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09.中秋の名月



 満円の月を仰ぎ見ながら、ふと君を思い出す。


「月は綺麗だけど、怖い」


 前にそう言っていた君は、今も怯えているんだろうか。

 一年で一番綺麗な満月を見ようと、こうして空を仰ぐ人が多い中。

 なんでもないふりが上手な君は、不安を隠しながら笑顔を浮かべているんだろうか。


 君が無理をしていないか心配になって。

 僕は携帯電話を開く。

 すぐに駆けつけられる距離ではないけど、声なら届けられるから。


「あ、もしもし?」






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