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第1章 恐怖に慄く人々は卑怯な手を使おうとします。(加筆修正済)

今回より<ざまぁ>が始まります。


※文章を修正しております。

キャルとマンブルズたちの決闘は呆気なく終わった。


戦う前に、すでに勝負はついていた。


キャルはマンブルズとビクターを二人同時に相手にしたのだが、鍔迫り合いすることもなく二人を一瞬で倒した。


最初に戦ったのは、ビクターだった。


ビクターは覚悟を決めたのか、大声を上げながらキャルに立ち向かった。


だが、剣術を疎かにしていた彼など、キャルの相手ではなかった。


上段から袈裟懸けで振り下ろされる剣を、右横に軽く避ける、


ビクターの剣が地面に突き刺さると同時に、キャルは自らの剣を彼の胸元にぶつけた。


ビクターの体は全肋骨を砕かれながら、いとも簡単に振られた先にある木の壁に吹き飛ばされた。


その勢いは恐ろしいほど苛烈であり、ビクターの体は木の壁を突き破った。


土煙が収まった頃、ビクターの姿を確認すると彼は全身がぼろぼろの状態で気を失っていた。


肋骨の欠片が刺さったのだろう、口からは血が流れていた。


マンブルズはその光景に度を失った。


・・・こんなの弱い者苛めじゃないか!!


マンブルズ自身がキャルを誹謗中傷していたと言うのに、彼はそのことさえ忘れ激昂した。


だが、キャルにはマンブルズの感情など要らぬものであった。


「行くぞ」


キャルはマンブルズの方に歩み出すと、そのまま下段から剣を上に振り上げた。


マンブルズはすぐに反応するが、キャルの剣圧は彼の想像を遥かに超えていた。


マンブルズの剣が宙に舞うと同時に、キャルは彼の左肩目掛けて剣を振り下ろした。


轟音と共に、マンブルズの左肩の骨が砕け、そのまま彼の体がビクターと同じように木の壁に向かって吹き飛んだ。


顔から木の壁にぶつかったマンブルズは、鼻や頬の骨を折られながら地面を滑ると奥の所で止まった。


マンブルズは完全に意識を失っていた。


その様子を確認したアークライトが高々と宣言した、



「勝者、キャルライン・バーニー」



こうして、キャルの最初の<決闘の儀>は終わった。



その後、マンブルズとビクターは瀕死の状態で病院に運ばれた。


二人は、全身打撲で騎士として再起不能だと医師から診断を受けた。


それほどまでに、キャルは手加減することもなく二人を叩きのめした。


のちに、マンブルズとビクターの家族がキャルを訴えようとしたが、アークライトが立ち会ったこともあり、逆に自分たちの息子が行ったキャルへの無礼を咎められることになり、結果として彼らは引き下がるしかなかった。


決闘の様子を見ていた人々は、その日のうちにその様子を市井の人々に伝えた。


翌日の昼になると、昨日の決闘の様子を知った者たちの中で、キャルに怯え出す者たちが現れた。


それは、キャルがセシリアと婚約をしている時に、決闘を受けるはずがないとわかった上でわざと決闘を申し込んだ者たちだった。


その者たちは貴族階級や騎士階級の者たちばかりである。


揚げ足取りが好きな貴族階級や、金持ちと灰吹きは溜まるほど汚い資産家階級の子息たちは、それしか能がない連中ばかりである。


彼らはキャルに嫉妬していた。


セシリアと婚約したことが許せなかった。


だからこそ、キャルに卑劣な行為を行っていた。


それが今になって、まさかキャルが決闘を受けるとは思いもしなかった。


キャルは騎士団の中で、最強を極めた一人だと言われている。


その実力は、最初に決闘を受けたマンブルズとビクターの様子を見ても明らかであった。


しかも、決闘の様子を聞くとキャルは躊躇うことなく、二人を再起不能にしたという。


・・・今度は自分かもしれない!!


彼らはすぐに自分たちの両親に、キャルとの経緯を話した。


彼らの両親たちはその話を聞くと、当然の如く息子たちに激昂した。


まさか、皇女たるセシリアの婚約者たるキャルに誹謗中傷など卑劣な行為をしていたとは思わなかった。


そればかりか、婚約者たるキャルに対して後先考えずに、決闘を申し込んでいたとは。


彼らの両親たちは、すぐにバーニー家へ向かった。


そして、キャルに謝罪をすると共に、多額の慰謝料を用意した。


しかし、キャルの両親は彼らに対して返答を保留した。


すでに、二人は息子であるキャルから、すぐに返答しないよう言われていたからだった。


キャルは、それほどまでに態度を硬化させていたのだ。


そのことに気付いた親たちは、より自分たちの息子たちに激怒した。


このような状況が三日ほど続いた頃だった。


心が歪んだ者たちが、自然と現れるのは当然のことだった。


その者たちは、キャルを暗殺しようと密かに集まった。


その中の筆頭が、騎士階級に所属するマシーナ家のエットレーだった。


彼は熱心なセシリアを崇拝する信者のような存在で、キャルを見下していた一人だった。


「すでに親父からは、闇ギルドの暗殺者を用意してもらった」


「人数はどれほどだ?」


「13人はいる」


「それなら安心だ」


彼らはキャルの強さを知っているが、彼もさすがに1ダースの人数がいれば倒されるだろうと考えた。


「セシリア様に捨てられた惨めな男をより惨めにしてやろう」


エットレーたちはほくそ笑んだ。



その夜、キャルはエットレーたちに襲われた。


キャルが騎士団の本部から屋敷に戻る時のことだった。


襲撃の様子をエットレーたちは遠くから覗いていたが、彼らはすぐに絶望した。


キャルは苦も無くマシーナ家が雇った暗殺者たちを次々と倒していった。


ある者は脳天を打ち砕かれ、ある者は両手を折られ、ある者は両足を砕かれた。


彼らは命を奪われなかった。


キャルが彼らを捕まえて、その裏に誰がいるのか暴くためであった。


ただし、最後に残った暗殺者のリーダーにだけはより重い制裁を与えるつもりである。


「なんなんだよ!!お前は!!」


キャルのあまりの強さに暗殺者のリーダーが思わず叫んだ。


「黙れ」


キャルは有無を言わさずに、暗殺者のリーダーを斬り捨てた。


声を上げることもできず、暗殺者のリーダーはその場に倒れた。


「さて、雇い主はどこかな」


キャルは気配を感じた場所に目を向けると、ゆっくりとエットレーたちに近づいていく。


エットレーは逃げ出そうとしたが、腰が抜けてしまい動けない。


仲間たちも同様である。


「エットレーか」


キャルの記憶では、セシリアの狂信的な信者と言える人物だった。


キャルの噂を流した一人だと、キャルは知っている。


「お前ら、覚悟はできてるな」


「ひ、ひぃ!!」


その夜、王都に男たちの悲鳴が響き渡った。



「で、エットレーたちは意識不明の重体で入院か・・・因果なもんだな」


アークライトが声を上げて笑う。


それほど、今回の件は痛快なものであった。


「奴との決闘の手間が省けた」


「で、エットレーたちの結末を知った者たちで決闘を申し込んだ奴らのうち、18名が謝罪に来た訳だ」


「ああ。もちろん返答は保留にした」


キャルとしては、彼らにまずは精神的な苦痛を知ってもらおうとの魂胆があった。


「その方がいいだろうな。しかし・・・なんでこんなに数が多いんだ?」


アークライトの言う通り、決闘者の数はそもそもの数が異常だった。


わずか二年のうちに50名近くの決闘の申し込みがあった。


それは誰の目から見ても異常だったのだ。


「誰かが、裏で彼らに手を貸したのだろうな」


キャルも、もちろんそのように考えている。


「そうなると・・・バティスタか?」


アークライトの中では、真っ先に反キャル派の筆頭であるバティスタが浮かんだ。


バティスタなら有り得るだろうと。


「いや、違う」


「そうなると・・・誰だ?」


アークライトが尋ねる。


「おそらく、セシリア様だと思う」


「まさか・・・」


その名を聞き、アークライトが驚く。


「あの方なら、お金を使ってでもやるさ」


キャルはため息をつく。


「どうして、セシリア様はお前にそこまで冷たい態度を取るんだ?」


「わからない。ただ・・・何か心の中にあるんだと思う」


だが、その中はまったくわからない。


キャルは、これまでもずっとセシリアの心のうちを知りたかったが、結局、そこまでは知ることはできなかった。


相手が反応しない限り、何も答えを得ることなどできようはずもない。


「お前の決闘の話は、セシリア様にも届いているだろう?」


「そうだな」


そうなると、セシリアに何か動きがあるかもしれない。


そんな時、キャルの部下が部屋に駆け込んできた。


「キャル様!!」


「うん?どうした?」


キャルは尋ねる。


「ガ、ガランス・ドゥラーノ様が、兄上たるバティスタ様と揉めております!!」


その名を聞いたキャルは、おもわず立ち上がった。


次回はキャルとガランスの回となります。

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