34.きらきらの雨
「あーめあーめ降ーれ降ーれ♪」
君は楽しそうに傘を振り回す。
人通りが極端に少ない、いつもの帰り道。通行人を気にする必要はない。
「濡れるよ」
無駄だと知りつつ、僕は一応注意した。
はしゃぎすぎて、雨ですべりやすくなってる道路で転んだら危ない。
もしそうなっても寸前で助けられる自信はあるけれど。
「濡れたいからいいの!」
案の定、君はむしろ積極的に雨に飛び込んでいく。
買ったばかりと言っていたカーディガンが水を含んで、重そうだ。
風邪を引かないか心配になるけれど、言っても聞かないのはわかりきっている。
念のため、帰ったらすぐに風呂に入れるよう、おばさんにメールで伝えてはあった。
マイペースな君のために僕ができるのは、その程度。
「雨、きらきらしててきれいだね!」
傘や上着にはじかれた雨粒が、輝いているように見えるらしい。
そろそろ雨がやむのか、雲が減って薄日が出てきているから余計なのかもしれない。
君のほうがきらきらして見える、なんて言ったら、きっと深く考えないで君は喜ぶんだろう。
自分はそんなキャラじゃないから、雨とたわむれる君をただ見守るだけだ。
「本当に雨が好きだね」
「うん、大好き!」
雲間から顔を覗かせた太陽のような笑顔に、僕も何度でも雨が好きになる。