シャールb1、bisの倒しかた
凄いぞ!
42pまで来た。
ほぼ毎日コツコツとだが上がっている。
でも、これから暫くは戦車から離れる話に為る……。
若干に不安だ。
出来るだけはしょらずに書きたいところなのだが。
……。
自分を信じるしかないよね。
そうだ!
面白いのだ!
自己暗示だ!
なので、きっとまだまだ面白くなる……筈。
ありがとう!
みんなの応援が別の形で暗示に掛けてくれる。
それは面白いんだって、確信させてくれる暗示。
明日もがんばる。
もう一度。
応援をありがとう!
葡萄畑の38(t)軽戦車。
棚田の様な土手壁を盾にして、一段高い段に居るシャールb1,bis重戦車の砲の射線を切っている。
その高低差は三メートル程だ。
そして、一段の棚の広さは上も下も五・六メートル程。
壁に沿って走れば撃たれる事もない。
もちろんコチラも撃てないが。
そんな所を敵の戦車は迷わずに上を選択した。
撃たれても大した被害も無いのに、それでも撃たれるのは嫌なのだろう。
散々に撃ち込んでやったが未だに無傷に近い。
だが心理的には追い詰めて要るようだ。
効かないとわかっていても怖いものは怖いのだろう。
だから、同じ高さを選択しなかった。
下にも行けた筈だが、そちらはさっき俺達の戦車に踏まれた事が、やはり恐怖に成ったか?
「奴等、撃てもしないのに速度を緩める気は無いな……この先に目的地でも有るのか?」
マンセルが呟く。
「そこを進むと、広い所に出るよ……段差の高さも少ない感じかな」
花音がマンセルに答えている。
「猪と戦った場所だよ」
俺も補足する。
「あそこは段差は関係無かったな、上も下も縦横無尽に走れ回れる」
わざわざ俺にも聞こえるように呟いたマンセル。
そこまで行けば真っ向勝負にしか為らないぞとでも言いたいのだろう。
それは敵も望んでいるのだろうが……そうはさせない。
「バルタ、ヤツをしたから撃て」
「でも、土手が邪魔して撃てないよ」
照準器から覗けば、その車体の殆どが見えないのだろう。
「土手の土ごと撃ち抜け」
ここの畑の土は水捌けを考えてか柔らかい、細いコチラの3.7cm砲のだと威力は削がれるがそれでも下から斜めに撃てば相手に届くだろう。
そもそも効かないのだから威力は関係無い。
「ヤツの進行方向のその鼻っ面を狙って、有りったけ撃ち込んでやれ」
「わかった」
バルタの返事。
その横に居るイナとエノが俺を見ている。
「通常弾でいい」
残り2発のタングステン弾は今は必要無い。
高威力であっても効かないのなら使う意味もない。
頷いた二人。
次弾の準備を始める。
「撃つよ」
バルタだ。
もう何時でも好きに撃っても構わないのだが、やはり敵の本体じゃあ無い土の壁には撃ちにくいのだろう。
不安が声にも出ていた。
「撃て」
砲撃。
と、同時にボスっと土煙が上がる。
微かに金属と金属の当たる音もしているので、その土手の角を貫通はしている様だ。
「撃ち続けろ」
すぐにまた、砲撃。
リズム良く連続で撃ち込むバルタ。
弾もやはり、確実に当たっている。
敵の戦車が左右に車体を振りだした。
撃たれる恐怖に耐えきれないで居るのだろう。
やはりこの戦車の操縦士は小次郎を騙した元仲間の様だ。
一度でも戦場に出れば撃たれる恐怖は骨にまで染みる。
直接当たらなくても、その音だけでも恐ろしいのだ。
もし当たればと常に想像していた筈だ。
今は当たっても大丈夫だと理解はしていても、戦場で見た仲間の戦車が穴を開けられた瞬間が頭から離れない筈だ。
もしも……当たり処が悪ければ……。
もしかしたら……万に一つの可能性で抜かれるかも……。
ずっとそればかり考えている筈だ。
狭くて、暗くて、五月蝿い戦車の中では五感の半分が役にたたなくなって恐怖ばかりが押し寄せてくる。
だから普通の歩兵は乗りたがら無いし、戦車を見て鉄の棺と揶揄するのだ。
だが、それでもアクセルを緩めないのだからこの操縦士も優秀なのだろう。
でも、今その砲塔内に居る村長はやはり素人だ。
今の今まで一度も外を覗こうとしていない。
シャールb1のハッチは砲塔の後ろに有る、見えない操縦士の代わりに見てやるのも戦車長の仕事だ。
それをしていない。
怖いのだろう、生身をさらせば砲撃で無くても銃で撃たれても怪我だけでは済まない。
実際の戦場では、歩兵部隊の司令官が戦車を見れば即座に狙撃手を用意する。
不用意に覗きに出た戦車長だけを狙うためにだ。
もちろんその司令官は出てこないならそれでも構わないと思っている、それは戦車の視界を奪うのと同じだからだ。
視界さえ奪えば歩兵が戦車に近付く事も容易い。
撃破の方法も考えられる。
大戦中の半ば迄はそうだったのだ。
後半は戦車にも歩兵が随伴するように為る、その目の代わりと近付く敵歩兵の露払いでだ。
だが、それは速度を無くす事も意味するのだが。
ドイツ軍の得意にしていた電撃戦……起動戦闘が出来なく成ったのだが。
しかし、もうその頃はドイツは後退戦しか、していなかったのでそれでも問題は無かったのだけど。
「奴等、こっちに降りて来る積もりだぞ」
マンセルが叫ぶ。
見れば、敵戦車の先が土手から飛び出ている。
三メートル程の高さなら技術さえ有れば降りられるのだ。
「我慢が切れたか?」
戦車の後方、走って来た所が所々にバルタの撃った土手が崩れて居る所も見られるので、落ちると言う恐怖も加わったか?
「バルタ! 履帯を狙え、右側だ」
敵戦車はゆっくりと斜めに、確かめる様に進める。
シャールb1の全長が6.3mで幅が2.5mだから斜めにすれば対角線で7m近くに延ばせる、3mの段差なら倍以上の長さだ。
「次弾はタングステン弾だ」
砲撃。
「履帯って戦車の脚ですよね? クルクル回っている鉄の帯みたいなやつ」
バルタが情けなく。
「何にも為らないですう」
「今はまだ緩んでるからだ、そのうちに車体の重さでパンと張るからソコに撃ち込めば切れるか歪む」
戦車は、それなりの重さの車体を結構な速度を出して不整地を走り抜けるのだ、大概の衝撃は柔らかくいなして反らす事でそれに耐えれるだけの性能を履帯は持っている。
「タングステン弾! 入れたよ」
イナとエノが同時に叫ぶ。
「もう一度撃て」
砲撃。
今度は敵の戦車が前に傾き掛けた丁度その時に右前の誘導輪の真下から当たる。
だが、それでも切れない。
「駄目ですう」
当たったのは見えた、履帯の帯が跳ねて揺れただけだ。
「もう一度だ」
そう俺が叫んだ時、敵の戦車の挙動が変わった。
急に右に向いたのだ。
「履帯は駄目だったが、誘導輪にはダメージが通ったか?」
動きの鈍くなった右側を軸に車体を振ったのだろう。
そのまま、戦車は止まった。
宙ぶらりんのヤジロベエの様な格好でギリギリだ。
「止まった?」
バルタが首を傾げて。
「まだだ、エンジンは生きている」
現にゆっくりと後方に戻ろうともがき始める、その戦車。
「その下の土手を撃て」
砲撃。
ボスっと土のはぜる音。
同時にもがいていた戦車の履帯が土手をくづし初めて、その部分が無くなった。
天秤の支柱を失った戦車は、変に傾いたままに下にズリ落ちて、そのまま横倒しに成った、30トンが落ちた地響きと振動とともに。
倒れた戦車の砲はその自身の重さで地面に落ちる。
もう回転砲塔も動かせないだろう。
そして、このシャールb1は乗り降りのハッチは2つ、1つは砲塔の後ろ、もう1つは右側の側面に有る、つまりは出入りはもう砲塔のハッチしかない。
そこを見張っていれば、逃げる事も出来ない筈だ。
俺達の勝ちだ。
「倒すって……そのまま横倒しかよ」
戦車から首を出したマンセルが呆れたように呻く。
「無力化したんだ、おんなじだろう?」
俺もキューポラから半身を出して答えた。
俺達はヒーローじゃあ無いんだ、生きて帰るサバイバルが何よりも大事なんだ。
どんなに呆気なくても、カッコ悪くてもいい、生きているその結果が最良の答えになる。
そこにバイクが一台やって来た。
見れば、アンが乗っている。
「村長だ、主犯だよ」
戦車を指し、そのアンに告げた。
「それよりも、花音は?」
マンセルが俺に。
あ! っと振り向いたその時。
「私達なら大丈夫」
その花音からすぐに返事が来た。
「アンの所の戦車が助けてくれたの……もうじき私達もそっちに着くよ」
忘れていたわけではない。
無いのだが……。
ホッと胸を撫で下ろした俺は、完全に気が抜けてしまっていた。
子供達も俺達も、もう身の危険はない……それがわかればじゅうぶんだ。
そういえばいつの間にかに、握られた銃もライターもない。
何処からかは俺の意識の方がより多くなっていたのかもしれない。
交ざり込んでその境界もあやふやに成りつつ有るようだが。
首を降りつつ戦車から降りてアンの側に寄る。
元の自分に戻る切っ掛けの様にして、別の事を考えようと話し掛けた。
「渋いね、そのバイク」
アンのバイクは水平対抗2気筒のエンジンが目立つbmw,R75だった。
旧いそれを乗りこなすとは、なかなかやるなと感心していると。
返答の代わりに、無表情に俺の顔を見て。
「逮捕だ」
アンはそう言って、俺の両手首に鉄の手錠を掛けたのだった。
bmw,R75
大戦中のドイツのバイク
4速ミッションなのだが副変速機が着いている。
副変速機のレバーは股がった右足の膝の前辺りに伸びた棒。
ギヤを変える度に片手を離さないといけないので中々に面倒で難しい。
後輪にサスペンションも無いので、車体がそのまま跳ねて余計に難しい事に為る。
別に副変速機は使わなくても良いのだが……格好を着けるなら、それは必須に為る。
中二病装備だね。
映画ではサイドカー付が良く見られるが、その形のR75はサイドカーの方の車輪も駆動させる事が出来る凝った造りに成っていた。
その構造で不整地の走破性能も高い。
副変速機はその重さをカバーするためのもの。




