344/700
五右衛門よ 盗人だって 三分の理
悪意のある人間はどこまでも人を疑う。それが商売なのかもしれないが。
大谷の件でブックメーカの言っていることほど信用できない。
大谷が顧客にいることはステータスである。
窃盗を知りながら、水原に賭けさせていたらそれは共犯である。
だから、ブックメーカとして、水原が窃盗していたとは口が裂けても言わない。
解っていても、それを匂わせる発言を残すわけがない。
水原にとっては、銀行から盗んだのであって大谷から直接盗んだわけではない。直接の詐欺の相手は、銀行や代理人たちである。
これだけのことを疑われること無くできるのは、犯罪の手練れである。つまり、水原の後ろに、手口をアドバイスする人物がいたのだろう。
今ではメディアは水原が稀代の悪党だといっているが、そうは思えない。彼は、大谷を守った。大谷を引き込むことなく一人で悪事を行なった。胴元にしてみれば誤算だったに違いない。彼の狙いは、大谷に弱みを作らせ、巨額の資金を吸い上げるというシナリオだったろう。
水原は大谷を裏切ったが、一方では悪党から守ったことも評価してあげるべきだろう。




