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ファウストパトローネ  作者: 喜右衛門
七章 異世界の真実
296/317

見えた魔法学園都市とその守護者

708ポイント。


みんな応援ありがとう。

明日もがんばる。

またあした。


 丘を登りきった先に見えたのは、田園風景。

 ただ、四角い畑には背の高い生垣と、畑の中には木の杭が不規則に打ち込まれている。

 それらも有刺鉄線付きだ。

 空からの降下部隊の対策なのだろう。

 不規則な杭はグライダー避けか?


 そして真っ直ぐに伸びる、狭い道の先には虹色のドームが見えた。

 夕日に照らされたそれは、離れたここからでも巨大だとわかる。

 

 「あれはカーンの街では無いよな?」

 その虹色が何かがわからない俺は、運転席にいるヤニスに聞いた。


 「場所的にはカーンかもしれないですが、虹のドームは……魔法具ですね」

 ヤニスも目を細めている。


 「魔法具?」

 

 「はい、結界です」

 そう言い切ったヤニスを見て思い出す。

 「そう言えば、以前に使っていたなこんなに大きくはなかったが、ショッピングモールのガレージで」

 ニトロで爆破しようとした時にヤニスが使っていた虹のドーム。


 「それと同じモノですね」


 「結界というなら、あれは越えられないのか?」


 「鍵が必要でしょう」

 それも聞いた気がする。

 純血ロンバルディア人の娘、アンが鍵だと言っていた。

 ってことは、あの中に在るのが魔法学園都市か。

 ……右手で顎を押さえ、眉をしかめる。

 「なんとか為らないのか?」

 ヤニスも錬金術師のスキルは持っていると言っていたよな。


 「たぶん……無理でしょうね」

 そのヤニスも渋い顔だ。

 「あの結界を造れるのはこの世界に1人だけだと聞きました……前に私に預けられた魔法具も、相当に貴重だとわざわざ念押しされたくらいです」

 指示に逆らえない奴隷に念押しか……。


 「中に入った奴に入れて貰うしかないのか」

 それとも、鍵の純血ロンバルディア人の娘を探すか……か。


 「入れてくれますかね?」


 「さあ、どのみち行ってみないとな……ノックをしないとわからんな」

 駄目なら駄目で考えるしかない。

 


 直線の道を結構な距離を進んだその時。

 後方から銃声が聞こえだした。

 何事だと振り返る。


 背後の3突が視界の邪魔をして、誰が撃っているのかはわからない。

 その後方を確認しようとヤニスに車を左右、道幅一杯に振らせたのだがそれでも見えなかった。

 この車は途中で拾ったモノだ、無線も積んでいない。

 

 「いったん。車列を離れて様子を見るか?」

 ヤニスにそう告げて、脇の路肩に車を停めさせた。

 ドーム迄はまだ、随分と先なので後方の車両には、先に行けと大きく手で合図を送る。


 と、三姉妹が戦車の横を加速して、こちらに向かってくるのが目に入った。

 そのバイクに乗る娘達は3人全員で叫びながらに左手で上を指差していた。

 俺もヤニスもそれにつられる様に顔を上に向けると、後方上空に見える鳥の様な影。

 1列に為った車列の最後尾にたかっている、複数の鳥。

 しかし、ここからでもハッキリと鳥とわかるのは……それは相当に大きいのでは無いのだろうか。

 

 「魔物……だ」

 俺はそう呟いて、ヤニスに後方に走れと指示を出した。


 幅3mの3号突撃砲を路肩ギリギリにまで寄せてさせて、その横を走り抜ける。

 俺達が気付いたとわかった三姉妹は、バイクを反転させて猛スピードでまた後方に戻る。

 3突の集団を抜けて、次はヴェスペが3両。

 そして軽トラの車列に挟まれキッチンカーとトレーラーハウスに猫の画の工房トラック。

 

 魔物を撃っていたのは、その半分に別れた後ろの軽トラの集団だった。

 それよりも前は、トレーラーハウスを守る事に専念するように銃を上に向けて構えていた。

 射程距離の稼げるkar98kライフルは単発で空を飛ぶ魔物に狙いを着けても追い付かない。

 バラ弾を飛ばせるstg44は、クルツ弾で射程が短い。

 mp-40はもっと短く威力も無いが、それらは取り回しの良さで戦車兵に持たせている……だからか、通り過ぎた戦車は誰も撃とうともしていなかった。

 9mmでは魔物は、そもそも無理なのだ。

 使えるのは人に対してだけ……通用するのは、せいぜいハダカデバゴブリン、そんなレベル迄だ。

 後方の軽トラ集団が撃っているのは、魔物を倒す為では無くて近付けさせない為の牽制だった。


 そして、火力を一切持たない3つの車両、トレーラーを引っ張るキッチンカー、それと猫トラはとにかく前を目指して進んでいた。

 

 「工房トラックの後ろに着けてくれ」

 ヤニスにそう叫んで、俺は助手席のシートの上に後ろ向きに立つ。

 

 空を飛ぶ魔物。

 俺は一度しか出会った事がない。

 この異世界で最初に襲われたプテラノドンだ。

 あの時の魔物の姿と一致する影。

 そいつ等が飛び回って数えるのも面倒だ……そんな数。

 飛んでいるのは最後方の戦車隊の上。

 後ろから飛んで来て、狙った獲物の背後から襲う、前回の時と同じだ。

 それが奴等の習性なのだろう。

 しかし、今はそれが有難い。

 奴等の攻撃は飛び掛かる後ろ足の爪、それは戦車の装甲を叩くだけで傷1つ着ける事は出来ない。

 そのうちにそれに気付いた奴が、人が剥き出しのオープントップの車両や、ガワの薄いトラックやトレーラーを襲い始めるだろう。

 そうなれば厄介だ。

 

 俺の指示に頷いたヤニスは、車を反転させて猫トラの後方斜めの位置で車列と並走し始めた。

 

 俺はシュビムワーゲンの前席と後席の間のパイプに備え付けられたmg34を反転させてそのグリップを握る。

 マウザーmg34はkar98kと同じモーゼル弾、射程が長くバラ弾を撃てる……分800発。

 当たればプテラノドンの薄い膜の様な羽に穴を空けるくらいは出来る筈だ。

 

 俺はその中の1匹の魔物に狙いを着けた。

 対空用の照準器が欲しいところだが、車両積載用のにはそんなモノは無い、何時ものアイアンサイトだ。

 だが、弾の供給方法は違っていた、ベルトリンク式ではなくてサドルマガジン、本体の左右に丸い金属の缶詰が繋がった状態で上から乗っかる様にくっついている。

 これ2個で1つで75発入りの缶詰だ。

 

 ガガガガガララ……。

 10秒も掛からずに撃ち尽くす。

 それでも二匹程は撃ち落とせた様だった、地面にきりもみ状態で落ちていくのが確認出来た。

 

 「その箱を開けてくれ」

 後席のゴーレムに、その足元に有る金属の四角い箱を指差して指示。


 それを掴み上げたゴーレムが、ガチャガチャと箱の蓋を弄くり出した。

 やはり不器用だ、サイドのフックがわからない様だった。

 「構わないから、上蓋を引きちぎれ」

 ゴーレムに対して、イライラしてもしょうがない事は理解はしているが……それでも語尾が荒くなる。


 バキバキ……。

 ゴーレムの力で無理矢理に開けられた金属の箱。

 中に有るメガネの様な形のmg34用サドルマガジンを引き抜いて、それを空のマガジンと交換した。

 

 もう一度狙う。

 アイアンサイトにサドルマガジンの革のハンドルが被り、狙いの邪魔をする。

 2つのドラムを繋げた変形マガジンを持ちやすくする為のモノだ。

 俺はそのハンドルの左右を引っ張り、丸いアーチ状にして、その中からアイアンサイトとプテラノドンを合わせた。

 革のハンドルは、簡易的に対空用サイトの様なモノに為る、その中に入ったモノを大きく捉えて、狙いはアイアンサイトだ。

 設計者がそれを意図して造ったかは知らないが、偶然にしては便利で上手く出来ていた。

 

 革のハンドルのアーチから中を覗く。

 

 仲間が倒された事を知って怒り狂っているのだろう、こちらに向かって飛んで来ていた。

 もう後ろから襲うというルールは無視の様だ。 


 狙いを定め……引き金に指を掛ける。

 10秒で撃ち尽くすのだ、外せば俺が狙われる。


 バン。

 それは後方から聞こえた銃声だった。

 そして、こちらに飛んで来ていたプテラノドンの頭を綺麗に撃ち抜いた。


 誰だ?

 振り返るとヴェスペが車列からはみ出して、その後端にミスリルゴーレムが2cm,kwk38ゾロターンを構えていた。

 いやゴーレムが三脚に成り、撃ったのはエルだ。

 

 そしてすぐさま、カンプピストルを撃つエル。

 山なりの軌道で飛んでいく照明弾。

 それが見事に後方戦車の上を掠めて、プテラノドンの羽を焼いた。

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