いったいなにが悪いのか?
塔。
そこは魔王の素質を持つ者が、自らの秘めたる絶大な魔力を磨き上げ、さらなる高みに登るために作られた、地獄の特訓場である。
俺ほどのレベルになると、しかけられたトラップどもも恐れをなして攻撃を仕掛けて来ない。
俺はそそくさと、最上階にある魔王覇者専用ルームに入った。
「フゥ。上物サキュバスの性的歓待は惜しいが、世には聖なる戦いが控えておるのでな……」
と言うか、なんで核兵器とかあるのか。
人間やiPadが異世界からやってくるような世界なんだから、現代兵器がおっこってきても不思議はないが……。
「ああ言う頭がパープーな連中が魔法で召喚して束にまとめて使用するとか、悪夢以外のなにものでもないわッ! しかも日本の国旗がついてたぞ? 今の日本がどうなってるのか、ちょっと心配だぞ⁈ それから誰だよサッチーって! 身に覚えがまったくないわッ!」
俺は窓を開けて、その向こうに見える雄大な山脈に向かって魔王立ちをする。
「フッフッフッ。だがさすが魔王覇者たる我。核種の半減期を早め、瞬間無害化に成功したぞ……フワハーッハッハッ! 宇宙の法則すらこの魔王覇者には恐れをなすわ! だがしかし!」
俺はiPadのホームボタンを押す。
「そのような絶大なる魔王覇者の力を持ってしてもPV数が上がらぬ……」
PV数、それは自分の書いた小説を読んでくれた人の数である。
その数は、8。
前回までの0よりは増えたが、俺の小説はたったの8人しか読んでない!
20本も投稿したのに!
「しかもオススメの★はおろか、応援の♡が、1つもつかぬわ……。なんだ! なにが悪い! 俺が魔王覇者であることがバレたのか! 日本が核兵器なぞを持つようになったのはそのためだと言うか!」
……逆に魔王覇者であることを積極的にバラしていく方向性で書いてみたら底辺を脱出できるのではないか。
そうも思うのだが、それでは私小説かエッセイだ。
「フッ。だが世は魔王覇者。退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ! 配下の者の前で片膝をつくなどと言う芝居までしてみせたのだから、今回もまた建設的に対処せねばな……。すぐに原因をつきとめ、10000PVの大台に乗ってくれようぞ。ハーッハッハッ! 魔王覇者に敗北はない!」