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46.大好き
自分の名前が名前だから、『大好き』って言葉に反応してしまう。
『大好き』は、幼なじみの実花の口癖のようなもの。
彼女が、チョコクッキーを、カスタードプリンを、いちごタルトを、大好きと言うたび。
僕の心臓は悲鳴を上げる。
ちゃんと、わかってる。
僕に対しての言葉じゃないって。
それでも、反応しちゃうものは仕方がない。
「でもね、大くんが一番、大好き」
心臓が止まるような感覚が、した。
息の仕方を忘れるくらい、それは衝撃的だった。
「……僕が?」
「うん、大くんが一番だよ」
震える声で確認すると、実花は笑顔でそう言った。
嘘じゃないんだって、長い付き合いだからわかる。
もちろん、深い意味も込められてはいないんだろうけど。
それでも、ゆるむ頬を抑えられない。
「大好きだよ、大くん」
告白のような甘い言葉に、僕は自分の名前が好きになる。