閑話:ある男の記憶【五】
ついに最終章よりドキドキしながら書いてる章になりました:;(∩´﹏`∩);:
レティシアたちを見守ってあげてください……!
なぜ、どの計画も上手くいかない?
どれだけ裏で手を打ってもリュフィエに邪魔をされ、用意していた計画は全て白紙に戻された。それに加えて、切り札として用意したスヴィエート殿下でさえリュフィエに絆されかけている。
心に隙があるから利用できるとしていたが、その心の隙を感じ取ったリュフィエが干渉してしまった。
邪気がないあの顔を思い出すだけで煩わしくてしかたがない。
ここまで苛立たせるあの小娘をどうにかして絶望に落としてやりたいところだ。
……ああ、ちょうどいいからスヴィエート殿下を使おうか。
スヴィエート殿下は力のある魔術師が王族を務める国、シーアの中でも最たる力を持つ王族の一人。ノックスを掻きまわすにはお誂え向きだと考えていたというのに使えなくなっては困る。
スヴィエート殿下は王室内外からの陰謀に晒されて生きてきたためか並外れた洞察力を持っていて扱い難いが、ローランを味方につければ話は別だ。ローランにとってシーアは祖国でもなく、仮に身を寄せる場所に過ぎない。だからスヴィエート殿下への忠誠心はさほど強くないだろう。
スヴィエート殿下には同情する。
敵国の人間と他国から来た家臣のみを与えられて敵地に潜り込まされたのだから。まるで死んでこいと言っているような命令を下されても従うしかない弱い立場でいるのはさぞや無念だろう。
それでも抗う力と意思がなければ屠られるだけだ。
憎い兄王の餌食になるのは不本意だろうから、そんな殿下を助けるためにも利用させてもらおう。
理性に邪魔されることなく己の力を発揮できる、人ならざる生き物になればいい。そうすればその苦しみからも解放されるはずだ。
「ローラン、シーアの国王から霊薬を預かっていたな?」
「ええ、もしもの時はスヴィエート殿下に飲ませるように命じられています」
シーアの魔術師たちがノックスを含む五カ国で結んだ魔術条約を破って密かに作った霊薬がある。
人を別の姿に変えさせて使い魔にできる禁忌の薬だ。人権に反するその薬は作ること自体禁止されている。
「腹違いとはいえ実の弟にあの薬を飲ませるのか」
「スヴィエート殿下は陛下の次に魔力の強い王子とされているがゆえに謀反を恐れられているのです。そうして爪弾きにされているからこそ敵国に送り込まれた次第です」
「どこの国も王族の愚かさは変わらないな」
「ええ、ですからどうか闇の王がこの世界を変えてください。あなたの為なら心臓を差し出してこの忠誠を誓います」
ローランは仰々しく礼をとるが、夢を操る魔術師の心は読み難い。本心か確かめるために契約を持ち出してみたが、心臓を対価に差し出す条件を書き記しているのにも拘わらず、ローランは躊躇いもなく契約を結んだ。
かねてから口にしていた通り、ローランにとって仕えるべき主人はシーアの国王でもスヴィエート殿下でもなく、僕のようだ。
月の力を持つ者に仕えれば守ってもらえるとでも思っているのだろう。
「それではローラン、手始めにスヴィエート殿下に霊薬を飲ませろ。悪夢でも見せて飲むように差し向けるといい」
「仰せのままに」
影として生きなくてはならない憐れな殿下のために、最高の筋書きを用意して差し上げましょう。
そうして、大好きな光使いと共倒れるんだ。
【噴水広場】
本館の前にあり、生徒たちの憩いの場になっている。
ウンディーネがレティシアを訪ねて来た時に水につかりたくなって噴水広場で靴を脱いでいたところ、偶然通りがかったローランに見つかり、くどくどと注意されていた。
(※この世界の女性は素足を見せるのははしたないとされているのです)
その時のローランの顔は髪の毛の色と同じくらい真っ赤になっていたらしい(居合わせたドナの証言)。




