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新連載はじめます。

当分午前と午後の八時に、一日二回更新予定。

お楽しみいただけたら嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

「ほら、あれ――――」


 いつもの声が聞こえて、千愛はチラリとそちらに視線を向ける。

 ここは大学の構内で、広いキャンパスを彼女は歩いて移動中だ。

 視線の先には若い女学生が二人いて、千愛を見ながらコソコソと話をしていた。


「なによ、全然地味じゃない」

「あれなら私の方が――――」

「どうしてあんな子が?」

「――――身の程知らず」

「釣り合わな――――」


 会話の内容は途切れ途切れにしか聞こえないのだが、なにを言われているのか想像はつく。


(余計なお世話って言葉は知っていても、自分のことだと思わないんだろうな)


 千愛は、心の中で深いため息をついた。足を止めずに、その場から急いで立ち去る。

 自分がなにを言おうとも、彼女たちの態度が変わることなどないのは、わかっていたからだ。


(もう、十年以上同じような目に遭ってきているんだもの。いい加減諦めたわ)


 もう一度、深いため息をついた。


 ――――村上千愛(ちあ)、十九歳の女子大生には、やっかいな幼なじみがいる。

 柴田悠人(はると)、二十歳の某有名大学の学生だ。文武両道、ハリウッドスター並み……いやそれ以上のイケメンで、なおかつ人間性にも優れているという完全無欠の男だったりもする。

 家が隣同士で、母も親友同士。典型的な幼なじみの二人は兄妹も同然で、悠人は千愛をたいへん可愛がっている。

 幼なじみがイケメンなんて羨ましいと、よく言われる千愛だが、過ぎたるは及ばざるがごとし。羨望が嫉妬に変わり、理不尽ないじめを受けることがよくあった。

 先ほどのように陰口を叩かれるだけならまだしも、幼なじみを神聖視する相手から暴力をふるわれそうになったことまであるのだから、質が悪い。

 もちろん、そこまでやる人は少数派だが、数が少なければいいというものでもなかった。


(たしかに仲はいいけれど、私は悠兄(はるにぃ)の恋人じゃないっていうのに、全然こっちの話を聞いてくれないし、迷惑千万だわ!)


 いじめをしない人たちも、巻きこまれるのがいやなのか千愛は遠巻きにされている。

 おかげで彼女は、現在進行形のボッチだった。

 小、中、高校と同じような境遇で過ごして、ようやく幼なじみと別々の大学に進学し環境が変わるかと思ったけれど、やっぱりダメ。

 原因は、悠人が予想以上に有名だったためと、あと彼自身が千愛に過保護すぎたためだった。


(違う大学にまでファンクラブがあるなんて知らなかったわ。それに、いくら家が隣で私の大学が通学途中にあるからって、大学生にもなって送り迎えは、しないわよね)


 もちろん毎日ではない。大学生は授業時間がまちまちで、決まった時間に登下校とかないからだ。

 それでも悠人は、頻繁にスマホで連絡を寄越し、時間が合うときはもちろん、合わないときもできるだけ車で送迎しようとしてくれた。


(自分のせいで私がいじめられたりしたから過保護になっているのよね。断わりたいけど、十八歳になって早々にバイトして運転免許を取って車を買った理由が私を送迎しようと思ったからだ、なんて聞いたら言えないし……悪いのは悠兄じゃないってわかっているって、いつも言っているのに)


 ちなみに、バイトは雑誌のモデルをやったそうだ。あちこち引っ張りだこで、あっという間に必要額を稼いで辞めるときには泣いて惜しまれたのだと、悠人の母から聞いている。プロへのスカウトもあったそうで、ファンクラブが乱立されたのもこの時期だという。


(イケメンって、すごい)


 本当に悠人は、すごい幼なじみだった。

 彼に悪意はまったくない。

 ただ、結果的に千愛を今の苦境に追いこんでいるだけである。


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