プロローグ
「でよっ! 春樹のやつ盛大に振られてやんの! これはもういじってやらな可哀想って話だわな!」
「あいつも冒険したよなぁ、まさか小豆たんにアタックするとは、狙うにしても高嶺すぎるだろ、」
「ほんとほんと、小豆たんも可哀想よな〜 あんなやつに告白されて変に話題になっちゃったりして」
「小豆あんた春樹のバカに告られたってホント!? 」
「えぇ!? もう広まっちゃってる!? まあされましたけどもね!? 付き合うとか無理だし! 私そうゆうの向いてないの知ってるでしょ出水も!?」
「ま、そりゃそうなんだけどね〜 小豆ちゃんは飽き性の遅刻魔様でございますし〜?」
「いやぁ、昨日のアマ先も最高でありましたな、時雨氏」
「それな、太郎丸殿、なぜもっと人気にならないのか不思議でならんですよワシは、」
「そりゃまあ先生ものはマイナー枠でありますからな」
「そうか???」
「、、、ねみぃ」
「な、わかる。 自習時間ってのはこうも自由でいいもんなのかね」
「しらね、真面目すぎんのよ赤津くんは」
「そうでも無いさ。 これ教科書みたいに分厚い同人誌だしな」
「、、、きもっ」
僕の名前は須藤 晃。
この小さな小さな2年3組とゆうグループの最下層をウロチョロしている影の希薄な陰キャ、その1人をやらせてもらっている者だ。
賑やかな教室は、どうやら昨日あった出来事で夢中なグループと我関せずなグループに別れているらしい。
と言っても小豆さんが告られてフッていたとゆう話自体は月に1回ほどある定期イベントみたいなものだし、正直別に物珍しくも感じないのだが。
瀬戸 小豆、見目麗しく聡明で、運動が少し苦手なチミっこい女の子。
高2の癖して幼児体型とまでは行かないまでもそこそこ小さく、順当に凹凸も少ないとゆう、まぁマニア受けのいい女子だ。
ただ活発で誰にでも話しかける明るい性格と相槌上手なところがあるので、マニア云々を抜きにしても魅力的に変わりない。
顔もよく頭もよく性格もいいときては惚れない方が難しいとまで言われる。
まぁ性格がいいとゆうのは、男子全般の誤解でしかないらしいけど。
確かに率先して悪口を言うタイプでもないし、プライベートで付き合いがなければ誤解してもおかしくは無いのだろう。
プライベートで会ったことどころかまともに喋ったこともないが、女子の会話に耳を傍立てればそのくらいのことは分かってしまうのである。
とか何とか思いつつも、しかし僕の意識の八割はそんな色恋の話なぞには向いていなかった。
『アマ先』とかゆう神アニメを前にして、リアルの色恋なんかに目の色を変えるのは失礼もゆうものだろう。
『皆にアマアマの可愛い先生が、僕にだけやたらと厳しい時がある』とゆう少し長めのラノベタイトルみたいなのが着けられたこちらの作品、謎にMetflixの独占配信になっているため知名度こそそこまで無いのだが、しかして原作小説上がりの人間からは絶大な人気を博している。
もしかすると1部の原作勢には作者が引くほど美人の女性らしいとゆうのも効果覿面なのかもしれないが、僕はそんな不純な理由でこの作品が好きな訳では無い。
いつも生徒に笑われるドジっ子の可愛い先生、みんなに愛されるそんな先生が、主人公にだけ時折見せる厳しくも慈しみに満ちた視線と、厳しいセリフの中に所々挟まれる本音の尊さ。
それでしか満たされない体にされてしまった同士が、どうやらこのクラスには数人いるらしい。
この調子でもっと人気になって欲しい反面、変にミーハーなファンが着くのは許せないとゆうこの葛藤を、僕自信がいちばん許せないでいる。
「おい! 聞いてんのか晃! 無視すんな泣くぞ!!」
「おおっ!? あ、春夏か、ビックリさせないでくれよ、、」
急に話しかけられて肩がビクッ!っとしてしまった。
少し恥ずかしいな、顔を上げて不届き者は誰かと確認してみればこの教室で唯一の友達と言える相手、美川 春夏その人でると気付く。
こんな目元まで髪で隠れてるようなボサボサ髪の陰キャと何故つるんでくるのか、心底不思議になるようなハツラツとしていて体育会系の、褐色ボーイッシュ女子、美川 春夏。
栗色の髪に栗色の目、茶色がかった健康的に日焼けした肌と服で隠れた時折チラチラと見える白い肌が1部で絶大に支持されている女。
あと、正直めちゃめちゃ可愛い、可愛さで言えば間違いなく一般人レベルじゃない、そこらのアイドルよりアイドルしてるとは僕評価。
小豆さんとトントン位の人気を誇るところからもわかるとゆうものだ。
この春夏とゆう女がめちゃめちゃモテるのは高校に上がってからの話ではないのだかね。
「おい、おいクソ陰キャ。 そろそろキレようかな? またボーッとしてたよね?してたよね??」
「おお? あぁ、すまんな思考の海に沈んでいた。 それでどうした? 僕に何の用だ?」
「え、用がなきゃ話しかけちゃダメか?」
なんか子犬みたいな顔で目元に涙なんか貯めながら懇願顔をしてきた春夏。
目元と口元がヒクヒクとにやけているのを見る感じ、演技だな、僕には分かる。
なんて狡い戦法を使ってくるんだろうか?
どうやらこいつは少しずつ僕の趣味と弱点、自分の顔面の強さを理解しつつあるらしい。
こんな顔をされて「用がないのに話しかけられると周りのヤツらにそうゆう関係と誤解されてその日のうちにリンチされそうで怖いから正直早急に帰っていただきたい」などとは言えない。
「話しかけちゃダメなんて訳は無いが??」
「あ、だよな! ビックリさせるなよ嫌われてんのかと思ったわ」
「そんな訳は無い」
「お、おう、、」
つい真顔になってしまった。
恋愛感情とかは一旦抜きにしても、これだけ可愛いくさらにオネダリがやたらと上手いボーイッシュ女子だ。
嫌おうとおもってもなかなか嫌いになれるものじゃない。
特に春夏には時々ブルドックみたいな大型犬的可愛さとゆうのも垣間見られ、まあ要するに眼福なのである。
「あぁ、そうそう。晃よぉ? 今週の土曜空いてる?? 」
今週の土曜? まぁ土日に予定なんかある方が珍しいまであるし当然ないのだな、どうしたと言うのだろう。
「まぁもちろん空いてるけど??」
「寂しいやつだな、、」
「あ?喧嘩なら買うぞ??」
「ああ!こめんごめん! つい心の声が!!」
あ、これは喧嘩ですわ。
ナチュラルにボッチいじりしに来てやがる。
もしかするとボッチいじりする為だけに僕に近づいてきたまであるぞこの女??
「土曜がどうしたんじゃい!! 怒るぞ!!」
「そんなピリピリするなってぇ〜 いや普通に飯でも行かんかなと思って」
「、、あぁ、それならそうと言ってくれよ。 飯なぁ? いつものラーメン屋?」
「んー、それでも良いし、冒険してもいいぞ?」
いつものラーメン屋と言えばデカイ道から1本またいだちょっと狭い住宅街にある、ちょっと寂れた感じの店のこと。
シンプルに豚骨が美味くて揚げ物もなかなか美味く、その上なんだかんだ財布に優しいとゆうことで春夏と遊ぶ時には重宝してる店だ。
そして冒険するにしても特に候補も無いため、まあ多分当日になればあそこになるだろうと漠然とそう思う。
「遊ぶなら食って春夏の家か? それともゲーセンかどっか行くか?」
「その辺は当日だろ〜 どうせ成り行きなんだから〜 マリカしよべマリカ」
「おう!やろぜやろぜ! そうと決まれば、、、ん? なんか今日やけに眩し、、」
どうやら春夏的には自分の家が第1希望らしいと理解して参加表明しようとした時、ふと違和感を覚えた。
どうも教室が、眩しい。
天井から照らしてくれているLEDライトは目に優しい黄色めの光なのだが、なんだか今日は教室全体が青っぽく光って見える。
色彩感覚がボケたかな? とおもって春夏を見やると、春夏の方もなんだか困惑している様子。
何事かと教室を見回そうとして、、、
「晃! 何だこの地面! なんか変っ、!!!」
、、、そこで僕の記憶は途切れてしまった。