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40.透明な
君の心は無色透明。
色も形もない、つかめないモノ。
子どもが透明なビー玉に瞳を輝かせるように。
大人が花の香りをはらむ風に心癒されるように。
誰もが生きるために水を、酸素を、必要とするように。
自分一人のものにならないとわかっていても、惹かれずにはいられない。
「あ~、しんど……」
目を閉じてもまぶたの裏に浮かぶのは君。
呼吸するのと同じように、当たり前に君を想ってる。
君は俺のことなんて、名前すら覚えているか怪しいのに。
胸に質量を持って存在する想いは重くて、いつか息ができなくなりそうだ。
この想いもいつか透明になってくれないだろうか。
そうすれば誰にも見られず、気遣われず、君を好きじゃないふりができるのに。
けどもう、きっと手遅れ。