シャールb1,bisフランス重戦車
またまたポイントが増えている!
ビックリだが
ヤッパリ嬉しい。
うん!
この話は面白いのかもしれない!
少しだが自信が出てきた!
ありがとう!
ポイントをくれた人!
大好き!
そのまま、ゆっくりと移動をする。
マンセルにはエンジンはあまり吹かすなと告げたので歩く速度と変わらない。
だが、それでも音はそれなりに響いている。
敵の戦車の排気音で誤魔化されて、気付かれないだけだ。
「その先の角から左を向けば見える筈」
花音からの指示だ。
ここはもう建物が列なる村の中心部に近い所。
あの雑貨屋が唯一の繁華街の様なものだ。
そこだけが建物が密集していて村の裏側、狭い路地の入り込んだこちら側に段差を付けている。
まるで隠れて銃を撃てる様にだ。
普通に村と考えればおかしな造りに見える。
だが、砦と考えれば遮蔽物が塹壕の様に機能していて、背面の丘の斜面と合わせて立て籠る側に有利になっていた。
それではまるで森に居た盗賊よりもこっちの村の方が本物っぽい。
戦争をしているのだ村を守る為だ、自衛の為だと言われれば納得も出来るのだが。
今の奴等の態度を見れば別の目的にしか見えない。
村人の半分が戦える集団なのだ。
戦車が角に差し掛かった。
「マンセル、一旦停めろ」
そう言って俺は一人で戦車から降りて、角の先を覗いた。
居た。
もう一つ前の十字路……正確にはT字路か? 左右に別れる横の道はそれなりにだが、そこまでの道は狭いその奥はもっと狭かった。
その真っ直ぐ奥の建物と建物の隙間に車体を差し込み尻を半分だけ残して砲撃している。
背後には戦車を盾に銃を撃つ村人達。
あからさまに歩兵だ。
それも訓練を受けた兵士の様だ、相手の情報を探りながらに動いている。
無闇に突撃しないのは、俺達の砲撃で相手の戦力が読みきれて居ないのだろう。
上からの角度の付いた砲撃がまさか戦車からだとは気付いていないようだ。
だが、何時までもそれは続かない。
援軍が何時に成るかはわからないが、今の国防警察軍の戦力は馬車一つ分以下、それも武器はmp-40サブマシンガンだけなのだから。
戦車に戻り。
「マンセル、合図を出したら真っ直ぐに敵に向かって走り、ぶつかりそうに成れば左に曲がって奥の壁に車体を付けろ……そこで一旦停止だ」
次にバルタに。
「砲は後ろに向けておけ、戦車が止まったら目の前に敵の戦車の後ろ半分の左側だけが見えている筈だから、そこに有る格子条に成った場所を狙って撃て」
「撃たれないんですか?」
マンセルだ。
「撃ってきますよね?」
確かに狭い路地を走るんだ、逃げ道は無い。
「大丈夫だ、あの戦車の砲塔は小さくて一人しか入れない……それは砲手も装填手もついでに指揮官も一人でこなさなければイケナイって事だ、つまりは一発撃って新しく弾を込めて砲を反対に向けるそれだけの事を一つづつに時間が必要ってことだ」
「それは、実際にはどれくらいの時間が掛かるんですか?」
「この戦車が、次の路地の壁に張り付くくらいの時間だ」
適当だ……とでも思っているのだろうが、そんなのわかるわけがない。
熟練の砲手なら早いだろうし、戦車に乗り込んだ村長の訓練度次第だ。
「そこで止まったら、撃たれるじゃあ無いですか」
「大丈夫だ、その状態ではヤツの砲は壁が邪魔してこちらを向けない」
こちらを狙うには、回転するかバックして砲を十字路まで下げるかだ。
「じゃあ……撃たれない?」
「すぐにはな……バルタが一発撃ったら全速力で逃げろ」
唾を飲み込む音が聞こえた気がした。
次の返答が無いので実際に覗いて見れば、酒をあおっていたのだが。
そんなに間違っちゃあいなかったようだ。
「よし……準備しろよ」
そう言って次の砲撃音を待つ。
俺達のではない豪発一発。
「今だ! 前進」
アクセルが全開にまで踏まれた38(t)、履帯を滑らせて車体を左右に降りながらに急発進し、一つ目の角を曲がる。
滑った車体が路地の壁に当たったが気にせずそのまま加速させるマンセル。
正面にはシャールb1,bisフランス重戦車のケツ。
そして、今は敵に成った村人の成の果ての歩兵達。
突然に背後に現れた戦車に驚いて慌てている。
俺達の砲は後ろ向きだ、だから俺は半身を出してmp-40をそこに撃ち込んだ。
当たりゃあしないが脅しの積もりだったのだが……すぐに正面の機関銃が追いかける様に火を噴いた、タヌキ耳の娘……通信士席には長女のイナか?
操縦席からも撃てる造りには成っているが……今のマンセルにはそんな余裕は無い筈だ。
そして、その銃弾は正確に敵兵を薙ぎ倒している。
驚いている俺の服を引っ張る者、それはエノだった。
手には火の付いた火炎瓶が握られていて、それを俺に差し出す。
その目にはしっかりと意志が読み取れる。
この娘達はとっくの昔に決意を固めて居たのだ。
犬耳の娘達もそうだった、躊躇無くに戦う意思を見せた。
自身を守るため……仲間や家族を守る為なら、やるべき事とやれる事が有るならそれに躊躇う事はしないと決めている、そう見える目だ。
それが異世界の子供達なのか?
それとも盗賊での奴隷という境遇がそうさせているのか?
まさか、俺の所に来た短い時間で変わったとは……それは思いたくは無いが。
それを考えている時間はもう無いようだ。
目の前には敵が迫っている。
火炎瓶を受け取り敵戦車の背中に投げ付けた。
続けざまに渡してくるエノ。
俺も受け取り投げ付ける、今度は戦車の右側だ。
そちらを燃やして置けば生身の兵士は隠れる場所は無くなる。
「曲がりますよ! 衝撃に備えて!」
マンセルが叫ぶ。
俺は慌てて砲塔内に引っ込み、バルタとエノを抱き寄せた。
マンセルは確実に戦車を止める為に敢えて壁に激突する積もりだ。
履帯が地面を蹴り火花を上げて、車体が横に成る。
そのまま斜めに進み。
シャールb1,bisのケツを掠めて壁を崩しながらに停止。
壁が車体を押さえて揺れ戻しも殆ど無い。
同時にバルタが砲撃をした。
「駄目です! 凹んだだけです」
バルタの叫びが響く。
ほぼ同時に敵の戦車がバックを始めた。
こちらを撃つ準備だ。
間髪入れずにそう動く操縦士はやはり慣れている。
撃たれても動くならそれは相手の砲撃は効かないと、そう身体が覚えてしまっている行動だ。
動かそうとして動かないなら、迷わずに脱出して逃げるのだろう。
撃ち抜かれて戦車に火が付く様ならもう既に助からない。
迷う事無く戦車の一番硬い正面を相手に向ける、足の遅い戦車ではそれが一番の生存確率を上げる方法だ。
そこに敵の攻撃が自身の防御を上回る様ならそれはやはり、何をしても助からない。
「マンセル! 逃げろ!」
その俺の叫びの前に戦車は再度の急発進をしてた。
戦車が支えていた壁の瓦礫が戦車とその居た場所に降り注ぐ。
もうもうと上がる白い土埃が敵の目を遮ってくれている。
そこにもう一発とバルタが撃ち込んだ。
「敵の首を狙え! 車体と回転砲塔の間だ」
そこはすべての戦車の弱点でも有るのだが、大戦中期以降はそこを守る襟の様な盾が付くように成る。
だが、目の前のシャールb1はその前の戦車だ。
首は剥き出し。
そこに上手く当たって、砲塔が歪めば回らなく成る。
駄目でも動きが鈍く成る、動く狙いに時間が稼げる。
そして、ゆっくりだが確実に下がる敵戦車の、その砲塔が隠れた壁から見え始めた。
砲塔も動き始めている。
そこに砲弾を撃ち込むバルタ。
三発目だ。
だが、それも効いてはいないようだ。
こちらの砲が弱すぎる、所詮は3.7cm砲……小さくて軽すぎる。
「タングステン弾は無いのか?」
タングステンで造る砲弾は重くて硬いのだ、それは威力が通常弾よりも高いってことだ。
「もう使ってるよ!」
マンセルも叫び返す。
「5発有りました」
それに、バルタも答えた。
「たった5発か!」
「高いんだよ! そうそうホイホイ買える値段じゃない」
それは命の値段だろう? それをケチるなよ……。
だがそれでも効いてないのだから、意味も無いのか。
「残り2発か……」
その俺の声を聞いてかタヌキ耳の姉妹が砲弾を入れ換え始めた。
通常弾に戻しているようだ。
暫くは威嚇だ……それしか出来ない。
「他に弱点でも有れば……」
シャールb1,bisフランス重戦車
シャールとはフランス語で戦車を指す意味。
bisは日本語に訳せば、2型。
これは通称である。
本来はルノーb1,bis……であるが。
フランス兵でさえ適当に呼んでいた。
シャラント……ベリアン等、それは配属された部隊の名称なのだが……フランス人なのだから仕方無いのか?
だからか、わからないからb1戦車をそのままシャールb1と呼んでいたらしい。
それに実際にルノーだけが造っていたわけでは無く。
最初の設計時に五社あったその中のリーダー役を努めただけ。
だから、ソミュア社が造った戦車(ソミュアs35中戦車……フランスでは騎兵戦車とも言った……これも適当にかもしれない)の砲塔と同じ砲塔が着いている。
30トン級の戦車なのだが、開発時はそれでも重戦車だった。
大戦中期には30トンでは中戦車と同じくらい。
t-34ソ連中戦車で30トン。
中期以降のドイツのパンター中戦車は45トン。
フランスは早期にドイツに負けたのでその時点の最新鋭だった。
同時期の38(t)軽戦車が10トンなので三倍の大きさなのだ。
因みにドイツ3号戦車は中戦車で20トン級。
大戦初期はそんなわかりやすい数字で分けていたようだ。
シャールb1はフランス製なだけあってとてもデザインに拘っていた。
小さな頭にドッシリとした車体は綺麗な三角形を創っている。
その性能も決して悪くは無かったのだが……。
第一次世界大戦に勝利していたフランスはそれに引き摺られて、同じ事をすれば勝てると思い込んでしまったようだ。
数年の間に格段に進歩した兵器と戦術……その兵器の方は負けては居なかったのに、戦術が旧すぎたのだ。
なので、アッサリとドイツに敗戦。
以降はドイツの為に兵器を造る事となる。
ドイツ人は適当なのが嫌いなのでその時にはb1(f)と名前を決めた。
名前の前後に何も付けなかったのは、ドイツも面倒臭いと思ったからかもしれない。
ドイツ人が言うフランス人は面倒臭いってのはズッと昔からだったのだろう。
そして、このb1(f)は……ドイツ兵に人気は無かった様だ。
性能は良いのに誰も乗りたがらない戦車で。
その理由はドイツ式の戦車とは設計思想が違いすぎると言うもっともらしい言い訳だが。
ソ連から鹵獲したt-34には悦んで乗ったようだし、チェコ戦車の38(t)は主力扱いだ。
(どちらも当時のドイツ式とは明らかに違う)
たぶん……格好がお洒落すぎて乗るのが恥ずかしかったんだと思う。
ドイツ人も……有る意味面倒臭い。




