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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
異世界紀行
54/317

良く有る事

あうー……

117ポイントか。

下がってしまった。


仕方無いのか……暫く退屈な話が続いたから……。


ウーン。

ポイントで一喜一憂はダメなのだろうけど。

なろうでは、面白いの基準がソレしか無いもんね。

シンプルだから、それが良いのかも知れないし。

でも、ポイントを無視して埋もれては……誰も読んでくれなくなるし。

報われないと、ただの作業に成っちゃう。

それは駄目だ。

作業ではなくて創作でないとね……でないと今、読んでくれている人達に失礼だ。


うん、もう少し頑張ろう。

もっと面白いを探してみよう。


みんな。

読んでくれて有り難う。

これからも、宜しくお願いします。


有り難う。


 戦車はドンドンと若い男達に絡まれているアンに近付いていく。

 その男達は今はもう黙ってこちらに顔を向けている。

 それはバルタに聞く間でもなく、戦車の上から見ている俺でもわかる。

 早く通り過ぎろよ、ナンパの続きがしたいんだ……って感じの目か? で、こちらを見て居た。

 アンに逃げられない様に二人で挟んで逃げ道を塞ぎながらにだった。


 だが、アンも警察軍で訓練を受けた筈だ、それくらいは振りほどく事など簡単な筈だろうに、何か別の事を考えているのだろうか?

 

 俺は、その状況に少し違和感を感じた。

 いや、感じた気がした。

 ただ、アレ? ってだけなのだが……。

 それに気付いてふと思う。

 昨日からの事も……うっすらとだが違和感が有ったかも知れないと。

 

 俺はキューポラを出て、動く戦車の上を伝って前に行き、運転席上のハッチを叩いてマンセルを呼んだ。


 「なんです?」

 ハッチから顔を出して。


 「こんな場所でナンパなんて……よく有るのか?」


 「そんな事を聞くためにわざわざここまで?」

 マンセルも少し呆れていたが。

 「フィールドは危険な場所でも有るので、知らない人間でも怪しく無ければ声は掛けますね、それは危険回避でも在ります、万全の対処が出来る状態で相手を確認するんです、そしてこれから先で何か自分にトラブルが有った時の為に顔を覚えて貰う為にでもあります」

 少し考えて。

 「でも、あそこまでの露骨なナンパは珍しいですね……あの二人の男も若そうだからでしょう?」


 確かにアンは美人だ。

 でも……なんだろう?

 なにかが変だ。

 「昨日から……良く有る事が立て続けだな?」


 「なに言ってんですか? 良く有る事だから……良く有るんでしょう?」

 そう言って、だがマンセルも首を傾げる。

 「ワシも何を言っているんだろう?」

 マンセルも違和感を感じ取った様だ。


 だが、その正体は二人共にわからない。

 お互いが顔を見合わせて小さく唸る。


 「例えば、他に良く有る事と言えば何が有る?」

 違和感の正体を探ろうと、ヒントのその手前の手掛かりを探るようにと無理矢理会話を続ける。


 「フィールドですから、魔物に襲われるとか?」


 成る程、それは良く有るだろう。

 俺もマンセルと一緒に為って一度だけ魔物に襲われている。

 

 「野営している夜なんかは危険ですかね」

 マンセルも同じように探りながら。


 「昨晩は何も無かったな?」


 「そりゃあ、そんな事は滅多に……?」

 アレ?


 「滅多に無い事なのに……良く有る事なのか」

 俺も首を傾げる。

 

 その俺の考える事を邪魔するように。

 「私の連れだ」

 アンの声が聞こえてきた。

 「暇も潰れたし、もう行かせて貰うぞ」

 そこをドケとばかりにアクセルを空ぶかしする。


 男二人は、アンを見て俺達を見た。

 「なんだよ……連れが居たのか?」

 そう言って自分達の車に戻って行く。


 良く聞くような台詞を残して。


 「コンニチは」

 通信士席のハッチから顔を覗かせたイナが男達に声を掛けたのだが。

 男達はそれに、もう興味も無くなったとこちらを見もせずに手だけで答えて返した。

 

 そんなイナが俺の目線にも入っている。

 今は、大人で耳無しに化けている様だ。

 若い見知らぬ男に声を掛けるなら、その方が良いと考えたのか?

 余りその効果は無かった様だが。

 それにイナ本人も気付いて戦車の中に戻る。

 

 それに続いて、荷馬車の女性と子供が挨拶をしている。

 その後ろの家の子供達も全員で元気良く。

 だが、それに対して車の男達は適当にしか返さなかった。

  

 そんな男達を見ていた俺はポリポリと頭を掻いた。

 それを見て居たアンは、ん? と、首を捻ってまた一人で先に行ってしまった。

 ウーンと唸る俺とマンセル。


 

 その日の夕方。

 俺達は適当な所で停まって野営の準備を始めた。

 そのまま進んでは、村に到着するのが夜中に成りそうなので、ここで一泊して翌日の昼に村にと考えたのだ。

 その提案は、荷馬車の持ち主がしてきた事なので、仕事としても問題は無いと俺もそれに頷いた。


 子供達は二日目の野営と有ってか、積極的に大人達のお手伝いをしている。

 昨日もそうだったが、野営自体の準備は荷馬車の持ち主の男とその仲間が進めていた。

 聞けば元々は冒険者で、今は脱冒険でこの運送業を始めたのだそうだ。

 成る程、手際が良いわけだと納得をしてしまう。

 

 アンは流石に、もう不貞腐れるのは辞めたようで、村のお姉さんの料理の手伝いをしている。

 その手元は危なっかしいものが在るが、ボッチはもう嫌なのだろう。

 上から目線で、手伝ってやる! そう言って輪の中に入ってきたのだ。


 マンセルは一人、戦車のエンジンの調子を見ている。

 元々が本調子では無かったので、俺も心配になり側へ行った。

 「どうだ?」

 戦車の調子の話だったのだが。

 マンセルの返答は。

 「違和感の正体をズッと考えて居たんですけどね……何かが引っ掛かるってだけで、全然ですね」


 「戦車は問題無いのか?」

 一応はもう一度、聞く。


 「王都を出た時と変わり無くに今一ですね」

 その間もエンジンを触り続けて。

 これがマンセルの考えるスタイルなのかも知れないと見て。


 「俺も、サッパリだ……あれから考え続けているのだが、おかしな処がわからない」


 「案外、思い過ごしならいいんですけどね」

 そう言うマンセルに頷きながらに、だがヤッパリ気に掛かる。


 「飯が出来たぞ」

 アンが戦車に近付き、声を掛けてきた。

 手には匙の刺さった、鉄製の深目の皿を二つ持っている。

 「昨日の続きの馬肉だが……今日は煮込んでスープに成ったぞ」

 昨日はまだ死にたてで、バラシたり血抜きをしたりで時間が無かったので、ただ焼いただけだったが、今日は下ごしらえも済んだ状態からの料理でタップリと時間が使えたのだろう。

 味が変わるのは有難い事だ。


 「なかなかに旨そうだな」

 一口すくって食べてみる。

 「うん、旨い」

 

 それに笑顔で返すアン。

 「私も手伝ったのだから当たり前だ」


 「アンは貴族の娘なのに料理も出来るんだな」

 これは完全にお世辞だ。

 さっきの手際はシッカリと見て居たので、普段はやらないのは丸わかりだったのだが。

 気を良くしたアンはその一言でニコニコに為る。


 そして俺も自分の一言で、そう言う言えばと、思い出す。

 「前に花音を拐った盗賊達は、貴族の娘の誘拐を企てて居たようだが、誰を狙ったんだ?」

 その失敗のトバッチリが花音で小次郎だったのだが。


 「あの辺りは田舎だからな、貴族の娘は私だけだった筈だ」


 「つまりはアンを狙ったのか?」

 俺はてっきり花音くらいの子供だと思ってたのだが。


 「そのようだな」

 

 「警察軍の司令官を誘拐しようとは……中々に強気だな」

 いや、あの時の槍の記憶では、簡単な仕事だと理解していた様だった。

 アンの事を知っていたら、そうは思わないだろう。

 盗賊の頭目の前に顔を出したアンにも、別段に反応が見られなかった。

 頭目も含めて知らずに誘拐?

 それは指示を出した者が別に居るという事か?

 それも貴族の娘としてでは無くて、司令官としてのアンを狙ってだろう。

 警察軍に恨み?

 いや、それならそんな回りくどい事をせずに直接襲った方が良いのでは?

 アレだけの装備を用意して、アレだけの手際で……実際に警察軍に喧嘩も売っている。

 そもそもあの列車強盗もアンの誘拐を考えての事だったのかも知れない。

 証拠と成りそうな証人の殺害と、同時にアンの誘拐だ。 


 そう考えると、アンを拐わねば為らない理由が有る筈だが。

 確かアンの家はシャロン家……そこに何かが有るのかも知れない。

 

 その時、突然の叫び声。

 「魔物だ!」

 声は荷馬車の方からだ。


 「魔物?」

 

 「滅多に無い、良く有る事が……起きましたね」

 マンセルが俺の呟きに答える様に囁く。

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