなところでいいのかもしれない。

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