芸術を 逆さに飾る 美術館
美術品と芸術品の違いとは何か。
一般的には、唯一無二の工芸品が芸術品で、自然が作ったあるいは見た目の美しさが秀でているものを美術品と呼んでいることだろう。
そもそも、美術というのは芸術の一表現にしか過ぎない。言ってみれば、美術というのは表現法であって、作品の評価法ではない。
当方が思う違いは、製作者の意図がどの程度伝わるかだ。美術品というのは作品を見て、鑑賞者が自由に感じるものが正解だろう。しかし、芸術品というのは、作者の意図が前面に出ており、鑑賞者に伝わるものでではないだろうか。
芸術家は、素材の生涯の一瞬を引き出し、そこに意思を乗せる。
例えば、美術品の壺は、壺としての機能を持っている。しかし、芸術品の壺は、底が抜けていてもいいのである。焼き物は、器ではなく、火と土が窯の中で激戦を繰り広げた一瞬のさまを映しとったキャンパスなのである。
見る人は、粘土の戦った痕を見て、そこに作者の意思を感じ取る。故に、唯一無二なのであって、唯一無二だから尊いのではない。
逆さまに飾られた展示物をそのままにしておくことは、美術館だから許される行為だろう。




