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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
七章 異世界の真実
302/317

敵の戦力

726ポイントだ。

上がってる!

少し諦めかけていたけど、頑張って書いて良かった。



みんな応援ありがとう。

あしたもがんばるよ。

またあした。




 目の前で燃える4号戦車。

 中からの炎の圧でか総てのハッチが押し開かれている……そこからのバーナーの様な火。

 この状態では中の5人は生きてはいられないだろう。


 戦争……では無いのか、今回は紛争?

 しかし、お互いが戦車を持ち出した時点で、戦争みたいなモノだ。

 なら戦死者が出ても不思議では無い。

 そう頭ではわかっていたが、唇を噛む事は止められなかった。


 そして、また考える。

 ここまでがユル過ぎたんだ。

 エルフだって敵意剥き出しでシャーマンを持ち出したが、こちらに被害はなかった。

 いや、実質……シャーマンだけだった。

 中途半端な戦車戦?

 

 エルフでアメリカの兵器を使い、アメリカの兵士を奴隷にしている。

 なら、戦い方もアメリカ式?

 今までもそうだったか?

 直接的には……マトモにはぶつかっては居ない。

 橋の時も、戦力を集める前に分断した。

 でも、確かに数を集めようとして居た。

 潰しはしたが……あの時のエルフの作戦は、圧倒的な物量で押しきる積もりだった筈。

 フェイク・エルフを奴隷化したのだって、結局は数だろう。

 戦略やら戦術もそれらは数ありきだ。

 どう考えても……さっきのは中途半端だ。

 森から出て来て……ほとんど動いていない。

 注意を引いただけだ。


 なぜあんな戦い方に成った?

 俺は……エルフは知らないがアメリカは知っているだろう……。

 

 考えろ。

 

 混線に成らないように?

 そうか、航空機だ……あれは空から爆撃しやすい形だ。

 広く見通しの良い場所で、敵のスピードだけを落とす。

 

 なるほど、あの状態で爆撃機に飛んで来られれば俺達は全滅していただろう。

 確かに狙いやすい動きをしていた。


 しかし、この世界では理由は知らないが、飛行機は使えない。

 ……。

 いや違う。

 エルフがそれを知らない筈がない。

 アメリカ兵奴隷がそれをやりたがっても止めるだろう。

 ではエルフは何を考えていた?

 

 俺達がトンネルを抜けたその時点では?

 

 それにエルフは俺達の事なんか知らなかった筈だ。

 その時は、大量の魔物と対峙していただけだった。

 こんな所で魔物退治をするつもりなんて考えは、端から無いだろう。

 そこに俺達が出て来ただけ……。

 待ち伏せというわけでもない。


 そうだ、エルフの向いている方向が違ったんだ。

 奴等は大陸間弾道魔法を潰したかったんだ。

 俺達はたまたまその裏に出ただけ。


 今も、エルフの主力はこっちを向いている。

 そして、動いて居ない。

 

 理由は?

 単純に気付いていない?

 結界が無くなった事に……日が暮れれば全く見えなかったのは確かだ。

 結界に近付けば単純に的に成るだけ、奴等も攻めあぐねて見ているだけに成った?



 「戦車長……どうします?」

 マンセルが俺の考えを、途中でぶったぎった。

 今の状況で長々と考えている俺の方が悪いのだが。


 「後ろは魔物の大群……前は……」

 燃える4号……と、敵の戦車。

 進めば隠れて居る敵に撃たれる。

 でも、動かなければ魔物の大群にのまれる。


 「この道は……1本道か?」


 「明かりが無いのでわかりませんが、学園都市と名が付くので街道街では無いでしょう」

 少し考えて。

 「突入する時も、横に広い街並みが見えた気もしますし」


 「なら、進んで左に折れる道を探そう」

 入った所は街の西だった筈、エルフは東か? 南は崖で潰れている。

 左に曲がれば北に向かう筈だ。

 目的の元国王が居るのは……北か東か……いや、たぶん北だ。

 今、ゾンビ親衛隊は東から出てきている、それはそちらに誘導しようとしているのだ。

 もう1度エルフとぶつける為にだろう。

 ……なぜ?

 ゾンビ親衛隊では対処が出来ないのか?

 確かに2面作戦には成るだろう……しかし、わざわざ誘導となれば自軍の兵士を無駄に死なせるだけだろう。

 劣りとして使うのだから。

 

 ゾンビ親衛隊の兵力が少ない?


 「ヤニス、あのダンジョンの話だが」

 少し気になる事がある。

 「作戦は負けたと聞いたが……戦力はどうだったんだ? 特に装甲師団だが」


 「前線に近い所に3個有りました、後方の遠い所にも予備として3個……そちらは、結局は参加しませんでしたが」

 出し惜しみしたか……ヒトラーは自分の命を守る兵力を減らしたく無かったんだろう。

 怯えていたか?


 「合計で6個の装甲師団か……いや、ダンジョンの規模を考えると半分の3個で正解?」


 「何の話です?」

 マンセルが話に割って入った。

 今の状況に苛立ちが有るのだろう。


 「さっきのダンジョンにそれだけの戦車が有ったと、そういう事だ」


 「車が一台有っただけでしょう?」

 マンセルは首を捻っている。


 「そうだ、戦車は見掛けていない……が、そこで燃えているマーダー2はさっきのダンジョンのモノだ」


 「それって……」

 考え出したマンセル。


 「3個師団の戦車をゾンビ親衛隊とエルフで分け合ったんだ……取り合ったが正解かも知れないし、ゾンビ親衛隊が取った残りをエルフが拾ったのかも知れないが」

 先に答えを教えてやった。


 「燃えているマーダー2」

 マンセルは呟き。

 「エルフから奪ったマーダー2が2両?」

 後ろを振り向いて。

 「装甲師団師団なら……もっとか」


 俺は頷いて返した。

 そしてもう一度ヤニスに聞く。

 「その戦闘の日付は覚えているか?」


 「忘れませんよ……」

 歯を噛む音も混じり。

 「44年の6月6日です」


 「そうか……ならパンターやタイガーは当たり前に居たな」

 溜め息も吐き。

 「少数だが……タイガー2も有る年代だ」


 「戦車の数は?」

 マンセルの声が震えだした。

 

 「1000両は有っただろうな」

 実際の数は俺も知らん。

 だが作戦と戦場の規模を考えると最低、それくらいは有っただろう……と、そんな数字だ。


 「1000……」

 絶句したマンセル。


 「それは広い範囲での数です、さっきのダンジョンの大きさなら、もっと少ないでしょう」

 ヤニスが補足した。

 だが、正確な数の明言は避けたようだ。

 1000は多過ぎでも、相当数の戦車は有ったとそういう事なのだろう。

 ヤニスもその目で見た数からの予想か?


 しかし、そう考えると……。

 実際のエルフも相当な規模なんじゃあ無いだろうか?

 それだけの数のゾンビ親衛隊がマトモには当たりたくないと、そんな数字なのだろうから。


 これは流石にマズイと感じた俺は。

 「ヤニス、軍曹の戦車部隊の指揮も任せる」

 今は軍曹は使い物に成らない。

 それ以前に、元冒険者の軍曹依りも元ドイツ兵のヤニスの方が適任かも知れない。

 「前進だ」

 俺の指示にマンセルは情けない顔で振り向いた。

 数だけを聞いて怖じ気付いたのか?

 「何時までもここでジッとしていても囲まれるだけだぞ」

 俺達を誘導したいのは確かな様だ。

 止まっても圧は掛けては来ない。

 どうしてもエルフ軍とやらせたいらしい。


 「大丈夫だ……策は有る」

 俺は適当な事を言った。

 が、それっぽい理由も必要だと戦車の中に潜り込み、クリスティナのヘルメットを外す。

 

 「それが?」

 マンセルは横で見ている。


 「これで、エルフも結界が無くなった事に気付くだろう? なら、大陸間弾道魔法陣を潰しに来るだろう」

 俺はマンセルに笑い。

 「その場所は、ここだ」


 「敵が増えるだけでは?」


 「敵の敵は味方だろう? 詰まりは援軍だ」

 それは、俺達とエルフが接触しなければいいだけの事で成立しないか?

 まあ、実際にそんなに上手く行くとも思っては居ない。

 が、今の状況ではじり貧は確かだし。

 それに変化を着けるには混戦に持ち込むしかない。

  

 「それで、勝機は有ると思いますよ」

 ヤニスが意外な事を言う。

 本当に有るのか?


 「そうか……勝てるかもか」

 しかしマンセルは信じた様だ。

 

 それを見た俺は、ヤニスの考えがわかった。

 戦死者が出て、恐怖とショックで動き出し難い皆に動く切っ掛けを与えたかったのだろう。


 だがヤニスよ……それは俺の仕事の筈だ。

 少し乱暴にヘルメットをクリスティナの頭に返して。

 「優秀過ぎだろう」

 そう小さく呟いた。

 

 聞こえたのはクリスティナだけの様だ。

 私? と、自分を指差して笑っている。

 俺は頷いてそのクリスティナの頭……ヘルメット越しだが、撫でてやる。


 「前進だ」

 もう一度、掛け声を掛けた。

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