77・6月24日はお友達優先日
77・6月24日はお友達優先日
最近、お家が賑やかです。
一階の、修二伯父さんと美和さんのお花屋さんの店先では、サボテンの妖精のエスピーナさんとトレンドさんが、ギターを掻き鳴らしながら歌って踊っています。普通の人には見えないけれど、お店いる他のお花の妖精さん達は、一緒に歌ったり踊ったり楽しそう。
「最近、すぐに鼻歌が出ちゃうのよね~」
て、美和さんは今まで以上に楽しそう。
でも、夕方には落ち着いた曲になるから、自然と皆は落ち着いて、お店が終わる頃にはグッスリ眠り始めています。
お花屋さんのお隣は、美世さんと勇一伯父さんの喫茶店です。最近は、山姥のお婆さんがお手伝いしています。ユウさんのお店で身嗜みを整えた頃から、丸まっていた背中も少し伸びた感じ。たまに、悩み相談でお婆さんを訪ねてくるお客さんもいるそうです。それは年齢性別関係なくて
「人生経験は豊かだろうし、色々な人を見ているから、適任じゃない? 悪い人には、密かにお仕置きしているみたいよ」
て、美世さんが。
今までと変わらず落ち着いたお店で、変わったことと言ったら、お店の一番奥の二人席が『相談』専用の席になったことぐらい。
そんなお婆さんのお目付け役で、ワンコの秋君がいつも一緒にいます。お婆さん、最初は嫌がっていたんですけれど、今では秋君が一緒に居るのが当たり前のようです。
そして、少し前からお家にいるイピリアさん。大ヤモリの精霊さんで、今は人間の姿ですけれど、お家の中で一番大きいです。ご近所では、オーストラリアから『ホームステイしているお兄さん』で通っていて、私の学校で臨時の『英語の先生』になりました。精霊さんだから、就労ビザとかの難しいことは、関係ないのかな?
「変な事は、しないでくださいよ」
て、この前、梅吉兄さんがイピリアさんに言っていたから、梅吉兄さんは色々大変みたいです。
冬龍君と夏虎君と私は、賑やかになったお家でも、特に変わった事は無いんですけれど…
もうすぐ一学期の期末テストです。中間テストは、赤点は免れたんですけれど、全体的にちょっと反省する点数だったから期末テストは挽回しないと! と気持ちを引き締めて、最近は授業に集中! 帰宅後はお勉強! と、頑張っていました。分からないところは、冬龍君か夏虎君に教えてもらったり… ともかく、お勉強あるのみ!!
そんな感じの最近でしたけれど…
「和桜ちゃん、16才おめでとう〜」
「一日早いけれど、おめでとう」
週中、水曜日の6月24日の朝。冬龍君と夏虎君と一緒に登校して、昇降口に入った瞬間でした。
昇降口のドアの影から、楓ちゃんと奈緒美ちゃんが飛び出して来て、私をギュッと抱きしめてくれました。
「楓ちゃん、奈緒美ちゃん、おはよう~。ありがとう!!」
「白川兄、今日は私達が優先だからね」
楓ちゃんは私を抱きしめてくれたまま、後ろにいる冬龍君に言いました。
「今日、一日だけ。一日だけだよ、オニイチャン」
冬龍君の隣にいる夏虎君は、ニマニマ笑いながら冬龍君の肩をポンポンと叩きます。
中学時代から、6月24日はお友達との時間を優先するお約束なんです。お誕生日当日は、「僕だけがお祝いしたいのに」って、中学1年生時にいじけちゃったから。
そして、『お誕生日のランチ』は、皆で美味しい物を作ってお祝いしてくれます。私だけじゃなくって、仲の良いお友達たちのお誕生日も、です。これが、プレゼント。
だから、今日のランチは皆の手作り料理で『女子会』! 今からワクワクしています。なので、今日と明日のお勉強は、少しだけ息抜き日です。26日から、また気合い入れて頑張るんです!
「白川さん… あの、これ…」
それと、今日一日は、廊下に出る度に知らない生徒に呼び止められます。
今、目の前にいる男子生徒さんは、全然知らない方なんですけれど、ピンクのリボンでラッピングされた袋を差し出しています。
「明日、お誕生日だって聞いて、今日がチャンスだって教えてもらって…」
今日一日、冬龍君が傍に居ないので、全く知らない方からもプレゼントが差し出されるんですけれど…
「せっかく用意してくれたのに、ごめんなさい。プレゼントは貰わない様にしているんです。お気持ちだけ、頂きます」
せっかく用意してくれたプレゼントなんですけれど、学校内では絶対にプレゼントは受け取らないようにしています。この人からは受け取って、この人からは受け取らない… なんて事は失礼だし、何より冬龍君の機嫌が悪くなるんですよね。
「やっぱり、ダメかぁ~」
「ちょっちょっちょっ、手紙だけ!メッセージカードだけならいいだろ?」
お断りすると、ガックリと肩を落とす生徒さん。そんな生徒さんを押しのけて、カードを差し出してくる人がいました。
「ほら、お前もあるんだろ」
その人は、自分で押しのけた生徒さんを肘で押しながら、「出せ出せ」と促します。すると、促された生徒さんは、慌ててプレゼントのリボンを解いて、中から小さなメッセージカードを出してくれました。
「な、カードだけ」
カードだけは、毎年受け取っています。
「ありがとうございます」
二人のカードを受け取ってペコっと頭を下げると、楓ちゃんと奈緒美ちゃんに両脇を掴まれました。
「さ、白川兄に見つからないうちに、教室に戻るわよ」
そのまま、教室に連行されるのです。
こんな感じに、ここ数年の私の6月24日は過ぎていきます。




