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第1章 劣等感を抱く兄は妹の婚約者に決闘を申し込みます。(加筆修正済)

ガランスの兄、バティスタの話です。

彼の騎士としての矜持と、ガランスの兄としてキャルの元を訪れます。


※文章を修正しております。

バティスタがキャルを好敵手ライバルとして意識したのは、王都にある騎士団に入ってすぐの頃だった。


幼い頃は所領で過ごしていたバティスタは、騎士である父を目標にして剣術に励んでおり、他の少年たちよりもその才能は抜き出ていた。


バティスタは、天賦の才の持ち主であった。


王都にある騎士団に入るまでは、所領の中では向かう所敵なしであったのだ。


一方で、一つ年下の妹のガランスが王都で生まれたため、父が年に何度か王都から所領へ出向する時にしか、彼女と会うことができなかった。


彼の父は、王都の騎士団に所属しており、三か月に一度は所領にある騎士団の屯所に出向することを繰り返しており、バティスタはそのたびに同行するガランスを可愛がった。


この頃には、バティスタも父の所属する騎士団に所属し、所領にある屯所に勤めていた。


ある日、ガランスから初めてキャルの名前を聞いた。


「兄上と同じ年の方が、騎士団に入られました」


その話を聞いたバティスタが、何か胸の中でしこりを感じた。


それが嫉妬であると知るのは、後の事である。


ガランスが所領に戻るたびに、キャルの話をしたのも原因だった。


そのため、否応なしにキャルの名が胸に刻まれた。


そして、父の推薦で王都の騎士団に所属することになると、キャルと言う人物がどのような者か会いたくなった。


しかし、騎士団に入ると初めて挫折を味わうことになる。


その存在こそが、キャルであった。


その頃のキャルは、すでに騎士団長であるアチソンの覚えがめでたく、辺境の地や他の都市で騎士見習いとして活躍していた。


その腕は王都に響き渡るほどであったが、バティスタは自分も負けてはいないと信じて疑わなかった。




しかし、現実は違っていた。


バティスタはキャルに負けたのだ。


それもキャルの圧倒的な力の前に。


バティスタは、そこで初めて自分よりも天賦の才を持つ者がいることを知った。


その後のバティスタは悔しさを糧として、さらなる飛躍を求めて剣術を磨いた。


バティスタの剣術の腕は躍進した。


キャル以外の同年代の騎士たちより、その強さは飛び出たものになった。


だが、キャルにはどうしても勝てなかった。


何度も何度も戦うが、そのたびにキャルは自分よりも前を歩んでいた。


「また腕を上げたな。お前と剣を合わせるのが本当に楽しいよ」


戦いを終えたキャルが笑顔を見せるたびに、バティスタは胸が苦しくなっていた。


・・・なぜ、あいつに勝てないんだ・・・。


負け込むたびに、バティスタの心が嫉妬で歪んでいった。


妹であるガランスとの仲も微妙なものになっていた。


妹がキャルに好意を抱いていることを知ったからである。


表面上は妹の恋を応援したいのだが、キャルに勝てない自分がどうしても納得できないでいた。


その苦しみの中で、バティスタはセシリアの警護につくことになった。


交代制ではあったが、セシリアの近くにいることが多くなった。


ある日、セシリアがバティスタに声をかけた。


「あなたはキャルが嫌いなの?」


セシリアに尋ねられたバティスタは言葉を詰まらせた。


それまでは、キャルに負けているとはいえ、彼を嫌いだとは思っていなかった。


しかし、セシリアの下問は彼の心に影を落とした。


・・・俺はキャルが嫌いなのか・・・。


苦悶するバティスタの姿を見て、セシリアは満足していた。


セシリアは、バティスタの心の闇を見抜いていた。


「私なら、あなたを救うことはできるでしょう」


バティスタにキャルに劣等感を抱いていると思わせることなど、セシリアには簡単なことであった。


バティスタはその日以来、キャルを憎むようになった。


彼はセシリアに言われるままに、メイソンのように人手を使ってキャルの悪い噂を流した。


騎士団が行う剣術の鍛錬でさえ、無視してまでキャルを傷つけようとした。


だが、妹であるガランスを傷つけているとは考えもしなかった。


それはキャルとセシリアとの婚約破棄後、ガランスが兄であるバティスタがキャルの悪い噂を流していることを知り、騎士団の本部に乗り込んだ時に知った。


ガランスの追及は、バティスタの[劣等感をより刺激して/自尊心をより蝕んで]いった。


それが怒りに変わった時、バティスタはガランスを叩いていた。


そのため、両親や騎士団長に注意を受けるはめになった。


・・・自分は何をしているのか。


バティスタは、自分がセシリアに踊らされているとは思っていない。


相変わらず、キャルへの劣等感が自分を苦しめているのだと思っていた。


・・・どうしてこうなったのだ。


キャルとガランスが婚約をした時、バティスタは自分が間違っていたのだと知った。


・・・自分はキャルを嫌っていたのか?


・・・いや、違う。


・・・俺はキャルを超えたかっただけだった。


それが今では、妹であるガランスを傷つけ嫌われてしまった。


その原因が自分であり、その導火線がセシリアだとバティスタは気付いたが、もはや後の祭りであった。


だが、騎士としての矜持はバティスタには残っていた。


そして、彼はある決意を胸にしてキャルに会いに行った。



その日、バティスタはバーニー家を訪れた。


バティスタは騎士の正装姿でいた。


「キャルに会いたいと伝えてほしい」


ただならぬ雰囲気であるバティスタの突然の訪問に、バーニー家の家宰はすぐにキャルに報告した。


・・・急にどうしたんだろうか。


キャルは不思議に思いながらも、バティスタを応接間へ通した。


「今日はどうしたんだい?」


キャルはバティスタに聞く。


「もしかして、ガランスとの婚姻に関して話があるのか?」


もし、そうだとしたらキャルはバティスタに何も言わせるつもりはなかった。


キャルとガランスの婚姻は、誰もが認めるものだった。


それを否定するものは、徹底的に戦うつもりであった。


だが、バティスタの行動はキャルの予想に反したものであった。


バティスタはキャルの前に封書を差し出す。


「これは?」


バティスタは答えない。


やもなく、キャルは封を開けて中を確認する。


その内容に見たキャルはおもわずバティスタを見る。


「これはなんだ・・・」


キャルはそう答えるしかできなかった。


「見ての通りだ。それは俺からお前への決闘の申し込みだ」


バティスタは静かに呟く。


「・・・お前、正気か?」


バティスタの予想もしない行動に、キャルは驚くしかなった。


バティスタはガランスの兄である。


いくら騎士であれ決闘と言われても、バティスタに怪我をさせればガランスが傷つくのは目に見えていた。


キャルもバティスタの実力は理解していた。


「ああ。俺は本気だ」


バティスタはキャルを見つめる。


そこには憎悪など垣間見えない。


「俺はお前が妹の伴侶たるかどうかを知りたい」


そう言うと、バティスタは立ち上がった。


「セシリア様と関係ない。俺とお前だけの決闘だ」


バティスタは、騎士として兄としてキャルと向き合うことにしたのだ。


これがバティスタの矜持であった。


バティスタの気持ちを知ったキャルは、迷うことなく返答する。


「わかった。お受けしよう」


キャルは頷いた。


目の前には、騎士としての誇りを取り戻した一人の男がいるのだ。


「決闘の方法は?」


キャルはバティスタに尋ねると、バティスタは澱みなく答えた。



「決闘の方法は馬上槍試合で願おう」

次回はキャルとバティスタの決闘の回です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「決闘の方法は?」キャルはバティスタに尋ねる。 「決闘の方法は馬上槍試合で願おう」 決闘の方法は、申し込まれた方が提示するのじゃなかった?そうでないと、申し込む方が有利な条件で申し込めるか…
[良い点] あまり注目されることのない決闘という制度を題材にしているのが真新しいと感じました [気になる点] ・婚約中の帰属に決闘を挑むことが嫌がらせor相手を貶めることにつながる理由がわからない。ど…
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