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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界紀行
62/317

釣れた冒険者

136ポイント。

微妙に1ポイントだけ下がっている。

ブックマークが減ったわけじゃあ無いよね?


チョッと不思議。

何でだろう。


 俺達一行は宿屋の一階の食堂に降りて行く。

 そこには、先客の冒険者の五人組が奥のテーブルに座っている。

 俺は初めて見るのだが、やはり剣士がリーダーなのだろうか? フルプレートアーマーを来た男が1人で一番奥だ。

 対して、右側に魔法使いと回復士だろうか? 黒いローブと白いローブの男が二人。

 その向かいには、槍を身体に持たせ掛けた男と弓を背中に担いだ男。

 その五人が、階段を降りて行く俺達を見ている。


 俺は先頭に立ち、冒険者から一番遠い席に座る。

 俺達は人数も多いので2つのテーブルを合わせて長く繋いだ席だ。

 アンは俺の右側にその隣にマンセルが座った。

 子供達は適当……どうせ決めても勝手に動くのだろうから好きに座ってくれと、気にしない。


 注文は荷馬車に乗って居た親子の母親の方が取りに来た。

 さっきは居なかったのだが、時間帯がズレて居た為だろう。

 その為か注文から給事迄がセルフサービスだったが、この時間に為れば給仕が着くようだ。

 俺は、先程の肉をもう一度頼んだ。

 「みんなは好きに注文して良いぞ」

 子供達がその言葉の後に我も我もと口を開く。

 マンセルは酒と肴だけで良いようだ。

 アンも少なく、サラダとパスタ。


 「パスタも有るなら、トマトのパスタも追加で」

 そんな俺を見て、アンが呻く。

 「どんだけ食うんだ……」


 その一言に、鼻の頭をを掻きながら。

 「これは……小道具だ」

 小声で囁く。

 

 ハテナ顔のアン。

 

 その顔を見て、俺もアレ? と、思ってしまう。

 アンは気付いて居ない?

 まあいいと、さっきに吸い残しの葉巻をテーブルに置いた、まだ3分の1程の長さが残っている。

 葉巻とは、そうやって1本を何回にも分けて吸うものなのだ。

 それを見たエルは、灰皿を取って来てくれた。

 「店の中で吸っても大丈夫なのか?」

 一応は確認して、エルに火を貰う。


 席に落ち着いて一服。

 

 アンはソワソワとし始めた。

 「どうやって、奴らに接触するんだ?」

 チラチラと冒険者達を見て。

 「こちらから声でも描けるのか?」


 そんなアンを見ながら大きな溜め息を吐く。

 わかっていない。


 エルが俺の横に椅子を持ってきながら。

 「さっきの煙草も、通りの真ん中で煙草を吸っていたのも……」

 チラリとアンを見て。

 「今、こうして煙草を吸っているのも含めて意味の有る行動なのよ」

 何時もの犬耳三姉妹に話しているのと同じ様に丁寧に。

 エルの中では、四人は同種に為ったようだ。


 それでもわからないと、そんな顔を見せるアン。

 

 「アンは私達にあの人達の監視をお願いしたでしょう? なら……あの人達だって私達を監視していても不思議じゃあ無いでしょう?」

 頷くアン。

 「と言う事は、さっきのパトの行動も見られていたのよ……見せる様にしたのだけどね」

 

 「見せて……どうする?」


 「私達がこの村から動かないのは、パトが怪我で動けないからで……それは勿論、あの人達も知っているでしょうね、だからパトの怪我が治ったって、動けるって煙草を吸って見せて教えたのよ監視しているでしょう人にね」


 「もう、ワシ達は何時でもこの村を出れるって教えてやったんじゃ」

 マンセルも酒を飲みながら。


 「そう、監視対象が動けるか動けないかで、あの人達の行動もその難易度も上がるでしょう? もうただ見ているだけでは見失う可能性だってある……だから次の手を打たせる為に今こうしているの」


 「次の手?」


 「放って置いても、奴等から近付いて来るって事だよ」

 俺も流石に面倒臭く成ってきた。

 「回復祝いか何かで、煙草でも持ってくれば笑うけどな」


 「来るのか?」


 「来るでしょう……この先何処に行くのかの情報を聞きに……聞けなくてもそのヒントを探しに」

 

 「でも、そんな事をしたら、自分達が怪しいって教えるものだろう?」


 「そんなの既にお互いがわかっている事よ……お互いが何をしたいかなんてわかってるの、今はその馬鹿し合よ」


 「じゃあ……ヤッパリあいつ等が……」


 「多分、列車のとは別口だろうけどな……」

 煙草を吸い終えた俺は、運ばれてくる肉にナイフを入れる。

 「やり方が違い過ぎる……列車の時は荒事有りきだったが、奴等は監視だけだ、あわよくば近付いて仕事を楽にしようとはしているが、受けた依頼主が違うのだろうな」


 「そうか……」

 そう呻いて立ち上がろうとするアンの腕を俺とマンセルが掴んだ。


 「締め上げて聞き出そうとしても、逃げられるだけだぞ」

 マンセルがアンに座るように則す。

 「証拠も無いんだから、惚けられればそれで終わりだ」


 「それに狙われているのはアンだけみたいだし、今の見ているだけの方がやり易いでしょう……強引に来られたら面倒臭く為るじゃない」

 エルもアンを諭している。

 「結果的に依頼主がわかればそれで良いのだし」


 「じゃあどうするんだ?」


 「着いて来させるのよ……それだけ」

 

 「途中で一回だけまくがの」

 酒瓶、二本目に入ったマンセル……もうラッパ飲みに変わっている。


 「まくのか?」

 それは俺は考えて居なかった。


 「ドワーフの里には連れて行けん」


 「では……合流の仕方も考えないと駄目か」

 

 「まくのなら、そのままでも……」

 考えて始めた俺にアンが。


 「駄目でしょう……王都から着けて来たんでしょうから、また王都に帰ると着き纏われるだけよ、仕事も有るし家も在るのでしょう? ズッと逃げ隠れ出来ないわよ」

 

 「わかった……任せる」

 そう言うアンの目は泳いでいた。

 わかってはいないようだ。

 ただ考えるのを辞めただけか。


 「ところで、さっきから気になっていたのだが……パトってナンだ?」

 もう良いだろうと、話を変える。


 それにはマンセル俺を指差した。

 「パトローネのパト」


 「何時の間にだ……」


 「ズッと前から子供達はそう呼んで居たぞ」

 

 眉をしかめた俺は、その呼び名はと言おうとした時。

 俺の横に人が立ち声を掛けられた。

 「もう具合は良いのか?」

 少し横柄な態度が見える冒険者のリーダーらしき男だった。


 俺は、その男をジッと見る。


 「どうも俺達の到着が遅れたせいで魔物にヤられたのだろう? 気になっていてな」

 横柄なのは冒険者としての癖なのか?

 一応は謝罪の積もりらしい。


 実際は遅れたのでは無くて、俺達が逃げたのだが。

 その事は荷馬車の運送屋から聞いているとも思ったが……それを合わせてのその感じか?

 「良くはわからんが……怪我はもう大丈夫だ」


 「そうか……」

 懐に手を入れた冒険者は俺の前に葉巻を置いた。

 「見舞いとお詫びだ」


 『葉巻だしてきた』

 エルが念話で驚いている。


 マンセルはアンがおかしな事をしないように見張っていた。

 そのアンは口を開きっぱなしで、俺と冒険者を見ている。

 その間抜け面は無視する事にして。

 「有り難う貰っておくよ……丁度いま切らしていた所なんだ」

 そう言って、肉を切っていたナイフで切り込みを入れて、エルに火を貰う。

 一服。

 「そうだ……冒険者なら知らないかな? この辺りにダンジョンが2つ在るらしいんだが」


 「フム……1つはもう討伐済みだ……もう1つはまだ新しいダンジョンで魔物が居るな」


 「どんな魔物かわかるか?」

 少しにこやかに……演技だが。


 「ジョゼ! 新しい方のダンジョンの情報は有るか?」

 振り向き、自分の仲間に叫んだ冒険者のリーダー。

 それを合図にその仲間が全員で側に寄る。


 「まあ、座りなよ」

 マンセルが隣のテーブルに新しい酒を置いて。

 「奢るから、教えてくれないか?」


 『釣れたね』

 エルがそう念話で飛ばして、席を立つ。

 子供達総出で冒険者達の食事を隣の席に移動させている。

 『もうアンは必要無いよね?』

 これは俺にだろう。


 『そうだな……余計な事を言われたくは無いな』

 

 『ヴィーゼ、イナとエノと一緒にアンを連れ出して』

 頷いたヴィーゼ。

 花音の手を引き。

 「アン、約束の買い物、手伝って」

 そう言って強引に外に連れ出した。 

 もちろん適当な嘘だ。


 「明日の準備のヤツよ、ちゃんと覚えてる?」

 その背中にエルが声を掛けた。

 そしてこれも嘘だった。 


 イナとエノに手を引かれながら、何がなんだかわからなく為ってフラフラとしているアン。

 その二人がそっと耳打ちする。

 「マンセルのおじさんも本当はわかってなかったのよ……絶対そう、適当に話を合わせただけだわ」

 「そうよ、パトさんとエルが変態なのよ……だから気にしないで」

 その二人に小さく頷いて見せたアンが店を出ていった。

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