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03.雨と太陽と傘係
雨は好きだ。
傘を差すのが嫌いな君と、一緒に帰る理由になるから。
「健志が背高くなったら、私びしょぬれだね」
何がおもしろいのか、理香は笑いながらそう言った。
真昼の太陽みたいに明るい声と笑顔。
彼女自身がお日さまだから、雨が嫌いなのかな。そんなことをぼんやり思う。
「理香の傘係が務まらないなら、背なんていらないよ」
成長期にあまり伸びなかった僕は、理香と十センチも違わない。でも、僕はこのままがいい。
彼女がぬれるのも嫌だけど、彼女と帰る理由がなくなることが嫌だった。
そうして今日も、僕は雨に感謝する。