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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界紀行
93/317

ラプトルの狩り

189ポイントだ!

上がった!


よーし明日も頑張ろう。


みんな有り難う。

また明日!!


 

 ラプトルに囲まれている?

 『バルタ、プーマからトラクターの状況はわかるか?』


 『回りの建物からワラワラ出てきてる』


 『プーマから援護をしてやれ』


 『駄目なの、出来ない』


 『何で?』


 『砲塔を後ろに向けたら……猪が出てくるから』


 『出てきた猪を撃てば良いのでは?』


 『砲を向けると隠れるの』


 砲が危険なモノと認識しているのか?

 『それじゃあ前も後ろも撃てないって事か!』


 「助けに戻るか……』

 殆ど独り言なのだがイナとエノが反応した。


 「無理だと思う』

 「こっちも狙われてるみたい』

 そう答えると同時に二人して銃を撃った。

 

 慌ててバックミラーを確認するのだが夜の闇で何も見えない。

 俺はカンプピストルを取り出して照明弾を打ち上げた。

 光に照らせれたラプトルが群れを成して追いかけて来ているのがミラーに映った。

 アクセルを踏み込めば引き放す事は可能の様だが、ラプトルも相当に速い。

 俺達が駆け付けてもラプトルのその数を増やす事にも成りかねん。

 

 『エレン、アンナ、ネーヴ! 誰かトラクターの所には行けないか?』


 『駄目! こっちも追い掛けられてる』

 『アイツ等速いよー』

 『目一杯で走ってもチョッとしか引き離せない感じ』

 50ccのモンキーの最高速度が55キロ程だった筈……子供達の体重が軽いのを考慮しても60キロが精々だろう。

 奴等の速さは40キロ程か……それ以上か?

 

 俺達はそれよりも速いから逃げるのは可能だが……最高速度が17キロのトラクターでは直ぐに囲まれてしまう。

 『不味いな……バラけるんじゃあ無かったか』

 敵の指令部の前の道に現れたラプトル達を見て、てっきり地下ガレージに隠れて居ただけだと思ってしまったが。

 あのスペースだけならそう大した数には成らないと……それならバラけても対処が出来る筈だと思い込んでしまった。

 時折聞こえてきた何処からかの銃声がそれを裏付けていると決めてかかってしまっていたのだ。

 数が少ないから全滅せずに対処が出来ているのだと。

 それも違ったようだ、何処かに拠点を造ってソコに立て籠りながら近付くラプトルだけを撃っていたのだろう。

 たぶん、仲間の誰かが救出に来てくれる事を期待してだ。

 それは大きな誤算だった。

 

 現状、唯一戻れるとしたら俺達だ。

 後方のラプトルを何とかしてだが、それでも犬耳三姉妹よりは可能性が有る。

 あの子達の装備は突撃銃とファウストパトローネが一丁づつ……後は手榴弾を幾つか持って居るだけの筈。

 装備が貧弱過ぎる。


 もう一度照明弾を打ち上げながらにチラリとミラーを確認した。

 さっきよりも増えている。

 何処かの市民マラソンのスタート直後の様に成っていた。

 だが、それでも前からは襲って来ない。

 単体では恐れの方が強いのかも知れない。

 群れて初めて攻撃的に為る?

 だから皆が後方に集まるのか。

 その恐れの正体は多分この車輌か?

 それとも速さか?

 その両方かも知れない、自分達よりも強いと感じれば群れで狩りをする、そんなタイプの魔物なのだろう。

 その強さの基準に為るモノはやはり自分達の能力?

 速さと大きさか。

 

 二度も照明弾を打ち上げたの見てなのか、冒険者達達が照明魔法弾を打ち上げてくれた様だ。

 昼間の明るさには程遠いが、月明かりよりも少しマシな明かりがダンジョンを覆ってくれている。

 有難い。

 車のヘッドライトだけでは心もとなかったのだ、この車のヘッドライトは旧いせいかやはりそんなに明るくは無い。


 その明かりで必要以上に見える様になってしまったのか。

 「間に合わない』

 背後でエノの泣きが入っている。

 イナはkar98kライフルにクリップを差し込んで居た。

 素早く弾を込めて、また撃ち始める。

 「あの子達は曲がるのが苦手みたいだし、先頭を倒せば避けられずに後ろも転がってくれるから……」

 イナは良く見ている様だ、長女の責任感からか少しだけ冷静に見えた。

 だが、確かにミラーに映るラプトルは良く足を滑らせている。

 奴等の爪とアスファルトの相性が悪いのかも知れない。

 それは詰まる処、奴等は最高速度を維持しながら大きくは曲がれない?


 試しに次の交差点を左に曲がって見た。

 ミラー越しには角から出てくるラプトルが少し引き離して見える。

 そして角から出てきたそれは明らかに団子の状態だ。

 減速をして前後の距離が詰まったのだろう。

 

 此なら引き離せるが……それよりもある程度を纏めて倒せるのかも知れない。

 少し速度を調整して、後ろに集めて次の交差点を左に曲がる。

 その曲がりしなに、左側の建物に手榴弾を投げ付けた。

 壁に当たった手榴弾は跳ね返り、道の横へと転がっていく。

 俺達が交差点を曲がり切って、少しの後に爆発した。


 「どうだ?』

 俺もミラー越しには見ていたが、後ろで銃を構えている二人の方が良く見えるだろうとの確認だ。


 「纏めて吹き飛んでる』

 「結構な数が減った見たい』

 上手くいった様だ。

 

 『今のどうやったの?』

 何処かでネーヴがそれを見ていた様だ。

 『曲がりしなに手榴弾を投げてやっただけだ』

 俺は適当に返事を返したのだが、その後にイナが詳しく捕捉をしてくれて居た。


 そして直ぐに、そこかしこの角で手榴弾が爆発を始めた。

 俺と三姉妹で角を曲がる度に手榴弾を投げ付けるからだ。

 だが、それも直ぐに俺だけに為る。

 三姉妹の手持ちの手榴弾が無くなったのだろう。

 

 チラリと助手席に目をやる。

 俺の方も残り少ない……が、分けてやるしかないと念話を飛ばす。

 『取りに来い、余り多くは無いが渡せる分は有る』


 『大丈夫! 今、ショッピングモールのガレージに居るから』

 『ここにゴロゴロ転がってる』

 『途中で鞄屋も見付けたし、大量だよ』

 

 『でも、停まれば危ないだろう』

 一瞬で追い付かれる筈だ。


 『それも大丈夫、ここに冒険者さん達も居るから』

 『ここで武器を補給しながら、捜索しているらしい』

 『見付けた仲間が何人か集まってるって』


 冒険者達は行動が速いな……もう何人かを救出したのか。

 銃の音を頼りに走れば見付ける事は容易いだろうが、このラプトル達の群れをどう対処したのだろうか?

 単純に数で押したのか?

 何かラプトルの弱点でも知っているのだろうか?

 『一応は聞くが……冒険者達はどうやってトカゲを倒してる?』


 『普通に銃で撃ってる』

 『手榴弾は使ってない見たい』

 『後は戦車で踏み潰してるかな?』


 『戦車?』

 そう言えばまだ2輌が残っていた。

 

 『最初に見付けたって言ってるよ』

 『まあ、音も煩いし大きいから見付けるのは一番簡単だよね』

 『それに、パト達が派手に走り回ってトカゲを引き連れてくれてるから、随分と楽だった見たい……私達もだけど』


 徒歩よりも車輌に惹き付けられて居たのか?。

 いや、逸れでも相当数は居たと思うが……。

 対魔物は冒険者達の方が上手だったのだろう。

 なら、押し付けてやろうかな……と、チラリとミラーを見たが、それをするのには多過ぎる気がする。

 これは恨まれる数だ。

 

 『手榴弾が余っているなら取りに行きたいが……後ろを見るとそれも無理そうだ、何処かわかり安い所に纏めて置いて置けないか?』

 多少は危険だが、停まって拾うしかないだろう。


 『私達が届けてあげるよ』

 『バッグも一杯有るし、手榴弾も余ってる』

 『今何処に居るの?』


 それに答えて地図を確認する。

 ヴィーゼの地図だから適当なのだが、逸れでも位置と方向はわかった。

 目に着くおかしなモノが大きく書かれているのでそれがランドマークに成っているのだ。

 そのおかしなモノとは単純に大きな看板なのだが、ヴィーゼには変な形にしか見えなかったのだろう。

 わかり易くて有難い。

 丁度反対に向かって走っている様だ。

 ショッピングモールは真っ直ぐに後ろだ。

 

 ミラーを確認する。

 流石にUターンは出来そうに無い。

 次の交差点を右に曲がった。

 もう一度曲がれば方向は向く筈だ。

 『そっちの近くに向かう』


 『わかった用意しとく』


 急げよ!

 そう自分に言い聞かせた。

 このままじゃあエル達が危ない。

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