1話「知らない洞窟」
目を覚ますと、そこは地下洞窟みたいな場所だった。
地面に発光の弱まりつつある魔法陣のような幾何学図形が描かれていて、それ以外にはクラスの連中以外に何も無いような場所。
見回して、やはり洞窟だよな?と再認識する。
岩で出来ているらしい凸凹の天井とこの部屋唯一の入口らしい目の前の穴。
地面は不自然なほど綺麗で、まるでヤスリがけしたかのようにピカピカだ。
大理石の床みたい、とゆうのが最初の感想。
横をみれば、どうも混乱しているらしい春夏の姿が。
キョトン顔もやたら可愛いな、とか思いつつ何も分からない様子でひたすらキョロキョロとしている春夏を見ていると僕の心が落ち着いてきている事に気付いた。
人が慌ててたら落ち着くとゆう心理で少し落ち着きを取り戻したらしい、落ち着くと薄暗い洞窟の中で小さく光る青い光が、余計目に春夏を魅力的に写しているように見えて、思わず苦笑してしまう。
「晃、、ここどこだろ、?? さっきまで教室いたよな??」
「おん、それは間違いないと思う。 見た感じクラス全員居るっぽいし、、これは確定かな、??」
「? なんか心当たりでもあんのか??」
「ふっ、これだからラノベを読まない一般陽キャは、、」
僕は聞こえるように鼻を鳴らすと、ニヤける顔を全力で押えながら予想を話す。
いや、少し時期が過ぎてはいるものの、しかしこの展開には覚えがあるし、まず間違いないだろうとゆう確信がある。
「恐らくだが、これはクラス転移とゆうやつだ。 またの名をクラス召喚、、」
「、、よく分からん」
「ま、そりゃそうよな。 早い話がもしかすると僕たちは異世界に召喚されたかもしれないってことだ。どうする? あの穴、潜ってみるか??」
「ええ、それはちょっと、、」
春夏が渋い顔をして首を振る。
まぁ見知らぬ洞窟の横穴を通るのは怖いよな、正直僕も怖いし。
テンション上がって言っては見たものの、本当に行くかと言われれば全力でNOですからね。
この辺小心者だなぁと自分でも思うのだが、しかしそんな性格が心底嫌いでは無いのでいいだろうとも思う。
そんな馬鹿なことを考えていた時、不意に聞こえた音に背筋が凍る。
カツンッカツンッ、っとゆう、ヒールで大理石の上を歩いてるかのような音。
それが、横穴の奥から聞こえた、、気がしたのだ。
確証は無い、気のせいかもしれない、でも何か、ほんの一瞬、聞こえたのだ。
そう思って春夏を見れば、春夏の方も聞こえたらしく横穴の方に怯えた様な視線を向けていた。
僕なんか比じゃないくらいビビりで夏祭りに出ているような小学生向けみたいな低クオリティーお化け屋敷ですら腰抜かすような女だ、この仄暗い洞窟に静かに響くヒールの音なんか正直僕でもチビりそうなくらい怖いのだから、春夏は気絶してないだけ上出来なのかもしれない。
まだ恐怖より混乱が買っているのかもしれないな。
「音、聞こえたよね、晃。 大丈夫、だよね、??」
春夏の問いに、数瞬悩む。
こうゆう展開で、ヒールを履くような女性が現れる展開、正直何回かは見たことある。
ひとつは王道、国の姫様が自ら現れ、現状の説明をしてくれるパターン。
これなら、別にそう心配するようなことでもないだろう。
たいがい王女が腐ってたり王自信が腐ってたり、姫様もよく腐ってはいるが、しかし序盤からそこまでの目に会う作品はあんまりない、ゼロじゃないけど。
もうひとつの可能性は、巨乳高身長マッドサイエンティスト風怪しいお姉さん魔法使い、とゆう場合。
これは、本当に読めない。
放置されて異世界に放り出される場合、なにかの人体実験みたいなのに付き合わされてクラス全員殺し合いみたいなことをさせられる場合、まあ色々思いつく。
この洞窟の感じから言って前者の可能性が低そうだな、、などと思っていたら、靴音の正体は割とあっさり判明した。
横穴から、優雅に現れたその女性は、神々しいほどの美しさと、威厳を感じさせ、平伏したくなるほどに凄まじいオーラを感じさせるくせ、そのおっとりとした顔がギャップになるような、そんな女性。
「勇者御一行様、良くぞ呼び掛けに答えてくださいました。 私はここ、ブルムント王国の第二王女を務めています、エリス・エネオノール・ブルムントと申します。 勇者御一行様につきましては、気軽にエリスとお呼びください。 以後お見知り置きを」
登場するやいなや恭しく頭を下げてきた女性は、どうやらマトモなタイプの王女様らしかった。
きっちりとした黒っぽいドレスを着こなし、白銀の髪と薄く赤みを帯びた透明度の高い金色の目をした、触れたら壊れるガラスの靴のような繊細さの女性、それが第二王女エリスさんの、印象だった。
意味わからないくらい綺麗だな、とか思っていたら、彼女は少しの間下げていた頭をあげると、また話し始める。
「皆様を召喚させていただく際、それほど使用頻度のある魔法では無いためどんな誤作動があるか分からず部屋から離れた場所で待機させていただきました。 こちらの事情で不安な気持ちにさせてしまったと思います、本当に申し訳ありません。」
今度は頭を軽く下げて、すぐに元に戻るエリス様。
動作一つ一つが様になっていて、本当に正当な王族なんだろうなとゆうのをまざまざと感じさせられる。
「皆様をお呼びさせていただいたい理由ですが、これから皆様にはこの国の王、国王ラグナホル・エネオノール・ブルムント、私の父とあって頂きます。その際、父の方から正式に説明が行われる手筈となっていますので、心が落ち着いた方は立ち上がっていただけますでしょうか。 全員が立ち上がった段階で、ご案内させていただきますので」
王女様のその言葉に、周りの混乱していた生徒たちも、少しづつ落ち着きを取り戻し始める。
あまりにも現実離れした美しさの女性に威厳たっぷりの言葉をぶつけられて混乱が頂点に達してしまい逆に冷静になってしまったのかもしれない。
春夏にしてもそれは同じで、王女様に見惚れるようにして動かなくなっている。
その後数分、王女様の言葉をようやく噛み砕けたのだろう。
ようやく疎らに数人が立ち上がり始める。
状況を受け入れたのか、何も分からないままなのが怖くなったのか、それに続くように続々と立ち上がるクラスメイト達。
僕もそれに習って立ち上がろうとして、未だに見ほれている春夏の方をトンと叩いてから立ち上がった。
「うえっ!? あっ、、」
一瞬驚いて飛び上がった春夏が最後だった。
全員が立ち上がったのを、もう一度部屋を見回して確認すると、エリス様は一度頷いて軽く頭を下げた。
「ありがとうございます。 それではご案内致しますね」
エリス様は、そう言うとゆっくり、横穴をくぐっていくのだった。
それに慌てたようにクラス全員が着いていくのがどこかおかしくて、僕は心の中で苦笑した。
僕の心が踊っているのを感じる。