何時の間に 大きな現実 小さな虚構
かつては、小さな現実世界と大きな仮想世界に分かれていた。
人々は、現実社会のなかの小さなコミュニティで暮らし、果てしない仮想空間で夢見ていた。
最初の仮想空間は魑魅魍魎が跋扈する夜の帳の中だった。
次の仮想空間は外の世界。山や海の向こう。あるいは宇宙。
若者は仮想空間だった都会に現実として住み始めた。そこは、巨大な空間。人間という生き物は元々小さな巣穴という空間で安らぐ習性がある。
大きな空間は夢を与えるが、不安も与える。小さな空間は窮屈だが、安心がある。
かつては、夢に向かって大きな外へ飛び出し、故郷という小さな田舎に帰ってきた。今は大きな都会で過ごし、疲れたら帰るところがない。そこで、仮想の小さなコミュニティに籠る。
仮想空間は巨大だが、一人が見ている範囲は、現実よりもはるかに小さい。かつて、大学紛争に参加した学生も巨大な社会に絶望した学生が過激な小さなコミュニティに居場所を見つけた。
夜の街は現実とは離れた仮想空間だった。だが、そこにいる魑魅魍魎が現実社会にあふれてきた。かれらは、巨大な現実社会に疲れた者を小さなコミュニティの巣穴に引き込む。そこは、小さくて居心地がいい。いつしか、そこが現実となっていく。
大きな世界は夢を与えるが、小さな世界は安心を与える。
人は不器用だ。せいぜい二つの世界でしか暮らせない。得てして二択思考に陥る。この罠から逃げ出すには三つ目の世界があることを知るしかないだろう。
 




