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十年味噌 その実体は 古古古古味噌
今でこそ「何十年味噌」とかありがたがっているが、古古古古味噌だ。たまたま希少価値というだけで、狙って作っている「何十年梅干」とは違う。
「古い味噌」が本当に「味噌」としてうまいかというと、疑問だ。おそらく単体の調味料としては使えないだろう。
古いものはまずい。原則論から言えば当たり前だ。まずいから食べないではない。ほとんどの食料は生では食べない。味付けしない食べ物もあまりない。
人間は、長い歴史の中、まずいものを調理することで食べてきた。それは食物連鎖の弱者であるからだ。人間固体ではエネルギーが自力で調達できない上、狩猟能力にも劣る。だから、他の動物が見向きもしないまずいものを調理によっておいしく食べるようになった。まずいものを作れば、害獣や害虫対策もしなくてすむ。
うまいものを作り始めたら、猪や猿だってやってくる。
まずいものを作って、おいしく食べる。これが、人類の知恵だ。まずいから食えないは、自ら無知を認める愚か者だ。




