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プロローグ

帰還勇者シリーズの番外編となります。

本編をお読み頂かなくてもお楽しみ頂けるように構成しているつもりですが

解らない点があれば感想欄に指摘頂けると助かります。


よろしくお願いします。

「何を考えてやがるあのアマ!」


 珍しく球団社長がドッグカフェ『超感覚』に立ち寄ってくれた。しばらくコウスケの相手をしていたかと思ったら申し訳無さそうに話を始められた。


 この店の名は僕の五感が人より優れているから付けた名前だ。嗅覚は警察犬よりも優れているし、聴覚は遠くに居るの人間の声も聞き取り、視覚は走る新幹線の窓の人の顔を判別できる。触覚は空気の流れる方向が分かり、味覚はどんな料理でも再現できる。


 この驚きの能力は生まれ付いてのものじゃない。ある異世界召喚されたときに神から頂いたスキルだ。普通なら魔法とかのスキルを貰うのだろうが召喚先では適性が無いと使えないらしい。


 だから代わりに五感を敏感にしてほしいとお願いしたのだが、召喚した人たちに戦えない人は欠陥品と烙印を押されて帰ってきた。


 その後プロ野球選手に成りたいという夢を捨てきれず、スキルを生かしてプロテストに合格し1軍で活躍した。しかし、肩を壊したので引退して貯めたお金でこの店を始めたのだ。


 『超感覚』スキルや『鑑定』スキルや『翻訳』スキルを駆使して、犬の好みや健康状態のチェックを行なえる。店の経営は順調だ。


 さらに『超感覚』を駆使することで3方向から見た人の動きをコピーできる。それを利用してダンスの振り付け師の仕事も貰えるようになってきたのだ。


「何を怒っているのよシン。」


 顔を上げると年上の恋人が店に入ってきたところだった。


 桜田門の美魔女。自称警視庁のマリリンこと野際瑤子警視正はノンキャリアが多い捜査1課長にのし上がったキャリア組だ。


 警視庁管内で重大事件が勃発し彼女が陣頭指揮を執ると警察官の気合が違うらしい。数年前に強犯1係の係長だった当時発生した女優『西九条れいな』誘拐事件でその辣腕が評価されて捜査1課長を拝命したそうである。


 この間、連続殺人事件で巻き込まれた際にその女優の前でこの能力を使って俳優として演技をしてみせたのが間違いだった。


 『西九条れいな』は日本での興行収入トップ10の映画に幾つも主演している有名女優でありながら、宮内庁病院に勤務する医師でもある理系女だ。


 そのためか芸能界の仕事を軽視する傾向があり、その言動から芸能関係者やマスコミ関係者から忌み嫌われており、いつもバッシングされている。


「ああごめん。スギヤマ監督から映画『花の香り匂い立つ』への正式な出演依頼が来た。それも球団社長から直々に話を通されたから断れないんだよ。」


 球団社長も企画にタッチしているらしく。嬉々とストーリーを話してくれた。


 ある企業の創業家が題材らしい。僕が演じる遊び人の兄と真面目に働く弟、しかし父親は兄を跡継ぎにしたいらしい。その確執が嫌で家を飛び出した兄が偶然助けたライバル会社の社長令嬢と恋仲になる物語らしい。


 どうやら、その企業は敵対的企業買収をされるらしく。球団社長が監修をしているらしい。


 何を考えているんだスギヤマ監督は。あれだけ僕たちが球団社長のダークなイメージを払拭しようと必死なのに。


 こうやって球団社長が関わっているところからも仕事が回ってくる。だけどそれとは別に彼の元に集った異世界から帰還した『勇者』たちで彼の知らない裏の仕事も請け負っている。


 独立した僕なんかに回ってくる裏の仕事など、たかが知れている。彼の知人の日本国内でのガードくらいである。


「スギヤマ監督ってあの世界的に有名な映画監督でしょ。凄いじゃない。」


 瑤子さんも意外とミーハーだな。その呑気な声に気持ちが和んでくる。


 初めてお会いしたときは僕もそう思ったけど、ただの好奇心の強いオッサンだ。僕たち『勇者』の事情にも詳しい。前アメリカ大統領、英国王室、ZiphoneグループのゴンCEOに並ぶ球団社長の側近という立ち位置だ。


 既にあの人の映画には荻尚子の代役として関わっており、スタッフロールにも名前が載ったことがある。


「『花の香り匂い立つ』といえば『西九条れいな』主演だ。しかも濡れ場までありやがる。前回仏心をだして慣れあったのが失敗だったかもしれない。」


「シンってば本当に『西九条れいな』が嫌いなのね。」


 瑤子さんは嬉しそうだ。僕を年増好きと誤解している所為か、僕より年下の女性には警戒心を抱かないみたいだけど少しでも年上だと相手が既婚者かどうかに関わらず警戒しているみたいだ。


「その『西九条れいな』と前バリは付けるだろうが濡れ場を演じなくてはならないだなんて最悪だ。」


 あの女、男の生理現象が解っていて面白がる傾向がある。何が嫌かって身体を合わせたときに身体が反応してしまうのを知られるのが嫌なんだ。


 僕だって男だ。綺麗な女性と触れ合って反応しないわけがない。映画出演は断れないがあの女と身体を重ねずに済む方法を考えなくてはならないらしい。


 幸いにして、あの女の敵は多い。味方はごく少数だ。いきなり球団社長(ジョーカー)を切られたが、今後はノータッチと言ってくれたから大丈夫だ。後はスギヤマ監督とご主人の和重さんをなんとか懐柔することにする。


 まずは崩せるとしたら和重さんだろう。僕が『西九条れいな』と身体を重ねたく無いといえば賛同してくれるに違いない。


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