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順調(自己申告)な旅路

お待たせしました!

 これまでにない窮地に立たされている。


 重い頭痛で目が覚めると、目の前にはノエルがいるのだ。しかもここはベッドの上。同じ布団で、寝ているんですけど。ノエルに抱きしめられているんですけど。

 頭をフル回転させて記憶を辿るけど、どんなにうんうんと唸っても、私の記憶は宿屋への帰り道のところで途切れている。


「え、なんで。落ち着いて」


 自分に言い聞かせていると、ノエルの瞼が開いてこちらを見る。


「ノエル、あの、これはどういうことなの?」


 ノエルはにっこりと微笑んだ。それはもう、眩いほどの美しい微笑みを見せてくれる。寝起きも美しさを損なわないのが羨ましい。そんなことを考えて現実逃避をしていると、ノエルはそっと私の髪を梳き流す。


「おはよう、レティ。どうと聞かれても、見ての通りだよ。ところで、体は辛くない?」


 そのような、情事の後を彷彿とさせる言葉をかけてくれながら。

 

 またもやお酒で失敗してしまったんじゃないかと、頭の中が真っ白になる。まさか、ノエルと……ノエルと、一線を越えた……、だと?


 ノエルに真相を尋ねたところでのらりくらりと躱されてしまう。おまけにノエルはミカたちに朝食を運ばせて私を膝の上に乗せると、甲斐甲斐しく私の食事の世話を始めるのだった。


   ◇


 こうして私は、朝っぱらから心臓に悪い時間を過ごした。

 同情したミカが教えてくれないとノエルに騙されたままで、ずっと罪悪感に苛まれていたことだろう。

 結局、昨夜は酔っぱらった私が何かしでかさないようにノエルが見張ってくれていただけで、私が心配しているようなことは起こっていなかったらしい。


 ホッと胸を撫でおろしたのも束の間、馬車に乗るためにダヴィッドさんたちとの待ち合わせ場所に行くと、ダヴィッドさんは目が合うなり、ニヤリと口元を歪ませる。


「昨夜はお楽しみでしたね?」


 そう言って私とノエルを交互に見る。ダヴィッドさんは明らかに、酔っぱらってしまった私と、その介抱をしていたノエルとの間に何かあったんだと踏んでいるようだ。思っていても触れないでいて欲しかった。


 するとノエルが隣で穏やかに微笑んで。


「ええ、忘れられない夜でしたよ」

 

 なんて答えている。これ以上誤解を生みだすのは止めて欲しい。頭を抱えていると、オルソンとダルシアクさんから冷たい視線が飛んでくるものだから、いたたまれなくなって馬車の中に逃げ込んだ。


   ◇


 馬車は順調に進み、シーアとの国境を越える。検問には時間がかかった。シーアの警備騎士たちは私たちがノックスから来たと知るや否や表情が険しくなって、あれこれと聞いてきたのよね。ダヴィッドさんが上手く答えてくれたおかげでどうにか許可を貰えたけど、一時は無理かと思って絶望しそうになった。


 無事に走り出した馬車の中で、オルソンに気になっていたことを訊ねる。


「ドルイユさん、王城まではどれくらいかかるのかしら?」

「ん~、普通だとここから三日はかかるよ」

「普通だと?」

「うん、普通に馬車を走らせたらね。だからシーアの魔術師は道に魔術を仕込んですぐに目的地に着くようにしてるよ」


 さすがは魔術師の国シーア。空間転移なんて高度な魔術が当たり前のように使われているらしい。

 魔力至上主義のこの国の人間はノエルのように魔力を感じられる人が多く、魔力が弱いと人権がないと聞く。


 私、シーアの人たちに「弱っちい奴が来たぞ」とか思われてしまわないだろうか。

 急に不安が襲ってきて震えていると、先頭の馬車が突然、目の前から消える。


「え?」


 なにが起こったのかわからず呆然としていると、私たちが乗っている馬車が光に包まれる。馬車はそのまま走り続けて、気づくと光は消えて黒くて大きな城の前で停まっていた。

 

 言われなくてもわかる。きっと目の前にあるこの建物こそが、シーア城――つまり、ルスがいる場所だろう。

 ノックスの王城とは違ってモノトーンの王城は、異国情緒を醸し出している。


「ローランの魔術で移動したよ。ローランはたびたびノックスとシーアを行き来していたから魔術を残していたんだ」


 聳え立つ城に見入っていると、ノエルが説明してくれた。

 魔術を発動させるなら一言教えてくれたらよかったのに、と思う。だって、心の準備ができていないままここまで来てしまったんだもの。


 ついに、魔王のようなルスがいる城に来てしまった。


「こ、これからどうするの? このまま王城の中に入っても大丈夫なのかしら?」


 周りに人影はなく、殺伐とした景色に震えそうになる。

 すると、王城から一匹の黒い獅子が出て来た。獅子は私たちの目の前で立ち止まり、ニヤリと笑う。



「待っていたぞ」


 

 獅子から聞こえてくるのはルスの声だ。


「ついて来い。謁見の間に案内する」


 そう言って、黒い獅子は歩き始める。私たちは馬車から降りて獅子の後に続いた。


 緊張するし震えそうになるけど、ここで引き下がるわけにはいかない。

 オルソンの未来がかかっているし、なにより、ルスの不興を買えばノックスに戦争を仕掛けてくるかもしれないもの。


 最善を尽くそう。



 深呼吸して心を落ち着かせ、謁見の間を目指した。


次話はきっとラスボス戦ですね!

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電子書籍版の完全版1が2025年12月4日配信決定です!
-ミーティアノベルス様告知サイトへの移動はこちらの文字をクリック- 挿絵(By みてみん)
― 新着の感想 ―
[良い点]  ダヴィッドさんありがとうΣd(・∀・´)  ダメージ受けたのレティシアだけだったけど(笑)  ノエルの返しが好きです(*´艸`*) [一言]  黒い獅子はルスの使い魔かな?  新たな…
[良い点] 「昨夜はお楽しみでしたね?」 ぐふぅ…!!(笑) 以前の感想コメント欄で、お見かけしていたコメントがそのまま採用されてる…!事前に知っていてよかった…!楽しい…!(*´꒳`*) 活動報…
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