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幸福と不幸の相対性理論  作者: ジョン
1/1

幸せとはなんですか?不幸とは何ですか?

十二月二五日

連日の異常な寒波に伴い一週間前から設置されていイルミネーションも例年より寂しく感じていたが、空気を読んだかごとくこの25日。

この日に限り雪もちらちら振りながら、寒すぎない気温で迎えることになった。

あちらこちらに手を繋ぎながら幸せそうに笑うカップルが目に入る。

たぶん自分には一生手に入れることのできない笑顔をまるで見せつけるように僕を通り過ぎることに八つ当たりと憤りをこめたため息をつくことで自分を保とうとしていた。

こんな日も社会人になれば何のことない平日に成り下がったことを嬉しく思うべきだろうか。

いつも変わらない時刻にJRにつき、改札をくぐり5番線ホームでいつものJRを待つ。

1つだけ違ったのは反対側の6番ホームに俺の会社の後輩の坂下を見つけたことぐらいだ。

なんとなく彼女を見ていると目が合ってしまい咄嗟に逸らしてしまった。

会社の中でそんなに、話したことはないけどお互い顔は知っている。その程度の関係だった俺にとっては気まずいという気持ちを抱かろう、得ないがしかし、このまま無視すると面倒なことになりそうになるなと思い、彼女を再度見る。

すると、彼女はまだ自分を見ながら何かを言っているようだ。

口話の技術などないおれからすればさっぱりわからなかった。

けど、彼女は次の瞬間走り出した。

一瞬ホームに飛び込むのではないかと思ったが、そうではなく6番線の入り口に走っていた。

彼女の情緒不安定具合に恐怖と心配が半分程度づつ押し寄せた。

それから1分も経たないうちに彼女、坂下が5番ホームのおれのところに走って来た。

「偶然ですね!」

そういい彼女は満面の笑みを見せた。

正直今のこの出会いを偶然と言うのだろうか。と、少し困惑気味に

「あ、あぁ。滅多にここで会社の人に会うことないからびっくりした。」

などと言ってみたが一番驚いたのは間違いなく25日のこの日に休みである坂下という後輩が一人でいたことに驚いた。

彼女は会社の中でも美人ということで有名で二桁の人が振られたとか、振られてないとか。

そんな噂が飛び交うほどの美人が一人である理由として考えられるのは既に彼氏と別れた後という可能性だが、彼女は明日も休みを取ってることからてっきりお泊まりデートだと会社内では軽い騒ぎになってたぐらいだ。

「先輩今帰りなんですね!

ずっと、会社の前で待ってたはずだからおかしーなーと思いながら帰るところだったんですよ!」

なぜか聖夜の夜まで働いていたおれが責められてしまった。

「今日はおれが最後だったから、鍵閉めて裏口から帰ったんだ...って!おい!」

と言い終わる前に彼女はおれの腕を引っ張り5番ホームの入り口に走り出した。

「先輩!行きますー!レッツゴーです!」

正直彼女の行動全てが予想外で困惑が止まらないでいるまま、その腕を外すことができずにいた。

それは全力で腕を引っ張り離してしまうと前のめりにずてーと転ける姪っ子の姿と被ったからだ。

「行くって!どこ行くの!」

走るのなんていつぶりなんだろうとかんがえながら人混みをかけていく彼女はまるでボルトのようだった。

「私の家でクリスマスパーティーです!」

突拍子のなさに唖然としたまま走り続け6番ホームに入った。

「いやいや、聞いてないし急になんで?」

まだ息が切れて、前のめりになるみっともない姿を見られたと少し恥ずかしい気持ちを感じながら、みると彼女も頬を赤くし、少し息を切らしていた。その姿がなんとも綺麗で見惚れてしまった。

「一年以上前からこうすることを決めてたんです!来年は先輩とクリスマスパーティーするんだって!」

「俺と坂下はそんな仲だったか?」

言った瞬間にはっと後悔した。

少し嬉しいことを言われるとそれを真っ二つするような言葉を、いい相手を拒絶し相手に拒絶される。そうやって、相手から傷つけられることを回避してきた自分の悪い癖だ。

てっきり治ってると思ってたのになんてとも思いながら彼女の顔を見上げる。

「こ!れ!か!ら!そういう仲になるですよ?」

彼女の悪戯な笑顔は俺の嫌味な一言なんてまるで聞いてないようにそう言った。

「会社の人に見つかるとあらぬ疑いかけらるぞ。俺にも迷惑くるんだがな。」

なんて、そんなことを口から泉のごとくでる嫌味な一言を言う自分に酷い自己嫌悪感に襲わられた。

そういういうと流石の彼女も少し悲しそうな顔をしながら

「...迷惑ですよね?先輩は私には興味なさそうですし。」

彼女の悲しそうな顔なんて初めて見たので驚きと申し訳なさに一言漏らした。

「迷惑...ではないけど...。たぶんこういう事をどうでもいいと思ってる奴にやるべきでは」

そう言い終わる前に彼女は俺の無防備な右ほほにキスをした。

「私はそんな軽い女に見えますか?」

そういい彼女は悪戯な笑顔を見せた。


俺25歳のケイの過去を振り返るにあたりに

思い出としてはありすぎるぐらいの波乱万丈な人生をそれでも精一杯振り返ろうとした。

まずは小学生の時代を振り返るとする。


小学1年

自分はキリスト教ということもあり、近くの幼稚園ではなく少し遠くの幼稚園に通っていたため同じ幼稚園つまり同幼の友達なんているわけもなく、緊張と不安で押しつぶされそうになりながら入学式を迎え、教室に入った。

しかしなんてことなく友達はできた。

その子は背も大きく、顔つきはまるで東南アジア系の凛々しい男の子だった。

自分は真逆というかいわゆる草食男子もびっくりな見た目である。

身長は小学1年生の中でも小さく顔つきは女の子と間違われるような顔だった。

そんな始まりを迎えた俺の小学時代であるがここからの6年間は楽しくも絶望的な期間であったことは間違いないだろう。


「おい!金貸せよ!」

その家庭は母子家庭でかなり年季の入ったアパートに住んでいる一人っ子子供であった。

「も、もうないよ...この間あげたばっかじゃん...」

気の弱そうな男の子。クラスでも目立たず所謂いじめられっ子である。

「うっせぇ!どうせあんだろ!渡すまでここにいるからなー!」

こんなことはただの犯罪である。

子供ということもあり罪の意識より自分の欲望、又は自分の優位性を周りに誇示するように弱いものをいじて相対的に自分を強く見せる。そんなことで周りに対して権威をちらつかせる。

そうやって、2つの欲望を一挙に手に入れる傲慢なやり方。

小学生の自分だからできたことなのだろう。

そうつまりいじめている側が私。

爪牙 景である。

私は特に不自由もなく両親と兄弟3人の五人家族であった。

ただ裕福ということでもなかったので、お小遣いはお手伝いした際に100円もらうというものであり、金銭的には余裕はなかった。

そんな時、ある友達がいじめていており、これ以上いじめないことを条件にお金を要求するとそのいじめられっ子はいじめっこに2000円を渡したのことであり、これを発端にそのいじめられっ子はずっとお金をとられ続けているとのことだった。

そんな話を聞きつけ俺もその友達とグルになりさらにお金をふんだくろうとしていたのであった。

「本当に今日はないんだ。今日は許して。」

この問答ももう何回やったのだろうか。

このあとゲームセンターに行く予定があった俺らにとってはその資金稼ぎのためのちょっとした借金取りよろしく、この恐喝が当たり前になってきた。

習慣や当たり前はただの小学生を悪魔に変えることがあるのだ。

「そんなこと言って前もあったじゃねーか!

いっつも入ってるたんすをみせろ!」

そう大声で怒鳴りながら、手馴れるように家に上がりタンスを漁る僕の友人大神 雅也。

最初は後ろめたさから遠慮がちに後ろから見ていただけの大神も今や立派な借金取りである。

私も始めた当初はこれがバレた時どうしよつとかこんな事をしていていいのかとそんな気持ちで揺れていた。今思えばおそらく記憶に残っている限りはじめての罪悪感というものであったのだろうと思う。

そうやって、手に入れたお金はお手伝い20回分であり、目がくらみそうになった。

それはお金を手に入れる過程があまりにも簡単だったことにも起因するであろう。

「あれ?今日は本当にないなぁ?」

そう大神がいうといじめられっ子の陽太ボソッと言った。

「おかーさんにバレたんだ。」

そう呟くと僕と大神は顔を青ざめた。

バレる。つまりは親や教師にチクられる。

やっていることの重大さがここで、初めてわかったと言っていいだろう。

俺たちは声を出すこともできないほどの緊張と恐怖で身を凍らせながら次の陽太の言葉を待たず、僕たちはすぐに飛び出すように家を出た。

そんなところで現実なんて変わらないのにまるでそこの空間から飛び出すことで夢から覚めるとでも思ったのかは今の私には分からない。

その次の日の学校はまるで処刑台に向かう死刑囚と同じような気分であった。

死ぬことがわかっているのにそこに歩いていかなければならないというのは。

そうして心臓が弾け出しそうな気持ちを押さえつけ自分の席に着く。

そうやって告げられた教師の一言に驚いた。

「陽太が転校することになった。」

その瞬間の僕と大神の顔は人生で一番間抜けな顔をしていたと思う。


小学3年

この頃には既にクラス替えや様々な交流もあり自分の学年のクラスメイトの顔とスクールカーストはほぼ確定していたと言える。

しかし、さらに特定の仲のいい人物も固まっており僕も基本的には同じメンバーと遊んでいた。年も重なり悪さは前より酷いものとなっていた。駄菓子屋の万引きなどがその集大成であり毎日のように行われていた。

さらに俺たちはこの日さらに上の悪さをしようと心躍っていた。

自分が一年生の時にした悪さのことなんてもう忘れたようにわるさには磨きがかかっていた。

そんな折1つの異変が起きた。

父さんが入院することになった。

ただの頭痛ということであったが入退院を繰り返し結果手術することになったのだ。

あとで知ることになるが脳腫瘍であった。

時代は2004年早期発見でも治る確率の低かった脳腫瘍がステージが進んだ状態で発見された。

頭の手術ということもなり、父親のあたまは毛一本ないらつるっぱげになった。

ここまで、不幸という不幸もなかった自分にとって最大かつ最初の不幸が訪れた日だった。

「おとーさん治ってまた元気になるよね?」

そう問うと母は

「神様にお願いしたら大丈夫だよ」

そういう母の言葉に僕は安心した。

小さい俺にとって神様への願いは必ず叶うこと。このために今まで何度も何度も教会に通ってお祈りを続けたのだから。

そう思いはじめての手術が終わった。

無事手術は成功した。

その後退院し、父さんが家に帰ってきた。

今までの日常が戻ってくると思った。

その一ヶ月後、他の場所への転移が発見された。

その後は入退院と手術を繰り返し、とーさんは記憶がこんがらがることが多くなった。

ケーキを買ってきたことは覚えていても食べたことは忘れるなどがその一例だった。

その為母は毎回ケーキを食べてる写真を撮り食べてないと言った時はそれを見せていた。けど、それをみても父さんはどこか不満げであった。

父さんからすれば楽しみのケーキがないがみんなに食べた食べたと言われて困惑するのも無理はなかった。しかし、そんな父さんを見て俺は父さんが嘘つきに見えた。

嘘をついて不機嫌になっているように見えて腹が立った。

そんな日々が過ぎて行くが病状は悪くなる一方で父さんはいよいよしゃべることができなくなった。

50音のひらがな表で意思疎通を行うようになりその姿にもう病気前の元気な父さんの姿はなかった。

そうして、僕も歳を重ねて小学4年になったある日父さんがプリンが食べたいと伝えてきたので、母に伝えると母は一人で買いに行くと言って病室で二人きりになった。

それが少し気まずく、トイレに行くと言ってその場を飛び出し売店に向かうとそこには椅子に座った母がいた。

声をかけようと近寄ると母は涙を流してるのが見え僕は病室に戻った。

そうして春・夏を超えた頃には父さんはほとんど、寝たきりとなった。

それでも僕は神様に願ったから治ると本気で思っていた。というより、当たり前に治るものだと思っていた。そんな状況を見てもまだかつての父さんが戻ってくると思っていた。

のちに考えると子供というか宗教の怖さを体感した瞬間だったのかもしれない。

その頃には風呂に入ることもできない父の病室は独特の匂いで覆われており、また反抗期の始まりだったのかもしれないが僕が見舞いに行く回数は減っていた。

その年の12月23日。

既に春の時点で余命は半年と告げられた父さんはまだ生きていた。

しかし、呼吸が止まることもしばしばあり病状は深刻になって行くばかりであった。

その日は父の方のおばーちゃんや親戚も集まりもしかしたらクリスマスまで生きていられるのでは?とか正月も、1月20日の父さんの誕生日も生きていられるのではと話していた。そんな幸せな話の中、無情にもペースメーカーがけたたましく鳴り響いた。

いつもであれば止んでいるはずの音が今日は鳴り止まない。

そのままペースメーカーの音が止むことなく父さんは息を引き取った。

「12時20分。息をひとられました。」

医者がそういうと、母は父さんにしがみつき泣きついていた。

僕と姉と兄はただその姿を見てることしかできなかった。

兄弟は誰も泣いていなかった。何が起きたのかもわからなかった。

そして、俺は神を恨んだ。そんなものがいないと強く思い行く手のない怒りを自分の中で爆発させていた。

そんな中思ったのは1つの感情であった。

人は特別なんかではないということだ。

他の動物がありが死んだ時のようにあっさり死んだのだ。特別な瞬間もなく死んだと言われそれは受け入れ難かった。

「僕が死ねばよかったのに」

本当にそう思った瞬間だった。


小学6年

それ以降も変わることなく日常を送っていた。何も変わらない日常。

そうやって迎えた卒業式。

自分だけどこか取り残されるような感覚とともに卒業した。

多分中学が入っても何も変わらないと思ってた。

けどそれは甘い考えだったと言える。

誰だっていじめる側に回るように誰でもいじめられる側になることがあるのだ。

そう自分は中学に入りイジメにあった。


中学1年

入学するといままで見たことない同年代との出会いによりこの時自分が人見知りであったことに気づく。

そんな僕は同じ小学校だったやつと固まっているとその友達は他のグループに入るなど自分は取り残されてしまった。

そんな中同じ小学校同士の集まりが久々行われた。

そんな集まりに自分も参加し大富豪をやることとなった。

負けた奴は罰ゲームとしてクラスで一番可愛いと思う子に告白するというものでハラハラしながらゲームが進むと3人が残った。

僕とあんまり話したことのないがっちりとした体をした男の子潤。それと潤といっつもいる男の子浩太であった。

そして、みんなが手札が一枚になり浩太が上がり、自動的に次の順番の俺も上がりになるという勝ちになった時、潤が割り込み

「あーがり!」

と、声高らかに言った。

明らかにルール違反に

「いやいや!つぎおれの番じゃん!」

と、笑いながら言うと誰も笑っておらず

「お前の負けだろ」

と、誰かがいうとみんな負けだ負けだと言い始めた。

そして、いじめが始まった。

いじめといっても想像するよりかは楽なものであった。

帰りに全員の荷物を持ちながら蹴られたり殴られたり程度であった。

体操着を破かれたりとか水をかけられたりみたいなものはなかった。

それでも、そんなことが毎日続けば心は持たなくなってくるもんだ。

唯一救いであったのは私には友人がいたのだ。

いじめられっ子であったがクラスにも友人は何人もいたし、ほかのクラスにも何人かいた。

けど、自分がいじめられているという現状は消えなかった。

そんな日々を繰り返して一年たつとクラス替えが行われたのだった。

中学二年

ここで環境がいい方向に変えればなんて希望を持っていたがそこにいたのは

あの潤であった。そこから卒業までの日々は地獄の毎日であった。

クラス内で俺の父さんが死んだことを馬鹿にされ、それでも俺は笑って過ごした。

まるで、ピエロだった。いじめられる現状は何も変わらないのに怒ることもなくただ、笑った。

潤が休み時間に自分の机の前に立ちお前の父親どうしたんだっけ?とニタニタしながら聞いてくる。

そういうと俺も笑って「死んだ。」と答えると潤はケタケタと笑った。



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