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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
七章 異世界の真実
308/317

魔王

748ポイントだ。

みんな応援ありがとう。


あしたもがんばるよ。

また明日。


 目の前には元国王と仲間達。

 見知った人間はマリーだけ。

 ドワーフの女は初めて見たしフルプレートアーマーの中身はわからない。

 背の高さから子供だとは思うが……花音よりも身長は低そうだ。

 つまり、花音は別で居るのか。

 まあ、あんなわけのわからない鎧を着たうえで、フル装填で10kgもあるミニミを持てて撃てる子供が居るとも思えない。

 もしかすれば……いや、たぶん中身は人間じゃあない。


 そしてアン。

 ダネルなんてわけのわからないモノを持たされているが、そんなモノに意味は無いのだろう。

 元国王の斜め後ろ、そこに立たされて居るのは俺達に撃たせ無い為の盾代わりだ。

 戦車砲は巻き込むし……狙撃は前に立つ背の低いゴーレム達が半分以上を隠している。

 この距離なら頭を狙えば撃ち抜けるが……それも何かしら対象してそうだ。


 「俺を待って居た風にも聞こえたが……何か用か?」

 目線は視点だけをズラして観察を続けて聞いた。

 アンをどうやって、あの場から離せば良いだろうか?


 「うむ、貴様もワシ等の仲間に成らんか?」

 それは予想外の返答だ。

 俺の記憶を弄り、道具として使って居たと思ったのだが……違うのか?

 しかし、今までの事を考えれば記憶を弄ったがなければ辻褄が合わない事だらけに為るが?


 「仲間に成ってどうする?」

 俺は見えない戦車の中でバルタを小突いた。

 「アンを引き剥がせないだろうか?」

 考える振りをして、口許を隠し小声で。


 「貴様には少し不思議な能力が有るようだしな……それを使って貰いたいのじゃ」


 戦車の中のバルタは頷いた様だ。

 「能力?」

 俺にはシャーマンのスキルしかないぞ……死人の意識が読める、後は時間凍結解除だが。

 その2つはネクロマンサーでも使えそうだが?

 だいたい死人の意識を読まなくてもゾンビにしてしまえば答えてくれそうだし、花音が居れば生きた人間の心も読めるだろう。

 それ以前に世界を滅ぼすのではなかったか?

 なら、そんなスキルに意味は無い筈だが……滅ぼした後で意識を読んでも意味は無いだろうに。

 

 俺が、少し怪訝な顔に成ったのを見咎めたのか元国王が続けた。

 「貴様は、古代遺跡の意識を読んで見せたろう……欲しいのはあれじゃ」


 「どうも壊れた魔法陣を上手く治せなくてね……時間が掛かるのよ」

 マリーが後ろを指して。

 「貴方なら正確な解読が出来るでしょう?」

 

 大陸間弾道魔法陣の事か?

 動いて居るようにも見えるのだが……あれでは駄目なのか?


 「今のままでも撃てるわよ……解読して欲しいのはもっと別の事」

 マリーはチラリと元国王に目線を投げた。

 「勇者召喚に少し不安が有るのじゃよ」

 肩を竦めた元国王。


 俺はもう一度、考える振りをした。

 「……左から回り込めよ」

 準備を始めているバルタに小声で告げる。


 「何故に左です?」

 聞いていたマンセルに聞かれる。


 「威力の有る銃は、左から右に振るのが遅れるからだ」

 簡単に説明をしたが、マンセルには伝わっていない様だ。

 「ライフルは反動が有るだろう、それをストックが体に逃がす。だけど、右に腕だけで振ると体からストックが離れる、だから腰から上の上半身ごと動かすのだが……実際に動くのは下半身のみだ。しかし、左から右なら腕だけでも銃を体に引くだけだからストックは肩か腕に残る。それは上半身も下半身も両方、全身を使って撃てるからそちらに振る方が早くて安定するから正確に成るんだよ」

 感心した素振りのマンセルだが……。

 武器に関しては専門家の筈のドワーフが何故にそれを知らないとも思い、俺も首を捻った。

 そのまま砲塔の前に出て立つ、バルタが外に出れる様にハッチを影にして空ける為だ。


 「何故に悩む」

 俺を見ていた元国王が。

 

 「勇者召喚は……世界を滅ぼす為だよな」

 

 「そうだ」

 大きく頷いた元国王。


 「何故に世界を滅ぼす」


 「この世界はおかしいだろう? イビツな事が多過ぎる」

 俺を見ている元国王。

 

 「奴隷か?」


 「奴隷も含めた差別もそうだが、本来この世界に無いモノだらけだ……転生者が持ち込んだ物と知識と環境もそうだ」

 今一、よくわからん。

 「外来種が増え過ぎて、環境が変わりすぎたのよ」

 マリーが補足しても、やはりわからない。

 

 「結局のところ……外来種、つまりは転生者が持ち込んだモノに不満が有ると?」

 ただの我が儘にも聞こえるが?


 「貴様も日本人なのだろう?」

 元国王が俺を指差す。

 「なら、琵琶湖は知っている筈」

 俺は頷いて返す……もちろん知っている。

 「外来魚が増えて生態系が変わり在来種が滅びかけている」

 それも聞いた気がする。

 「それを元に戻すには、湖の水を全部抜いて駆除するしか無いが……流石に琵琶湖では出来ん」

 マリーが続けて。

 「でもこの世界ではそれをする方法が有るのよ」


 「原初の勇者で滅ぼす……か」

 転生者の駆除……。


 「原初の勇者は創造主でも有るから再生も可能でしょう?」

 そのマリーの言葉にも納得がいかない。

 「そもそもが勇者も転生者だろう?」

 チラリと元国王の仲間を見て。

 「それにその武器もこの世界の物ではないし……ダンジョンを召喚して大戦中の転生者を呼び出しているのは、お前達だろうに」


 「もう滅ぼすと決めたなら、いくら増やしても同じ事だ」

 笑った元国王。


 「そういう事か?」

 納得がいかん。


 「この世界は放って置いても滅ぶ……変化に着いて来れんからな」

 笑っては居るが、その目は俺をジッと見続けていた。

 「なら、ワシ等はそれに少し手を貸して速めてやろうと、そう言う事じゃ」


 「リセットするなら速い方が良くない?」

 マリーも頷いている。


 俺はチラリと横に停まるルノーft-17(改)の後ろを見る。

 戦車の影でバルタとヴィーゼが何か話している。

 側には犬耳三姉妹とタヌキ耳姉妹もしゃがんでそれを聞いていた。

 準備は出来ている様だ。

 俺は子供達が突撃する迄、あともう少し話を伸ばせば良いだろう。

 

 「しかし……」

 話を切らないように続けようとすると。


 「もう良いでしょう……その男には私のスキルは効かないのよ」

 レンガ塀の影から花音が出てきて、元国王の横に立つ。

 「効いていたと思たんじゃがのう……」

 首を捻った元国王。


 「私も疑わ無かったわよ、最初は」

 花音は元国王を見て渋い顔をした。

 「書き換えどころか、簡単な上書きでも完璧に記憶を造れた……筈なのに」

 俺を見て。

 「どうしてか途中で記憶にズレが出来るのよ、それを修正をしても何度も」


 俺は溜め息を吐いて。

 「やはり花音が俺の記憶を弄っていたのか」

 わかっては居たが、本人から言われると複雑だ。

 ダンジョンの地下の母親の死体を確かめておくべきだったなと、少し後悔。

 「何時からだ?」 


 驚いた顔の花音。

 「百合子がやったと気付いて居たのね!」

 声を上げたのはマリー。


 「ズレ……どころでは無いようじゃな」

 元国王も唸った。


 「花音……いや、百合子と言うのか」

 俺は花音を見て。

 「少しの付き合いだったが、まあそのよしみで教えてくれないか?」

 睨み。

 「君の母親は……あの地下で眠っているのか?」


 少し考えた素振りの花音……本当の名は百合子。

 そういえば、俺の認識では、最初の頃は花音と香音が混ざっていたな、どちらも同じカノンと読むが区別が着いて居なかったのか?

 それも書き換えの影響か……。


 「あそこに母親は居ないわ」

 鼻で笑って。

 「あのダンジョンに地下鉄の駅は在るけど……線路を辿っても電車は何処にも無い筈よ」


 「つまりは……最初からか」

 俺は少し考えて。

 「俺は転生者なのか?」

 それすらも怪しい。


 「あの場に居たのじゃから……それはそうじゃろう」

 「記憶は無かったみたいだけど……だから上手くいくと思ったのだけどね」

 元国王に百合子が続けた。

 

 「何故……そんな事を?」


 「たまたまよ……そこに居たから」

 百合子。

 「戦争を引っ掻き回す役目が欲しかったのよ」

 マリー。

 

 「いや、そうじゃない……何故に記憶を弄ってまで、俺に戦争をさせた?」

 自分の顔の前で手を振り。

 「違うな、滅ぼす為の準備なのだろう」

 頷き。

 「あんたにそんな権利は無いだろう? どう思い上がればそうなる」


 「思い上がるも何も……」

 大笑いの元国王。

 ここで初めて本気で笑っている様にも見える。

 「最初に名乗ったろう? ワシは魔王じゃと」

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