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学校へ行こう

時は宇宙時代2003年。人類はとうの昔に活動域を宇宙へ広げ、銀河の覇者となっていた。

第三銀河の惑星「サージタリア」。

サージタリアで生まれた少年、種屋(たねや)ベイは、とにかく強くなりたかった。理由は分からないが、とにかく強くなるのが夢なのだ。

この物語は、種屋ベイがとりあえず強くなるためにアレコレ奔走する大宇宙物語である!!!



─── ───



俺の名前は種屋ベイ。16歳。

サージタリア星で暮らす普通の高校生だ。

まあ、普通って言っても、すぐ隣の銀河に行けばその普通は通用しなくなる事がある。

例えば、人の形をしている奴が一人もいなかったり、空が太陽で埋め尽くされてたりする。


とにかく、サージタリアの模範的高校生である俺は今トースターでパンを焼いていた。焼き時間は5分だ。

え?こんだけ文明が発展してるのにトースターでパンを焼くのかよだって?

うちの親父はレトロ趣味だからな…。

何でも、二千年前の学生文化がどうたらーっつって、トースターを強要してくるんだよ。


チーン!


兄ぃ(あにぃ)〜。トースターでパン焼くのダルいんだけど」

「うわっ!ってアカリか」



焼けたパンを皿に乗せ、振り向くとすぐ後ろに妹が皿を持って立っていた。

種屋アカリ。俺の可愛い妹だ。


「アカリ。空間転移する時に俺の真後ろに現れるなっていつも言ってるだろ。お兄ちゃんびっくりするぞ」

「だってびっくりする兄ぃ見たいんだもん」


アカリは中学生で俺より頭一つ分小さい。

そんなアカリが、可愛らしい黒のポニーテールを揺らして俺に笑いかけてくるからすぐ許してしまいそうになる。


「にしてもさ。未だにトースターなんて使ってるのうちだけだよ?この前友達に愚痴ったらトースターって何?って言ってたよ!」

「うちの家訓だからな。仕方ねえって」

「お父さんは巫術で焼くじゃん…」


痛い所を突いてくる妹だ。

親父は俺たちにレトロ趣味を強要してくるが当の本人は

「面倒だから」と言う理由でやらない。


「俺は結構気に入ってるけどな。チーン!って音とかさ」

「音なら巫術でも出せるじゃん!こ、ん、な、感じに!」


チーン!


幾何学的な紋章とともに、まるでトースターで焼けたかのようにアカリのパンが一瞬で焼き上がった。しかもバターも塗られている。


「ふっふっふ。どうだい兄ぃ。同時にバターも塗れるようになったのだ」

「すげーなアカリ!いつの間に練習してたんだ!」


アカリがドヤ顔で俺の顔を見上げる。

巫術。巫術とは端的に言えば科学による魔法だ。

『高度に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない』

という論理で、機械精霊の力を借りてまるで魔法にしか見えない科学を実現するのだ。


「えへへ。最近ほぼ毎日練習してたからね」

「お前、さては全くトースター使ってないな?」

「まあまあいいじゃん。一緒に食べよ!」


アカリがリビングの椅子を2人分引いて先に食べ始める。

「アカリの巫術が上達したんだから親父も喜ぶか」

俺も巫術で歩きながらバターを塗り、テーブルに皿を乗せアカリの隣でパンを食べる。うん美味い。

これが種屋家の朝ご飯だ。


「てかさ〜、隣の席の篠崎ちゃん別の星に引っ越すらしいんだよね。兄ぃの友達はそういうのないの?」

「マジで?星の名前は?」

「それが、私ら人間じゃ発音不可能な名前らしくてさ。仮に発音しても死ぬらしいよ」

「物騒な星だな!?」


篠崎ちゃんは何度かアカリと遊びに来た事があるが、体は普通の人間だけど頭が『全部の島が日本の地球儀』で、どこから声が出てるのか気になったけど聞かなかった。

そういった種族はまとめて『異人』と呼ばれる。

人間より人口は少ないが珍しくはない。


「そんな星聞いた事ないでしょ?聞いたら案の定第四銀河の星でさ。私たちもう会えなくなっちゃうのかなって」


アカリが俯く。篠崎ちゃんと仲良いもんな。


「アカリ…大丈夫さ。第四銀河ならちょくちょく家族旅行で行くしまた会えるって」

「でもさあ! 星の名前発音できないんだよ!?じゃあどうコミュニケーションとるの!現地のガイドさん仕事できない人扱いされてクビになっちゃうよ!」


この星は〜…。あ〜、この星は〜……


俺の脳内ガイドさんが星の名前を言えずしどろもどろしている。

確かに、このままだとクビになるかもしれない。


「流石に俺ら人間が呼ぶ用の名前があるんじゃないか?」

「いや、そもそも名前呼んだら死ぬ星は物騒すぎて行きたくない!」

「た、確かに…」


この星は〜…〇〇〇〇です。グホァ!!!


俺の脳内ガイドさんが死んだ。


「篠崎ちゃんって寝言は母国語なんだよね…それでこの前耳近づけてたら母国語に混じって…即死即死即死即死殺意殺意殺意殺意殺意…って言ってたの!やばい!篠崎ちゃんの闇がやばい!」


「ま、まあ気にすんなって。『種屋アカリ殺す』とかだったらやばいけどさ」

「それがさ、『種屋ベイ確実に殺す』って言ってた」

「何で俺!?しかも確実に!?」


俺篠崎ちゃんにそんな憎まれてんの!?

篠崎ちゃん、前会った時は普通にいい子そうだったよな。

も、もしかして地球儀に異常に北海道がデカい日本があったからついガン見してたけど母星だとセクハラだったのか?


「兄ぃの言う通りだね。私が気にしすぎてたかも。今度2人で篠崎ちゃんの母星行こうよ!」

「俺の命がやばくなってきたけどな」


アカリの笑顔は可愛いが俺の命は少し危険かもしれない。

そんな朝ご飯だった。


「「ごちそうさまでした」」


「よし!学校行こうぜ!アカリ!」




─── ───


俺たちの家は超超高度の高層ビル───────

俺とアカリは()()2()0()()k()m()のベランダに立っていた。

俺たちはベランダから飛び降りて学校に通う。

いや、そんな危険な場所に住むなよ。

そう思うだろうが俺たちは生まれつき無意識に落下死防止の巫術を使えるため全く問題ない。


「ひゃっほううううううう!!!」

「兄ぃ〜〜!毎回無事だと分かってるけど今度こそ落下死するんじゃないかなって微妙に不安になる〜!!!!!!」


アカリと手を繋いでビルを落ちていく。

向かいのビルのベランダで本を読む女性が見えた。


俺たちはここから20億km落下し続ける。

空気抵抗によって減速する事はなく、むしろ重力こそが加速し続ける。

正直、速すぎて景色何も見えん。

そして、最終的に光速を遥かに超えた速度に達して地面に叩きつけられた瞬間。

時空が歪む程の重力が炸裂し、ブラックホールが完成したのだ───────



─── ───



気がつけば、目の前には俺とアカリが通う中高一貫校である『グレンディープ校』が広がっていた。


「そして、ブラックホールから脱出した先が俺らの学校なわけだな」

「兄ぃ…いつも言ってるけどさ。この登校方法、本当にどうかと思うよ……」

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