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加入の儀式


「私が反帝国軍バンディッツの総統のレーベンハートだ、宜しく。君の噂は耳にしてるよアーサー君」


レーベンハートと名乗る男は、短髪でサイドを刈り上げ髪の毛を固めてたオールバックといった髪型をしている。背は高く優に百八十センチはあり鎧を身につけているがそれでも伝わる鍛えられた肉体が浮き彫りになっている。


「本当に精霊を三人連れてるんだな」


銀髪のツンツン頭に頬にキズのある男がマジマジと三人の精霊を見つめている。見た目はアーサーより年下か同じくらいの若い男である。


三人の精霊は、サッとアーサーの影に隠れた。


「どうも、ミランダ姉さんより紹介状を頂いてます。反帝国軍バンディッツの協力をお願いしたいです」


「み、ミランダ姉さん!! マジかあ」


銀髪のツンツン頭の男は目玉が飛び出しそうなほどのリアクションを見せた。


「ハハハ、バッツ、アーサー君はミランダさんの実の弟だよ。少し似てはいないけどね」


「イヤイヤ、言われなきゃわかんねーよ。まあ、三人の精霊と契約している理由が何となくわかった気がすんよ」


苦笑いを浮かべるバッツ。

そして、アーサーに近づき手を差し出した。


「オレは、バッツ・シュティッヒ。出身国は悪いが教えらんねえが反帝国軍バンディッツの一応、副総裁でレーベンハートさんの補佐をさせてもらってる。アーサー、君の加入を歓迎するよ」


「バッツ、ありがとう」


二人は堅く握手を交わした。


「宜しくな!チビ助共」


にっ、と白い歯を精霊達に見せたバッツ。


「ち、チビ助ってーーー」


リサは、ムッと顔を赤くして顔を膨らませた。




反帝国軍バンディッツそれは、 国を持たない人達で構成された組織だ。


加入メンバー数は不明、 活動拠点は不明でメンバーの多くの素性がわからない。


素性や顔が分かっているメンバーは、 代表のレーベン・ハート 、 バッツ・シュティッヒなど数名のみ。


一部の噂では、 少人数精鋭なのではと噂されている。


帝国がバンディッツを無視できない理由はメンバーにある。 代表的なメンバーだけみても特異体質で異能力者揃いなのだ。


これは帝国が恐れていた魔法に匹敵する恐怖だ。 バンディッツに対して対策を取りたいが素性が分からぬ故、 拠点もわからない。 帝国はバンディッツに対して対策しようがないのだ。


帝国は、自分たちの脅威になるものを排除し安心しきっている。 新たる脅威なんて次々と出てくるのに・・・。 更に外からの敵に対しては強いがいざ中から攻められるとあっという間に浸食し中から分断されてしまう脆さ。 そこが帝国の弱いところだ。


それに比べて反帝国軍バンディッツは仲間意識が逆にほとんど無い。 お互いにお互いをほとんど信用してない。 だが、 信頼はしている。 お互いの実力を認め、 人間性を認めている。 だから一人一人の絆は強いのだ。


認め合った互い同士だからこそ、 その繋がりは深い。 それ以外のことはお互い干渉しないし何処で何をしてるのかも知ろうともしない。 相手が誰で何者かも分からない人も多くいる。


バンディッツに加入するにはある儀式を通らなければならない。 それをクリアして初めて加入が許されるのだ。 この儀式の信頼性の高いことも、 バンディッツの今の体制が維持されていることに繋がっているのだ。



「君を疑ってる訳ではないがこれはバンディッツが結成されてからのルールでね。内部の人間を信頼する意味もあるんだよ。悪いがこの儀式を受けてもらうよ」


「ええ。俺は全然構いませんよ」


レーベンハートに連れてこられたのはある小部屋だった。そこには一人の女性が頭からスッポリとフードを被り椅子に腰掛けていて、目の前の小さなテーブルに水瓶を置いている。まるで占い師のような雰囲気がある。


「彼女は、数少ない本物の魔女の一人フェリシアちゃんだよ」


フェリシアは、小さく会釈をするとまわりに聞こえるか聞こえないか位の小さな声で何やら呪文を唱え始めた。


ーーすると、水瓶の中の水が青く輝き始めた。


「この水瓶の中に血を一滴垂らして下さい」


フェリシアは小さな声で呟いた。

その声に従いアーサーは、右手の親指の先を噛み切り血を一滴水瓶に落とした。


「ーーこの水は、あなたの血の記憶を辿り、何者でどのような人脈と出会い、何をして来たのかを映し出す鏡となるのです」


水瓶の中の水は一層輝きを増す。

すると、水瓶の水に映像がまるでフィルムのように次々と流れるように映し出された。


それはアーサーの過去の記憶を辿るように。


フェリシアはゆっくりと目を開き、全てを悟ったかのような表情を浮かべた。


「アーサーさんの過去の記憶を見させていただきました・・・」


「ーー結果はどうです?」

レーベンハートは笑みを浮かべながら問いかけた。


「ええ、気になる点はあるものの問題ありませんわ」


(・・・気になる点?)


「ひとまず安心ですね、アーサー君」


「はい」


「ーー次はそちらの三人の精霊さん達お願いしますわ」


「えっ? 精霊たちもですか・・・」


「もちろんですわ。契約している以上全てを調べておかなければならないのです」


フェリシアに言われるがまま、三人の精霊は順番に加入の儀式を行ったーー




「ーー特に問題もなくて良かった」

レーベンハートは僕らに顔を向け笑みを浮かべた。


「あの儀式で引っかかる人なんているんですか?」


リサがレーベンハートの顔の前にひらひらと飛んで行って質問した。


「ああ、過去沢山の人がスパイとして潜入しようとして全てフェリシアちゃんが見破ったよ。彼女の前では全てが明らかになってしまうんでね。嘘をつけないよ」

レーベンハートは頬を描きながら苦笑いを浮かべた。


アーサー達は再び広間に戻るとバッツの他にもう一人見知らぬ人物がいた。


「おう! その様子だと無事儀式は済んだみたいだな」


バッツは白い歯を見せた。


「ええ、おかげさまでーー」


アーサーがもう一人の男に視線を送っていると、


「ああそうだった。こいつはレオン、バンディッツの仲間だ」


「レオンです、宜しく。本当に三人の可愛らしい精霊をお連れなんですね」


「可愛いだって」


リサは顔を赤くして照れている。


「チビ助も一応儀式大丈夫だったみたいだな」


ニシシと白い歯を精霊達に見せる。


「べーっだ!」


リサは顔を膨らませ舌を出した。

それを見たバッツは腹を抱えて笑っていた。


「アーサー様、私あの人大嫌い!」


リサは、プンプンと終始ご機嫌斜めだった。


「レオン来たか」


「遅くなりました、レーベンハートさん」


「ーー帝国の動きはどうだ?」


「はい。 和平協定を理由に各国に通達したそうです」


「和平協定・・・」


「はい、内容はこうです。世界の国々は平等と和平を理由に国同士の争いは避け、お互い助け合い、帝国も各国に支援という形で護衛部隊を配置するというものです。

魔物や反乱軍の阻止が目的というが実は各国の監視が目的ではないかと囁かれています」


「これに従わなければ?」


「武力行使に出るそうです。例の神の鉄槌(グリモワール)を使ってーー」


「帝国のやりたい放題だね。君の国はどうするの?」


「ーーソフィアは多分、拒否すると思ってます」


「心配だね。 誰かに潜入させて置いた方が良さそうだね」


「僕もまだ戻る訳にはいかないのでこれからの話もあるのでーー」


レーベンハートは、しばらく腕を組みその場で立ち尽くし何事か考えていると、


「アーサー君、申し訳ないが頼まれてくれるかい?」


「はい? 俺に出来ることならーー」







銀髪のツンツン頭が悪戯っぽい笑みを浮かべてレーベンハートに近寄る。


「またまたどうして新人も新人、昨日の今日加入したアーサー君にそんな大役を任せたのさ?」


レーベンハートは表情を変えず、

「ーー俺を信頼させてほしい。こいつの為なら協力したいと思わせてほしい。そしていずれ彼が我々の先頭に立ってくれる存在になる。その時付いていきたいと思える存在であるか見極めたい」


「ふーん。 俺ん時とだいぶ待遇が違うっスね」


バッツは耳を指で描きながら意地悪そうにレーベンハートに言う。


「はははは、お前はそう言うタイプじゃないだろ?」


レーベンハートはバッツの頭に手を載せツンツン頭をくしゃくしゃにして撫でた。


「ふん」


バッツは、レーベンハートの人を見た目や人種、国などで差別しないところやどんな人間に対しても平等に接してくれる心の広さを信頼していた。





俺と三人の精霊は一路、山間の小さな国へと向かった。




ーーカタリナ王国に潜伏してほしいーー

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